2022/02/09

Road to the Best Communication feat. AbbVie 第3回: ダイバーシティ&インクルージョンを企業文化に 

2013年に設立されたグローバルなバイオ医薬品企業AbbVie Inc.の日本法人アッヴィ合同会社(以下アッヴィ)。日本版「働きがいのある会社」ランキングに、これまで中規模部門で2回、大規模部門で4回と合わせて6回ベストカンパニーに選出されるなど、従業員エンゲージメントを高めながら、着実に事業成長を続けています。

同社は2016年に策定した5カ年計画を2020年に達成、2021年からは「ベストカンパニー」を目指す新5カ年計画「Road to the Best」がスタートしました。同社にとって5カ年計画は単なる経営指標ではなく、社内外コミュニケーションの軸として日常的にも参照・実践されるもので、組織の継続的な進化の鍵となっています。

そんな同社のコミュニケーションのあり方や多彩な取り組み、またそれを支える企業文化などにシリーズで迫ります。

第1回:社員主体で創った“新5カ年計画”の幕開け

第2回: “好き”を語る時間が、エンゲージメントを育む

第3回のゲストは、社員の有志が集まりダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)推進のために活動する「D&Iコミッティ」のリーダーを務める石井玲子さん、川合浩史さん。仕組みや制度をつくるだけにとどまらず、会社のカルチャーとしてD&Iを根付かせるための工夫を伺いました。

 

編集部(以下、編):はじめにD&Iコミッティの概要と、お二人が参加されたきっかけを教えてください。

石井:アッヴィの設立当初から取り組みはあったのですが、2017年に一度休止し、2018年に再構成された組織が今のD&Iコミッティです。会社の戦略に沿った三つのテーマを基に思いのある社員が自ら手を挙げて参加しており、社員がD&Iを自分ゴトにするために何ができるかを自問しながら、いくつかのグループに分かれて総勢35名で活動しています。

私は2019年の追加公募で参加しました。前職でもD&Iにかかわる活動をしていたのですが、組織のカルチャーを作るというのはすごく大きなミッションだと思っていて、それがアッヴィで実現できるのであれば、ぜひ貢献したいと思いました。転職まもない時期だったこともあり、自分の仕事以外に社内で人脈を広げられるのも魅力的でしたね。

 

川合:私は2018年から参加していて、現在4年目になります。活動には2年間の任期があって、今のチームは2020年の1月から2021年の12月末まで。その間、石井さんとともにリーダーを務めることになりました。

入社以来ずっと営業(MR)をしていますが、普段の業務では多様性を受け入れることについて意識する機会ってあまりないんですよ。でも、よくよく考えると、例えば私が育児とか、場合によっては自分の疾患の治療をすることになったら、それを受け入れてくれるカルチャーはものすごく助かりますし、受け入れることがカルチャーになっていくとより強いチームなっていくかもしれない。ビジネスとしてもいい結果につながるのではと思い、参加しました。

 

編:他社ではD&I推進室を設けたり、人事が主導して制度を作ったりするケースも多いと思いますが、アッヴィでは社員による手挙げ制でプロジェクトが進められているのですね。

石井:アッヴィには、ポジティブな熱意をもち組織やカルチャーを変えていくんだという人たちに中心になってほしい、というポリシーがあります。会社主導で半ば強制的に進めるのではなく、社員を巻き込んでカルチャーを一緒に創っていく風土があり、自ら「やりたい!」と手を挙げればいくらでも主体的に活動できます。

ただ、会社としての戦略的な動きに全く連動していないかというとそうではなく、D&Iとほかのプロジェクトがうまく協業をして、トップダウンとボトムアップを融合させながらカルチャーを推進していこうとしています。

やはり、会社としてもやらなきゃいけないんだというトップダウンの働きかけはとても重要です。D&Iコミッティのように手挙げ制のボトムアップなチームと、会社からミッションとして指名されたメンバーが推進しているチーム。その両輪を合わせて、一緒にやっていきましょうということですね。トップダウンとボトムアップがうまく融合して、両輪としてうまく回っていくことで、社員を巻き込み自分ゴト化していけると感じています。

 

川合:アッヴィにはD&Iコミッティだけではなく、カルチャーを醸成するチームや5ヵ年計画「Road to the Best」を推進するチームなどがあり、それらのチームとのコラボレーションも多いですね。ほかのチームと積極的にコラボレーションしてきたことで、より前向きに様々な企画を進めてこられたと思っています。

たとえば、セッション開催時に、ほかのチームのメンバーの方にゲストとして来ていただいたり。また、人事とコラボレーションして、営業職の「居住地選択MR制度」や、入社間もない方が会社のカルチャーに早くなじめるようにするための「バディ制度」などをカタチにすることもできました。

このように会社の戦略や制度と連動させるために経営層の方とも会議をしますが、D&Iの活動では、いわゆる会社の職位はまったく関係ありません。共通のテーマのもと気兼ねなく協働できるってすごいなと思っています。このチームに入って今のこのポジションになって、普段関わることがなかった方と関われる、すごくいい機会だなと改めて実感しています。

 

石井:現在のD&Iコミッティは特定の予算を持ってないクロスファンクショナルなチームなので、毎回何かイベントを企画するたびに経営層に提案して、予算を付けてもらいました。もう何回企画書を書いたんだろうってくらいプレゼンしましたね(笑)。

 

D&Iコミッティメンバーの皆さん。週1回のペースでオンラインミーティングを実施しているD&Iコミッティメンバーの皆さん。週1回のペースでオンラインミーティングを実施している

編:会社の動きにも連動させながら、企画をゼロから立ち上げるのですね。具体的には、どういったテーマで、どのようなことを意識して活動されたのですか。

石井:3ヵ年計画として、2020年は「知る」フェーズ、2021年は「変わる」フェーズ、そして2022年は「拡げる」フェーズとして活動を推進しました。社内アンケートの結果からも、「自分自身でD&Iを説明できる」と答えた方が77.9%いて、だいぶ浸透してきたと思います。とはいっても、社員の約半数はまだ「知ることはできたが、自分がどう変わったかはまだよくわからない」という感覚なので、社員をどう巻き込んでいくかは引き続きの課題です。

アッヴィは、働き方に関する制度は本当に整っています。ただ、それが正しく理解されているか、正しく活用されているかについてはまだ課題があると思っているので、ここは掘り下げたいですね。D&Iコミッティの活動を通して、社員一人ひとりが自分の環境やライフステージ、ライフイベントにかかわらず柔軟な働き方を選択し、お互いの生き方を尊重できる文化を醸成していきたいと思っています。

 

川合:私が大きなテーマとして取り組んできたのは、女性の活躍推進です。営業における女性比率の向上に取り組む中で、多くの女性社員から「出産・復帰後のキャリアがなかなか描けず不安」という声が挙がっていました。一人ひとりがキャリアデザインをきっちり描けることが、営業組織においてD&Iカルチャーを醸成する一つのきっかけになると考えました。

施策としては、キャリアコンサルタントの国家資格を持っている石井さんに講演をしてもらったり、社員にインタビューしたり。ほかにも「木塚の部屋」というネーミングで、アッヴィの社員である“木塚さん”が様々なキャリアを歩んでいる社員とトークする某テレビ番組のような動画も配信しました。 例えば「なぜ転職を決めたんですか」「異動のきっかけは」といった内容や、お子さんがいる方には会社からのサポートについて質問したりして、気軽にほかの方の経験を聞ける場をつくりました。

やってみて改めて思ったのですが、人事でもなく、管理職でもない一社員がやるって、実はすごくインパクトが強い。やっぱり目に付くんですよ。もちろん人事でも同じことはできると思うんですけど、そうするよりも、自分たちの仲間がリードして頑張ってイベントを実施していることが、社員の巻き込みに非常に重要だったなと思います。

 

石井:育児休業に関するトークセッションを企画した際も、実際に育休を取得した社員だけでなく、その上長や同僚など、とにかく一般の社員と同じ目線の方たちも登場させることを重視しました。登壇者のポジションのバランスにも気をつけて、マネジメント層もいれば、若手メンバー、管理職もいる。育休取得者だけだと、結局「育児している人だけでしょ」となってしまいがちなので、当事者意識を醸成させるためにも、「あなたの周りでも、もしかしたらこれから部下や同僚が育休を取るかもしれないよ」と。そんなふうに様々な視点からディスカッションできるようテーマを設定した結果、二日間で200名を超える参加がありました。

介護についても同様で、講演の前にe-Learningで自主的に学習できるコンテンツを配信し、次に介護のスペシャリストの講演を聞いて何が課題なのかを理解した上で、実際どうだったかを介護経験がある社員に語ってもらいました。そうすると、「身近な人がそういうふうに頑張っていることにすごく感銘を受けました」と同じ目線で捉えられるようになるんですね。それが会社への信用度にもつながり、「結構うちの会社ってサポートが充実しているじゃないか」というような、心理的安全性が生まれると思うんです。自らコミュニケーションをとれば、何かしらサポートしてくれる、そう思っていただければいいなと。育休取得者や介護経験者だけではなく、誰もが「当事者」になる可能性があるというメッセージを皆さんに届けられるよう意識しました。

 

LGBTQのイベントで、社内スタジオからオンライン配信するD&Iメンバーの皆さん

編:当事者が身近なところにいると興味を持てますが、近くにそういう人がいないとなかなか興味を持ちにくいですよね。興味を持てないから、育休を取った人がいると聞くと「こっちは忙しいのに」とか言っちゃったり。本当はそういう人たちこそ参加して欲しいのに、みたいなこともありますよね。

石井:そうですね、目標はそこです。ただ、カルチャーを変える、人を動かすという観点ではそこから挑むのはハードルが少し高すぎるので、まずは動きたいと思っているけれど一歩を踏み出せていない人から。動きたいと思っている人たちにきっかけを作って輪を広げていくことで、最後に残った“動かない人たち”が、「あれ?なんか自分たち遅れてない…?」って気付いていただけるといいかなと(笑)。だから、多少時間はかかると思います。時間をかけて取り組んでいくためにも、継続性が非常に重要だと思っています。

そういう意味ではこの活動をどうやって継続させるかが目下の課題なのですが、2022年以降は全社的な方針として、新たにERG(エンプロイリソースグループ)という組織が立ち上がり、マネジメント層の関与を深めつつ、ボトムアップもより多層的に活動していく仕組みが構築されました。ボトムアップで活動するメンバーのモチベーションを維持しつつ、トップダウンの動きとうまく連動させて、活動の継続性を高めていきたいと思っています。

もう一つ、仲間をいかに増やすかも継続の鍵になります。D&Iの活動に興味はあるけど、業務が忙しすぎて「ちょっと企画までは」と二の足を踏む方がとても多いんですね。でもそういう方たちが離れていってしまうのはもったいない。先ほど、ボトムアップについては多層的な仕組みになるとお話ししましたが、がっつり企画から入りたいという人はもちろん、まずはイベントに参加していっしょに盛り上げたいという人もつながりを持てるように、段階を踏んで活動していこうと考えています。

現在は、Teamsのチャット機能を使ったPRIDE(LGBT)チャネルと育児チャネルがあり、メンバー間の情報共有などに活用されていますが、このようなコミュニケーションツールの活用も仲間づくりには重要ですね。育児チャネルには約100名、 LGBTも60名くらいの社員が登録していますが、こういった小さなタッチポイントを増やし、気軽なコミュニケーションを発信していくことで裾野が広がっていくことを実感しています。

 

編:D&Iの輪が着実に広がっているんですね。活動を通して、社内の雰囲気や社員の方の行動に変化を感じることはありますか。

川合:セールスの現場では、とくに新たに入社された方や他部署とのコミュニケーションが増えたというか、お互いに受け入れる、ウェルカムな雰囲気が出てきたと思います。あとは、私自身がD&Iに取り組んでいることが認知されてきた感じがありますね。僕が電話すると、「D&Iのこと?」と言われたり(笑)。

石井:そうそう、今まではD&Iに興味のある人だけが仲間内でやっていると見られていた部分もあると思います。ただ最近は、全社アンケートやセミナーのフィードバックでも「D&I、すごくがんばってますよね」というポジティブなフィードバックをいただいたり、「D&I活動が活発だから入社を決めました」という方が複数いらっしゃったり、活動自体のブランディングが少しずつできてきたのかなと感じています。まだまだこれからですが、D&Iを会社のカルチャーとして根付かせていくために、私自身も当事者として試行錯誤を続けていきたいと思っています。

 

今回お話を伺った(左)川合さん、石井さん

アッヴィについて

世界70カ国以上の国に約48,000人もの従業員が働く、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業。
日本においては、1,300人を超える社員が医療用医薬品の開発、輸入、製造販売に従事。自己免疫疾患、肝疾患、神経疾患、がんの各領域を中心に、患者さんの人生を豊かにしたいと願い、日々の業務に取り組んでいる。

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