2014/10/21

“本気のダイバーシティ”を追求するアステラス製薬の『モビリティ・プログラム』

先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献しているアステラス製薬株式会社は、グローバル企業ならではの先進的な「ダイバーシティ」を推進し続けています。今回は、同社が導入しているモビリティ・プログラム、特にその中の『アンバサダープログラム』について、グローバル人事担当部長の高橋宏暢さんとダイバーシティ推進チームリーダーの矢野章作さんにお話を伺いました。

Q:『ダイバーシティ経営企業100選』を受賞されているアステラス製薬さんでは、特に海外との人材交流が進んでいるとお聞きしました。全社の中での国籍比率は、今はどのようになっているのでしょうか?

「アステラスの従業員は、現在、約17,500人。うち、海外拠点の社員は約9,000名と、海外社員比率は5割を超えています。内訳としては日本4割、ヨーロッパー3割、アメリカと南米を合わせて2割、アジア1割、といった分布になっていますね。ダイバーシティを推進し始めた2005年当時からすると、かなりの人材交流が進んだと言えます。

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Q:グローバル化を加速した仕組みとして『アンバサダープログラム』というものがあると聞きましたが、これは、どのようなプログラムなのでしょうか?

まさに、このプログラムの狙いは、国籍問わず、優秀人材が活躍する企業になること。全世界の現地法人スタッフが、長期出張により国籍を超えて人材交流することで、人材のグローバル化を促進する仕組みです。通常、世の中でダイバーシティと言うと、社内にいる多様な人材の理解・交流のことを指しますが、我が社では、実際に、海外から長期でグローバル人材を受け入れることで、ダイバーシティを加速したいと考えたのです。」

Q:そもそも、ダイバーシティ推進のきっかけは何だったのでしょうか?

アステラス製薬は、医薬品市場の中で、真のグローバル企業となることを目指し、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した企業です。合併の翌年2006年に、2015年に向けた『VISION2015』を策定。この中で、アステラス製薬における最大の経営資源を“多様な人材”と位置付け、人材の能力や可能性の最大化こそが、経営ビジョン達成に不可欠だと宣言し、全社をあげて推進し続けてきました。

Q:様々な経営課題がある中で、なぜ「多様化」にフォーカスしたのですか?

社会の変化や競争の激化により、顧客ニーズの多様化が急速に進んでいます。その中で、企業の競争力を強化するためには、我々自身の働き方も多様化していく必要があると考え、ダイバーシティマネジメントにフォーカスすることを決めました。
そしてもう一つが、柔軟度の高い組織づくり。性別、国籍、役職、価値観などの違う様々な人々が交流することで、“説明責任”が増し、柔軟で透明性の高い意思決定ができるようになるだろう、と考えたのです。

Q:そのような組織づくりを目指す中で、こだわっているポリシーはありますか?

人種、国籍、性別、年齢などに関係なく、実力主義に基づく“適所適材”を実現するということが『VISION2015』の中の人事ポリシーの一つです。“適材適所”ではなく、あえて“適所適材”というところにこだわりを持っています。企業の中で、価値の源泉である“人材”はもちろん大切ですが、人の能力を活かすためには、まずは“ポジション”があることが大前提。 そして、その場所にふさわしいベストタレントを配置するためには、性別、年齢、国籍は関係ない。最終的には、このような最適人材配置ができているかどうかが、多様化の肝になると思っています。

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Q:なるほど。その多様化の軸となる『アンバサダープログラム』の詳細を教えてください。

はい。人材交流で言えば、直接、現地から採用するアプローチもありますし、海外勤務という形で海外の現地法人の社員が数年間日本に来て働くという場合もあります。日本に住んでいる外国人を採用する場合は、日本のことがある程度分かっているため、うまく行くことが多いですが、海外の現地法人の人たちが日本で働くとなると、なかなか難しい面もあります。それは、会議参加が中心の1週間程度の出張では分からないため、数ヵ月の間、実際に職場で働くという短期派遣型の人材交流プログラムを導入しました
数年間の海外勤務で日本にくる場合、母国でのポジションを手放して日本に来ることになるため、自分のやっていた仕事は他の人に引き継ぐわけです。数年後に帰った時、その仕事に戻れる保証はありません。これは、人生においてかなりリスキーなことです。だからこそ、受け入れる職場も、送り出す職場も、“本気”にならなければならない。アンバサダープログラムは本人や職場を”本気“にさせるための仕掛けです。

Q:このプログラムの導入によって、社内に変化はありましたか?

海外から一人でもメンバーを受け入れるだけで、グループのミーティングを英語にしていく必要があります。だから、最初はどこの部署でも「うちは海外からの受け入れはいいよ」というネガティブな反応を示し、当初は人材交流が全く進みませんでした。
その呪縛を解くために、長期の出張扱いで、“NON JAPANESE”を受け入れるプログラムを作った訳です。一週間の出張と違い、数ヵ月でも一緒に机を並べて働くことによって、お互いの理解も深まり、また人的なネットワークが格段に広がりますね。また、受入れ職場の人たちも「なんとかやれそうだ」と思ってくれたらしめたものです。そして、アンバサダーを終えて現地法人に戻ってからも、ぜひ、日本のサポーターになってもらいたいという想いもある。そういう意味も込めて、アンバサダー(=親善大使)というわけです(笑)。

【アンバサダーを利用したご本人の声】
●会社全体の業務に対する視野が広がり、今後のキャリアに新たな選択肢が生まれた
●実際に本社で働くことで、業務上求められる報告などの意味がよく分かった
【アンバサダー受け入れ側の声】
●仕事の舞台は世界にあり、今後は外国人社員も職場に普通にいる状態になると認識した
●トップに物怖じせずにアプローチする異性など、日本人社員への大きな刺激となった

 

Q:ダイバーシティを推進している企業は、世の中でも増えていますが、アステラス製薬ならではの特徴や考え方はありますか?

astellas4多様な人間が双方を認め合い、お互いを活かすためのダイバーシティ&インクルージョン。我々が実現したいことは、“その人達が働きやすい環境を作る”ことではなく、“企業と社員がWinWinの関係になることであり、それにより企業の競争力を高めていく”ということなのです。

そして、互いの多様性を認め合い、活かし合っていくだけではなく、時には“衝突”も必要です。新たなイノベーションを起こすためには、違うもの同士が健全にぶつかり合い、コンフリクトして、結果的に“化学変化”を起こさないといけない。もちろん、単純にぶつかって喧嘩別れするということでは意味がありませんが、違う意見を持ちながらも、まずは相手を受容し、しかし何でも“イエス”ではなく、意見をぶつかり合わせる。そこにコンフリクトが起き、化学変化の向こうに、イノベーションがあるはずです。

Q:ここ数年を振り返ってみて、1番の変化って何でしょうか?

このプログラムをスタートした時は、NONJAPANESEの人が4人しかいませんでした。つまりほとんど日本人しかいない状態です(笑)。しかし、2008年に、このアンバサダープログラムを立ち上げてから、日本人以外の外国人が、日本エリアに常時50人程度、10カ国以上の人が来日しています。これでも十分ではないと思っていますが、何年か前までは、外国人は、たいてい短期出張や会議に来ているだけでした。今では、いつでも当たり前にオフィスや会議室、カフェテリアにいるので、それはやはり大きな変化ですね。

Q:最後になりますが、ダイバーシティを推進してきたアステラス製薬が、実現したかった世界感とは?

『見えるグローバル化』というのが、我々の大切にしているキーワードです。ダイバーシティとは、何も特別なものではない。アステラス製薬という会社の中に、いつでもどこにでも、海外の人材がいることが当たり前の世界。それが普通の状態にしたかったんです。 それこそが、真のダイバーシティなのではないでしょうか?

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急速なグローバル化が進む中、現地採用や外国人留学生採用が非常に活発化しており、グローバル人材の育成も一つ大きなテーマとなった。だが、実際一緒に仕事をしたら、文化や価値観の違いによって、うまくいかないケースも少なくない。 日本在住の外国人ではなく、あえて日本語ができない外国人を受け入れようとするアンバサダープログラム。言語や価値観、文化が違っても、お互いの違いを認め合い、時にぶつかり合い、化学変化した結果、新しいイノベーションを生み出すこと。これがアステラス流「本気のダイバーシティ」の考え方だ。 当社の「見えるグローバル化」の拘りについて、次回またじっくり聞きたいところだ。

筆者

CAPPY編集部

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