2026/05/22

社員数が増え、拠点が分散し、働き方も多様化する。企業が成長するほど、社内コミュニケーションは難しくなると言われています。
総合不動産サービスを展開する株式会社ザイマックス(以下、ザイマックス)でも、同じ課題に直面していました。従業員は約1,600名。管理物件に常駐する従業員も多く、部署や拠点を超えて交流する機会は決して多くはありません。
そうした状況の中で同社が企画したのが、「ザイマックス横断ウルトラクイズ」です。全従業員を8チームに分け、半年にわたってクイズ大会やサブイベントを実施。リアルとオンラインを組み合わせながら、組織を横断するコミュニケーションを生み出しました。
この企画を推進・実行したのは事業企画部(2026年4月より経営企画部に名称変更)のみなさん。事業企画部のメンバーは、それぞれが個別の事業領域を担当しながらも、部門の垣根を越えて全社横断的な連携を推進する役割を担っています。その役割の一環として、今回「社内コミュニケーションの円滑化」に向けた施策を担当した馬場さん、古賀さん、堀口さん、堅田さんの4名にお話を伺いました。
目次
組織が大きくなるほど難しくなるコミュニケーションクイズ大会という形にたどり着くまで1,600人イベントを無理なく動かす設計の工夫クイズを通して会社や仲間を知る仕掛けリアルが無理でもオンラインなら。さらに参加者数を増やしたサブイベント社内広報:長いイベントをどう盛り上げるかイベントを通して見つけた「ザイマックスらしさ」まとめ:全員が集まれなくても、組織はつながる編集部(以下、編):今回のイベントを企画した背景について教えてください。
馬場さん:会社の規模が大きくなってきたことが一番の要因ですね。最近は中途採用も増えていますし、外国籍の方やシニアの方など、多様な人材が仲間として参加しています。それ自体はすごく良いことなのですが、組織が大きくなるほど「みんなで同じ方向を向く」というのが難しくなってきていると感じていました。分業化も進んでいますし、働き方も多様化しています。管理物件に常駐している従業員も多いので、他部署の人と会う機会がそもそも少ないのです。
以前は自然に生まれていたコミュニケーションが、気づくと取りにくくなっていた。そこは課題だと感じていました。さらにコロナの影響もありましたね。出社する機会が減ると、部署内でも顔を合わせないことがありますから。部署間のつながりだけでなく、部署内のつながりも少し見えにくくなっているんじゃないかという感覚がありました。
馬場さん堀口さん:特に社内で最も人数の多い不動産マネジメント事業部は800名を超える組織で、物件に常駐している社員も多いんです。「同じ会社なのに会ったことがない」というケースも珍しくありません。
堀口さん馬場さん:そうした中で、何か手を打たないといけないという話は社内でも出ていました。ただ、従業員が1,600人と増加しているなか、全員を一度に集めるのは難しい。それでも、同じ会社の仲間としてつながりを感じられるような場は必要だと思っていました。
仲間意識や帰属意識が、楽しく働くことにつながって、さらには会社の成長につながっていくだろうと考えました。
編:イベント企画の発端はどんなことだったのですか。
馬場さん:2024年にザイマックスグループの再編が行われたことで組織の規模が急拡大したことがきっかけです。コロナ期間中は毎年期初に行われるキックオフミーティングもオンラインでの実施でしたが、久しぶりにリアルで実施をすることになりました。人数が増え、全社員が集まることは難しいためリアルで集まれたのはマネージャー以上の400名程度だったのですが、「やはり実際に顔を合わせるのはいいね」と当時の社長が言ったのです。
そこで、メンバーまで全員集めるのは困難ですが、リアルで会う意義、コミュニケーションの素晴らしさみたいなところをメンバーにも感じてもらいたいと、まずは2024年に謎解きイベントを実施しました。
イベント当日はメンバーだけで400人ぐらい集まって、久しぶりの人と会ったとか、初めての方と会話できたとか、一定の効果がありました。しかし全員は集められなかったという課題が残りました。「全社一丸となって」というところに持っていくためには、やっぱり「1日1回で、メンバーに限って」というやり方では十分ではないという反省がありました。
編:そこで2025年のクイズ大会へと企画が進化していくのですね。最初からクイズというアイデアだったのでしょうか。
馬場さん:いえ、最初はかなりいろいろ考えました。
謎解きイベントに決めるまでの検討段階でも、集まりさえすれば一定の効果があるのではないかと、クルーズや運動会のようなイベントも考えました。でも「集まって何しようか」をしっかり考えた企画にしないと一体感を生み出すといったところにつながらないだろうというところから、色々な部署の取り組みを知ったり他部署の方と協力したりしないと解けない工夫を盛り込んだ謎解きイベントにたどり着いたのです。今回は「一堂に集められないなら何をするか?」というところから始まりました。やはり1,600人規模ともなると「誰でも参加できる企画」にするのがすごく難しかったですね。
堀口さん:企画のヒントを得ようと、まずは事業企画部内で案を出して、色々なゲームを試してみました。
遠隔地等の人もいる為オンラインでも参加できるほうが良いのでは?と考えていたことから、eスポーツに目をつけつつ、「アナログだけどクイズ王決定戦はどうか」という意見から、eスポーツ(テレビゲーム等)に加えてなぞなぞ対決みたいなものをやってみたのですが、それがすごく盛り上がって。やっぱりシンプルで楽しいよねと。
馬場さん:テレビゲームだと、どうしても得意不得意が出ます。操作ができる人とできない人が分かれてしまうし、個人プレーですよね。でもクイズなら、わからなければみんなで相談もできます。
堀口さん:知らない人同士でも会話が生まれやすいんですよね。答えがわからなくても楽しかった。
馬場さん:それで「クイズならいけるんじゃないか」という話になりました。

編:具体的には、どのような形でイベントを設計したのでしょうか。
馬場さん:従業員1,600人を8チームに分けて、チーム対抗戦にしました。1チーム200人くらいです。また、それぞれのチームが担当回を持って、持ち回りでクイズ大会を運営してもらう形にしました。各チームに1回ずつ担当回を持ってもらい、チームの中から幹事としてそのクイズ大会を運営する人を出してもらうので、クイズ大会は8回開催することになります。結果として、半年にわたる大イベントとなりました。
幹事については公募しつつ声掛けして集めた感じですね。司会や音響、問題文のスライド送り、得点集計と得点代わりの積み木を配る係が2名で合計6名程度、テレビ局のお仕事みたいな感じですと言って集まってもらいました。本番の1~2週前に1回顔合わせして、あとは当日リハーサルして、すぐ本番という流れで、なるべく準備に負担がかからない形を目指しました。
開催場所は社内のラウンジが4回、恵比寿や大宮・幕張・武蔵小杉にある管理物件やその近くで4回開催しました。常駐されている事業所の方に運営面で参加いただくことで、こういうところに事業所があるんだなと知ってもらうことも狙いの一つでした。クイズ大会では、
• 各チームから解答者4人、合計32人が出場
• 各チームからにぎやか士(観戦・応援する人)4人程度、合計約32人が観戦
という形で人を出してもらいました。8回開催しましたからクイズ大会だけでも約488人がリアル参加している計算です。さらにオンラインのサブイベントも含めると689人、全体の約4割の従業員が参加しました。

編:クイズの問題はどのように作ったのでしょうか。
堀口さん:クイズ検討委員会を立ち上げました。公募でメンバーを集めて、私を含め6人で問題を作りました。1回のクイズ大会で7問、それを8回分ですから全部で56問です。問題は大きく3種類に分かれています。
1つ目がザイマックスに関するクイズ(XYトリビア)です。せっかくみんなが集まる場なので、知らなかった部署のことも知ってもらいたいと、部署に関するトピックや最近のニュースなど、社内に関する問題を作りました。
2つ目が統計クイズです。社員全員にアンケートを取って、その結果を当てる仕立てです。例えば「カレーの具といえば牛肉?豚肉?」みたいな知識が不要なものですね。アンケートを取ることで、イベント前から参加している感覚を味わってもらうことも狙いでした。
3つ目が映像クイズで、社員や役員に出演してもらいました。例えば、役員含め何名かに集まってもらい、握力を測っておいて「握力が強い順に並べてください」という問題などです。

堀口さん:リアルではクイズ大会に参加することが難しそうな一人事業所の方にも出演していただくなど、できる限り多様な部署の方に参加してもらおうと工夫しました。
社員へのアンケートは全部で3回実施しましたが、一回目の回収数は500名、回を追うごとに増えていき、3回目は750名となりました。約半数に参加してもらえた計算です。
馬場さん:通常のアンケートよりも回収率が高く、多くの人に興味を持ってもらえたと感じています。職場の中で「もう答えたの?」と促してくれる方もいたようで、こういうところでもイベントをきっかけにしたコミュニケーションは増えていたのだと思います。
編:リアルに参加できない社員への工夫もあったそうですね。
堀口さん:サブイベントを2つ用意しました。
1つ目は「タイピング大会」です。ウェブで公開されているタイピングツールを使ってチームで合計ポイントを競うというもの。中間発表も行って盛り上げていったのですが、「どうしたらこんなポイントが出るの!」「この人誰?」など話題になったようです。リアルでの参加が難しい方々の活躍も見られました。
2つ目は「オンラインクイズ」です。クイズ大会では部署にフォーカスしましたが、こちらは個人にフォーカスを当てました。各部の役員や部長に協力を仰ぎ、社内であまり知られていないエピソードをいただいて問題を作成しました。
古賀さん:チームごとにチャットも作っていたので、「この問題どう思う?」みたいな会話も生まれていましたね。
古賀さん堀口さん:中には、スプレッドシートで回答を分析しているチームもありました。私たちの想像以上に本気で取り組んでもらえました。
編:半年のイベントを盛り上げ続けるのは大変だったのではないでしょうか。
古賀さん:そうですね。まずはイベント専用サイトを立ち上げて、情報の周知に努めました。なるべく平等になるようにと考えたため、ルールが結構複雑になってしまい、必要な情報を全部ホームページに載せても問い合わせがくる状況でした。どんな形で広報するかは4人で話し合って都度ブラッシュアップしていきました。
また、イベントの盛り上げについてはかなり力を入れました。イベント用サイトの中では「参加のハードルを下げるため過去問を公開」「競争意識を刺激するため中間順位を発表」「盛り上がりを伝えるため参加者や観戦者に観戦ブログの掲載をお願い」などを行いました。
馬場さん:半年間、事務局だけで盛り上げ続けるのは難しいので、「にぎやか士」としてクイズを観戦した方にブログを書いてもらい、盛り上げに一役買ってもらいました。
古賀さん:それを読んで「面白そうだから次は行ってみよう」という人も増えていきましたね。
最終的に「チームモリモリ」チームが優勝編:イベントの成果について教えてください。
古賀さん:イベント終了後のアンケート結果では、
• 他部署の業務を知るきっかけになった 64%
• 普段話さない人と話した 63%
• 会社への関心が高まった 76%
という結果でした。リアルとオンラインを組み合わせたことで、多くの人が関われたことが大きかったと思います。

編:印象的だった出来事はありますか。
馬場さん:特に印象的だったのは、役員がすごく楽しんでいたことですね。
こんなイベントを実施しますと企画を出したときは「本当にやるの?」という反応だったのですが、やるとなったらもう、本気で関わってくれました。各チームには役員が「団長」として所属しますが、クイズの答えが出る瞬間に立ち上がって喜んだり(笑)、チャットで応援してくれたりと大活躍でした。
堀口さん:絵文字付きで応援メッセージも送ってくださった役員の方もいました(笑)。どんなことでもまじめで一生懸命。それを見て若手が「そういう会社なんだ」と感じた部分はあると思います。
編:今回のイベントを通じて、社内の雰囲気について気づいたことはありますか。
堀口さん:協力してくれる社員が本当に多い会社だと思いました。声をかけると「事務局が頑張っているなら協力するよ」と言ってくれる人が多いんです。
私の担当チームでは1年目の方たちに応援旗やうちわなどのチーム応援グッズを作ってもらったんですが、せっかく作ったのでクイズ大会にも出たいですとか、社長や役員など普段関われない人たちとたくさん会話できたとか、横のつながりができたとか、前向きに評価してくれてうれしかったです。
馬場さん:やると決まったら、みんなすごく真剣に取り組むんです。楽しむことにも一生懸命。それがザイマックスらしさなのかなと思いました。

編:最後に皆さんから今後に向けて一言お願いします。
古賀さん:何を目的とするのかを都度考えて、目的に沿ってターゲットを絞るなどの工夫をしていけたらと考えています。
馬場さん:「交流のために集まりましょう」というだけでは、多様な人材が集う今の環境においては、なかなか参加への一歩を踏み出してもらえません。やはり「得られるもの」がないと人は動かないと感じます。単なる知り合い作りで終わらない「得られるもの」を設定し、大所帯を動かすための打ち出し方を模索していきたいです。
堀口さん:みんなが同じことを求めているわけではないと思うので、どこにフォーカスするかを意識していきたいです。個人的には、どんな企画であれば事業所の方たちが参加したいと思えるか、考えていきたいです。
堅田さん:事業を知るところにフォーカスしていきたいです。会社の仲間がこんな業務で頑張っているよというのが伝わると会社も活気づくことができるのではないかと思います。
堅田さん社員1,600人。拠点も働き方も多様な組織で、全員が同じ場所に集まることは現実的ではありません。それでも、
• チーム設計
• リアルとオンラインの組み合わせ
• 社員自身が関わる仕組み
• 継続的な話題づくり
といった工夫によって、部署や拠点を横断するコミュニケーションは生まれます。
ザイマックスの「横断ウルトラクイズ」は、組織のつながりを再発見する体験を生み出した社内コミュニケーション施策と言えるでしょう。
筆者
那須 由枝