アクションを想起するイベントプログラムの工夫 没入体験をデザインする

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アクションを想起するイベントプログラムの工夫 没入体験をデザインする


アクションを想起するイベントプログラムの工夫 没入体験をデザインする

筆者:株式会社ゼロイン 取締役副社長 兼 COO 並河 研(なみかわ けん)
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。

ストロータワーゲームというグループワークをご存知でしょうか。5年ほど前に弊社の社員総会でも実施したのですが、私は今でもその光景や一緒に作った仲間の表情、楽しかった時間が蘇ってきます。なぜこの時の体験がそんなにも記憶に残っているのでしょうか。今回はここからイベントの体験デザインのヒントを探ってみたいと思います。

アクションを想起するイベント設計

キーワードは「事後の時間」と「没入体験」のデザインです。環境コミュニケーションプランナーの森高一氏は、エコイベントの参加者が日常に戻った際に環境に配慮した行動を起こしてもらうために、イベントを「その場で完結する時間」ではなく、イベントに参加した人たちの「事後の時間」を意識した時間のデザインをするべきだと説いています。そしてイベントの中に「無時間に感じる時間」、つまり何かに集中・没入する体験を設けているそうです。*注1

冒頭の社員総会では、期の経営方針である「社内の連携を強めて、他社には真似のできない新たな提案を現場から生み出していこう」が発信されました。これを言葉だけではなく、体験を通して落とし込んでもらうため、経営トップのスピーチの直後に、ストロータワーゲームというグループワークを設定しました。そしてゲームでは、色々な部署から集まった5人でグループを作り、5分間言葉を使わずジェスチャーのみで、より高いストロータワーを作るという競争をします。ここにはゲームに没入させる様々な仕掛けがあります。

「5分でより高いストロータワーを作る」という明確で達成可能な目標があり、「競争」が自然と集中する状態を作り出します。5分の作業後には、各グループが工夫に工夫を重ねたストロータワーがそこかしこに立っています。品評会の後は、間髪を入れずに、5分間の振り返りを行います。ジェスチャーだけで作業を行う中で自然と構築された協力関係やひらめき、知恵に対して、グループのメンバー同士で「■■さんの●●という行動に感謝したい」「助けられた」「凄いと思った」などをカードに書いて直接フィードバックし合います。通常はトップの話を聞くという受動的なプログラムだけのはずが、今回は「グループでストロータワーを作る」という5分間に、どこかワクワクするのではないでしょうか。つまり、少し意表をついた非日常的な時間が、集中力を研ぎ澄まさせ、“没入”する瞬間を創りだすのです。

“没入”を生み出す8つの要素

人が何かに没入している状況は「フロー状態」、スポーツでは「ゾーンに入った」と表現されることもあります。アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイさんは、人がフロー状態にあるときは、機能的でパフォーマンスが高く、加えて幸福感を得られると提唱しています。そして研究データから、楽しさを感じる現象には、八つの主要な構成要素があり、フロー体験はこれらに当てはまっている状態であると指摘しています。*注2

第一「達成できる見通しのある課題と取り組んでいる」

第二「自分のしていることに集中できている」

第三「行われている作業に明確な目標がある」

第四「直接的なフィードバックがある」

第五「日常の欲求不満を取り除く、深いけれど無理のない没入状態で作業している」

第六「楽しい経験は自分の行為を統制できているという感覚を持つ」

第七「自己についての意識が消失しているが、フロー体験の後ではより強い自己感覚を感じる」

第八「時間の経過の感覚が変わる」

改めてストロータワーゲームには上記の要素がうまく組み込まれていることがわかると思います。この集中・没入するフロー体験をはさみこむことで、強い幸福感を味わってもらう、そしてその幸福感を強く感じれば感じるほど、充実度、満足度が高くなり、イベント後に繰り返して日常化していく原動力、モチベーションを得ることができるのです。ストロータワーゲームの他にも、付箋を使ったブレーンストーミングや、数分間だけ両隣の人と感想交換することなども有効な手段です。

ビジョン・ミッション・バリューの策定後に、浸透を推進するためにその体現行動を表出するアワード、企業の節目に過去をふり返ってDNAを再確認し未来へとつないでいく周年行事。私たちがお手伝いするイベントは、決して1日だけ、一過性のものではなく、参加した社員の皆さんがイベントの後にいかに行動を起こすかを大きな課題と捉えています。事後の時間を意識し、没入体験を組み込んでイベントプログラムを設計することで事後の行動を喚起できる可能性は高まるのではないでしょうか。

*注1:芸術教養シリーズ18『時間のデザイン』-経験に埋め込まれた構造を読み解く(中西紹一・早川克美編)

*注2:M・チクセント・ミハイ『フロー体験 喜びの現象学』今村浩明訳

 

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