2016/03/18

リクルートの新規事業提案制度〜NewRING byRMPの創り方〜

以前、CAPPYで取り上げた、リクルートマーケティングパートナーズ(以下、RMP)の次の事業を創る新規事業提案制度『NewRING byRMP』(※該当記事はこちら)。

リクルートの新規事業を創出し続けてきたこの新規事業提案制度。2012年の株式会社リクルート主要事業分社化に伴い、各事業会社へと受け継がれ、独自の進化を遂げています。

『ゼクシィ』や『カーセンサー』、『リクナビ進学』、『スタディサプリ(旧 受験サプリ)』、『Quipper』などのサービスを展開するRMPでは2015年、二次審査(ピッチコンテスト)の審査委員に社外から著名起業家を招聘し、話題を席巻。大きな盛り上がりをみせました。

多くの企業でこうした”新規事業”を募る社内制度はありながらも、一方で聞かれる声が「一部の従業員しか参加していない」「盛り上がらず形骸化している」「若手のガス抜きにしかならない」といった、事務局のみなさんが抱える悩みの声。

そこで今回は、『NewRING byRMP』の事務局を担当したRMPの赤井枝里子さんに”NewRINGの創り方”をお聞きしました。

編集部(以下、編):昨年、募集を開始されたNewRING byRMP、ついに最終審査が終わったそうですね。半年を超えるプロジェクトですが、事務局はどのように動いていたのですか。

私と吉澤の二人が事務局として、二人三脚でやってきました。

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事務局の赤井さん(右端)と吉澤さん(右から2番目)。

 

今回のNewRING byRMP、動き出しは昨年の春でしたので、募集開始まで実質1ヶ月間くらいで形にしたプロジェクトでした。

というのも、山口が弊社代表に就任したのが2015年の4月。『スタディサプリ(旧 受験サプリ)』でNewRINGグランプリを獲得、スケールさせているという山口のバックグラウンドから、就任を契機に”RMPがリクルートの新規事業を牽引していく”という気概へと、大きく方向性が変化したんです。

そうした方向性が固まってから、エントリー受付の開始までが非常にタイトなスケジュールとなりました。

山口の熱い気概を社員にどう伝え、どうモチベーションを上げていくかを考えた結果、募集開始に合わせたメール社内報のリニューアルを行うことにしました。熱いメッセージもセットでないと盛り上らないと思っていたので、「いかに”インサイト”を動かせるか」がキーだと考えながら。

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編:社内報のリニューアルではどのようなことに注力したのですか。

今回、審査委員として社外の起業家の方々を招聘しましたので、「世の中に、あなたの企画は通用するのか?」「審査委員を唸らせろ」といった、参加者を煽るようなメッセージングをしました。

上司に提案して通らなかった提案が、NewRING byRMPに出したら通ったりするのが新規事業提案制度のおもしろいところ。

山口の熱い想いをドラマティックに伝えながら、「今挑戦しないとダメだ、エントリーしよう」と思うような”ストーリー”を作り、社内報リニューアル第一弾で発信したのです。

編:そうすると、社内報のリニューアル前後で雰囲気が随分と変わったのではないですか。

私たちは『cheers! your life.』という、”拍手があふれる世界”を目指そうというコーポレートコピーを掲げているので、それまでは比較的ポップなコミュニケーションというか、四コマ漫画を入れたりして、親しみやすさを前面に出していました。

リニューアルに際しては、コーポレートコピーのメッセージは変わらないのですが、未来に向けて新しいことを始める際にいろいろとぶつかる課題にもクールに挑戦する、突破していくというイメージを込めました。

同時に、シンプルで伝わりやすさを大事にして、黒をベースにしたモノトーンにしています。

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リニューアル後のWeb社内報。モノトーンで、煽るメッセージが特徴。

 

クリエイティブをガラリと変えると、「なんかこの会社、変わるんじゃないの?」という高揚感、期待感が出ると思いまして。そうした変化をクリエイティブから象徴的に出していきたいなと企てていました。

編:実際、NewRING byRMPの広報と社内報のリニューアル、同時リリースの反響はいかがでしたか。

「動き出している」「本気なんだ」というメッセージが伝わったようで、「今年はエントリーに向けてどうしようか」という会話が、色々な場所で聞こえてくるように。

あとは、社内報はリクルートグループ各社にも共有されていてRMP以外からも声をかけられました。「どういうことをやっているのか?」という質問から、「こういうことはできないのか」という提案まで。

他社から見ても分かるほど、”RMPが動き出している”感じを醸し出せたのだと思います。

編:そこからどのように社内を盛り上げていったのですか。

まずキックオフイベントを開催したのですが、大勢の社員が参加してくれました。このキックオフの狙いはお祭り感、気軽さを出すことでした。

「自分もトライしてみよう」という”最初の一歩”が凄く大事だと思うので、友だちみたいなメンバーと一緒にお祭りに参加する…。気軽と言うと語弊があるかもしれませんが、まずは一歩を踏み出してみようよと。

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その場では山口からNewRING byRMPにかける熱いメッセージを直接伝えました。

気をつけたのは、「このような制度で、どのようなスケジュールになっていて、いつまでに何をやってほしいか」という事務局からのお知らせの場にはしないようにすることでした。NewRINGの象徴である山口が近くで見ている。そうしたトップのコミット感を伝える場に仕立てました。

編:キックオフの前後で、参加希望者のマインドに変化は見られましたか。

絶対にやろうと思っている人も、参加を迷っている人も、ただの説明会だと思って”とりあえず”来るわけじゃないですか。でも参加してみたら熱いメッセージを受けて「本気度が伝わってきた」と感じてくれた人も多かったようです。

集合写真

キックオフイベントは大盛況。みなさんの笑顔が印象的です。

Sticker

参加者には『NewRINGER』ステッカーが配布されました。

 

大事にしている考え方は、「まずは参加してみる」という一歩を踏み出すこと。山口もNewRINGに6年参加し続けて、6回目の挑戦でようやくグランプリを獲得したわけです。それに倣えば、「6回続くその1回目が今年のNewRING byRMPでもいいんだ」と理解してくれたメッセージが多かったですね。

※キックオフイベントの模様はこちら(別ウィンドウで開きます)
http://www.recruit-mp.co.jp/feature/company/newring_byrmp.html

 

編:山口さんも6年参加され続けた中で、毎回違う学びを得ながら、成長をしながら、グランプリに到達されたんですもんね。

山口も「1年目は先輩に誘われてお祭り気分で」というキッカケでした。そうした”最初の一歩”を踏み出す総量が増えていけばいいですよね。

ただ一方で、そうした”気軽さ”と”本気度合い”の両立が難しい部分もあると思っています。企画を検討している時点では相反しているのではないかという議論も、当然ありました。でも議論を重ねた結果、”最初の一歩”を会社としてメッセージしていくことが重要だという結論に至りました。

編:社内を盛り上げていくために、取り組んだシカケはどのようなものがありますか。

基本的には、社内報でのコミュニケーションを継続して、熱を冷めさせないようにするというところです。同時に、キックオフイベント、リクルートグループの新規事業に関わる人を集めた横断型サミットの初開催、前年度NewRING byRMPグランプリ獲得者による勉強会など、社内報とイベントを計画的に考慮して開催しました。

あとは盛り上げ施策として、参加賞のパーカーとTシャツを用意するなどしました。こうしたノベルティで気をつけたのは、配って終わりにしないことです。空気感を継続するというか。

パーカーなら実際に着てもらわないと意味がないですよね。そう考えたときに、着心地とか素材には相当こだわって、サイズやカラーも細かく準備しました。

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赤井さんが着ているのが参加賞のパーカー。RMPのサービスロゴがプリントされています。

 

みんなで一緒のパーカーやTシャツを着て、「ああでもない」「こうでもない」って一致団結して議論ができたらいいなと。そういう空気感から、一体感は生まれていくのだと思います。

編:同じパーカーを着て議論、素敵ですね。イメージですけど、NewRING byRMPが終わったあとも着続けてもらえると、”一緒に挑戦した仲間”といった一体感も継続して出るのかなとも思いました。結果、エントリー98件、参加者のべ350名と、前回の参加人数を大きく超えたそうですね。

お祭り感で量を増やすと質が下がるのでは、という議論がありましたが、参加者が増えて全社的に盛り上がってくると、みんなが切磋琢磨し合う土壌が生まれました。「今回どうしようか」とか「何出すの?」とか、そういう会話が日常的に発生するなかで、結果的に質も上がっていくのかもしれません。

編:確かに、議論が活発になると自分のエントリー内容を見直す機会も、必然的に増えますよね。仲間、ライバルが大勢いるということは心強いことだと思います。

新規事業はチームで挑戦することが重要だと考えました。各個人が持つ色々な得手不得手をチーミングしながら駆け抜け続けるということを、受賞するまでは業務外でやり続けなくてはいけないので、仲間を作って楽しくやることでやり抜くことができるのではないでしょうか。

編:事務局として悩んだことはありますか。

量を増やして質も上げるってどういうことだろう、というのはやはりずっと考え続けました。

社外から審査委員を招くことも初めての試みでした。社内で事業化に向けてやっていることと、社外の目線の違いとか、さまざまな見方もあると考えました。リクルートとは何のしがらみもない社外の角度で審査される観点が、参加者に受け入れられるのか、など。

やはり新しいことにチャレンジするときは不安もありました。でも、やり抜いたことで結果的に化学反応が起きて、よかったなと思っています。

編:社外の審査委員を招いた二次審査のピッチコンテストは、会場設計にも相当こだわっていましたよね。

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会場の盛り上げ方は、細部に至るまで設計しました。たとえば、タイムキーパー。

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タイムキープって普通、カンペやチンベルで行うことが多いと思うのですが、カウンターをドンと置いて。ピッチというコンセプトを前面に出して、会場全体にオープンに見せるのはおもしろかったですね。

あとはイベント冒頭で流すオープニング映像の制作。社内報で取り入れたモノトーンを引き継ぎながら、挑戦するマインドをどう掻き立てるか。コンセプトは”次のリクルート”というイメージです。

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新規事業なので、世に出たときには勢いのあるスタートアップや並み居る起業家の方々に勝るものを目指すことになると思います。ここでも”新しいことをやるんだ”という気概を強調できるように気をつけました。

※ピッチコンテストの模様はこちら(別ウィンドウで開きます)
http://www.recruit-mp.co.jp/feature/company/newring_byrmp_2.html

 

編:赤井さんが今回、プロジェクトをマネジメントしているときに、事務局の立ち位置をどのように考えていましたか。

事務局ということで今回のNewRING byRMPに関しては、私たちは黒子に徹するようにしていました。

例えばエントリーした人への審査結果のフィードバック。短期間でしたが、今年はエントリー全98件に対して、山口から個別にメッセージをしました。それは「社内イベントとして山口自身が想いを持って対応している」という空気を作りたかったからです。

編:なるほど。事務局から選考結果が届いても、経営に提案しているエントリー者からすればちょっと違いますよね。

繰り返しになりますが、今回私たちが大事にしたかったことは、本気で事業化へ臨むとともに、「何回でも挑戦していい」「今年はきっかけ」というメッセージ。

来年も再来年もNewRING byRMPを続けていくのであれば、新規事業をやってきた山口が向き合って、メッセージをきちんと戻すことでそれを示したかったのです。

もちろん、個別にフィードバックをせずに、普通に結果を発表して終わりにもできましたし、社内報のみで広報することもできます。こだわったのは今回駄目だったから何が悪いではなくて、「これが始まりなんだ」ということを伝えることでした。

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細かい作業からイベント運営まで手がけた吉澤さん。

 

トップの想いやメッセージを事務局が曲げて伝えない、いかにフィルターなく伝えられるか、ですね。

編:リクルートさんは新規事業を多く立ち上げてきた実績や、そうした風土があるので社内にも語りやすいと思いますが、そうでない会社はどのようにすればいいのでしょうか。

トップメッセージという手法はとても強いと思いますが、事務局のストーリーの組み立て方で工夫も可能と思います。

どう社員を多く巻き込んでいくか、高揚感を創り上げていくか、”全体のコミュニケーション”を設計して愚直にやっていくこと。細かいことの積み重ねでしかないので、ひとつひとつに手を抜かない。

正直、ここまでやる必要があるのかな、と心が折れかけるときもありました。「こんなものやって意味があるのか」とか「そんなもの前例がない」とか「投資対効果が」とか。

それでも、成功に向けたストーリーを実現するためには、社内のコミュニケーションを本気で設計して、後は惑わされない。軸を決めた後は、調整は必要ですが、軸はぶらさないでやりきる。そうすることで、最終的に一気通貫のメッセージが伝わるのだと思います。

※ピッチコンテスト後、最終審査の模様はこちら(別ウィンドウで開きます)
http://www.recruit-mp.co.jp/feature/company/newring_byrmp_3.html

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この記事の著者

中島 浩太

株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。
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