2015/03/30

伊藤園が取り組む「お~いお茶×IT」の感動体験『茶ッカソン』

1月24日(土)・31日(土)、渋谷ヒカリエで2週にわたって”第2回茶ッカソン in Tokyo”が開催されました。茶ッカソンは「志のある人たちが集まり、お茶をたしなみながら、コミュニケーションを高め、イノベーションを生み出す場」として株式会社伊藤園が主催するITイベントで、2014年5月にシリコンバレーで開催されたのが始まりです。

しかし、どう考えても異質に思える伊藤園×ITのこの取り組み。イベントの仕掛人で、シリコンバレーに「お〜いお茶」ブームを作った男として知られる伊藤園マーケティング本部の角野賢一さんに、このイベントにかける想いをインタビューしました。

※当日のイベントレポートはこちら(PCで開くと映像と音楽が流れます)

編集部(以下、編):昨年10月に開催した”第1回茶ッカソン in Tokyo”に続き、東京で2回目の茶ッカソン。イベントを終えて、今回の手応えはいかがでしたか?

角野さん:今回は2週にわけてイベントを実施しました。とてもありがたいことなのですが、休日返上で参加して下さる皆様は凄くモチベーションの高い方たち。みんなグイグイ議論に参加していて、前回にも増して刺激的な会になったと思います。

今回は新しい取り組みとして、議論に入る前に尺八の演奏や座禅(この坐禅のアイデアはカマコンバレーさんの行っている禅ハッカソンに頂きました。)を行いました。ハッカソンをするだけであれば、尺八や座禅に時間を割かずに普通に議論をして、ちょっとお茶を出すだけでよかったかもしれません。でも僕はそれは嫌だった。

茶ッカソン3

というのも、みなさん普段から毎日満員電車に揺られて、スマホで頭がパンクするくらい情報を詰め込んで、ストレスフルな時間を生きている。それは悪いことではありませんが、その日常は置いてもらって。

この日だけは10分間だけすべてを忘れて、畳の上で座禅をして自分の呼吸に集中してみる。それが終わった瞬間に伊藤園のティーテイスター(お茶に関する資格)がいれた、温かいお茶がみんなの前に運ばれてくる。それを一口飲むところから茶ッカソンが始まる

茶ッカソン1

どうです、スッキリした気分で始められそうじゃないですか?(笑)

みんなが座禅をした後にお茶を飲んでいる絵は僕の頭の中にずっとあって。絶対いいと思ったので実現したかった。なので、弊社オリジナルの茶殻が配合された畳を70畳取り寄せて、ヒカリエに敷き詰めて場を準備しました。今後も座禅をしてお茶を飲んで始めることを、定番化していきたいと思っています。

 

編:社内での反応はいかがでした?

実は茶ッカソンは社内で特に大きく告知をしていないのですが、当日は休日にも関わらず多くの社員が見学に来てくれました。朝礼などで大々的に告知をしてもいいのですが、口コミでじわじわ広まるくらいの伝達速度が今はいいのかなと思っています。そのうちメディアでバンと大きく取り上げられたときに気がついて、そのときにみんなが見に来てくれたら嬉しいですね。

茶ッカソンb

ただ、新しい取り組みですので、既に社内でも興味を持ってくれている方が大勢います。

今回、座禅後にお茶をいれてくれたティーテイスターの浜田さんも、その一人です。彼女は伊藤園5,000人の中でもたった6人しかいないティーテイスター1級を取得している、まさにお茶のプロフェッショナルです。彼女は普段から食育や大茶会(店頭試飲会)というイベントに参加していますが、茶ッカソンのようなITイベントは初めてで、とても新鮮だったそうです。

他にも、イベント後にまったく知らない支店の方から「チャカッソンって何ですか?」と内線がありました。その方には「いえいえ、茶ッカソンです」と、名称から丁寧に説明を始めたのですが(笑)、最後には「今までの伊藤園にない新しい雰囲気がしたので、凄く興味を持ちました。」と言っていただきました。

 

編:社内で徐々に認知され始めているのですね。茶ッカソンは何故始められたのですか?

角野さん:茶ッカソンは、「お茶+感動体験」を体現するために始めました。

僕は昨年までサンフランシスコで5年間、主にシリコンバレーのIT企業を中心に営業をしていました。当初、伊藤園のシェアはほとんど0でしたが、飛び込み営業から初めて、エンジニアの集まりに精力的に顔を出すなど地道に営業活動を行うことで、シリコンバレーで「お〜いお茶」ブームを起こすまでに至りました。Apple、Google、Facebook、Yahoo!など名だたるIT企業のカフェテリアに「お〜いお茶」が置いてある状況です。

ただそこまで至った一方で、お茶の魅力だけを純粋にアピールしていっても、それを世界中に広めることは簡単ではないなと感じました。というより、お茶の魅力だけを伝えるのではなく、同時に感動体験をしてもらう必要があるのではないかと。

その場合の方法は2つあると思っていて。1つはもともと存在する素敵な場所、よいエクスペリエンスが生まれそうな場所に「お〜いお茶」を広めること。つまり、僕がシリコンバレーで実現したような、Googleのカフェテリアに「お〜いお茶」がある状態です。他の企業から初めてそのオフィスに訪れた人は、こんな奇麗なオフィスで、世界中の料理が無料で提供されているカフェテリアで、飲まれているのは炭酸飲料でもエナジードリンクでもなく「お〜いお茶」だった。そういう状況を見ると、Googleでの感動体験と共に「お〜いお茶」のイメージを付け加えることができる。

そしてもう1つの方法は、僕らが能動的にそのような感動体験の場を作っていくこと。お茶を飲みながら、仲間と頭脳をフル回転させながら熱く議論し、イノベーティブなアイデアを生む。それが茶ッカソンです。ただ、実際にシリコンバレーで茶ッカソンを行うに際しては何のノウハウもなくて。Evernoteの外村さんやNiftyの河原さんなど、大勢の方のご協力をいただいて何とか実現にこぎ着けることができました。

茶ッカソン4

 

編:シリコンバレーで茶ッカソンを開催するにまで至ったのに、何故日本に戻ることになったのですか?

角野さん:刺激的な毎日でしたし、ある程度良い結果も残せて、様々なメディアにも取り上げて頂きました。正直なところ、任期を延長させてもらいたいと思う気持ちもありました。でも、僕の人生はシリコンバレーで終わりではないですし、今が僕の人生のピークだったら嫌だなと。それよりも日本に帰り、10年後にシリコンバレーを再度訪れたときに現地の仲間と「Ken、今めちゃくちゃ良くなったね。でも10年前の右も左もわからない飛び込み営業がスタートだったよね。」と話をしたいと思った。

そして何より、世界に「お〜いお茶」を広めたいという気持ちが強くなりました。もっと言うと、商品だけではなくてお茶の文化や日本の文化・精神性も同時に広めたい。海外にいると日本愛が強くなるんですかね(笑)。でも、それは1人ではできないので、1回日本に帰り、社内の沢山の方たちと、みんなで一緒にやりたいと思ったんです。伊藤園の中には凄い方が沢山いますからね。

例えば冒頭のティーテイスターの方たち。僕はまだ3級ですが、2級が150人くらい、最高位の1級が6人います。その方々は僕なんかよりも遥かにお茶のことをよく知っていて、精神性も高い。僕はその方々から学ばなくてはいけないですし、逆に僕から世界のことを伝える必要もあると思っています。その凄い方々が少しでも世界を意識するきっかけになりたいなと。

伊藤園は日本におけるお茶のリーディングカンパニーですが、海外を意識している社員はまだ少ないのが正直なところ。でも今回の茶ッカソンのように新しいアイデアを見せていくと、「いいね!」と反応してくれる方は多いんです。そうやって反応してくれる方を増やしていきたいですね。

 

編:角野さんの行動の源泉、モチベーションに火をつけているものは何ですか?

角野さん:僕は営業として、ストーリーを作ることが好きなんだと思います。

どういうことかと言うと、今やっていることが全然うまくいかなくても「まあ、いっか」って思っているところがあります。だって周囲の人から「いいね」、「やろうやろう」とすんなり言われてしまったら普通に実現できてしまって、ストーリーとして面白くないじゃないですか。

様々な障壁があっても、社員みんなで協力して、泣きながら乗り越えた。みたいになるとストーリーができて、他の人に話せますよね。そうすればお客さんから「よくやった」、「おもしろいな~」って言われる(笑)。どうやっても実現できない困難は困りますけど、困難は歓迎しています。むしろそれがあるから楽しい。

茶ッカソンa

 

編:第3回に向けた構想を教えてください。

角野さん:偉そうな言い回しに聞こえるかもしれませんが、茶ッカソンもベースはハッカソンで、結局シリコンバレーの真似なんですよね。「何かの真似をしている時点で既に古いのかな」と少し思ってます。もちろん今の茶ッカソンの形もいいものになりつつあるので、継続していきたいと思っています。

でも僕らがシリコンバレーに勝るものを作っていきたいのであれば、違うものを生み出さなくてはいけない。「なんだこの企画は?伊藤園は何がしたいんだ?」、そう言われるくらい面白いことがしたい

今構想しているのは、例えば参加者全員で1つのものを生み出す会にしてもいいかなって。今は同一テーマを出してコンペティションで優勝チームを決めていますが、5チームあったらそれぞれに異なるテーマを与えて、各自が考えて、たまにチームメンバーをシャッフルして、色々な発想を生み出していく。最後にみんなが出したアイデアを組み合わせてプレゼンすると、地域社会を変えるような新しい1つのアウトプットが完成している、みたいな感じです。

そして、その場には伊藤園社員が沢山見に来ていたら、最高ですよね!!

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CAPPY'S EYE

当初、伊藤園が「お茶×IT」イベントに取り組んでいる背景に、いまひとつピンときていませんでした。しかし、角野さんにお話をお聞きする中で、現場のアクションによって5,000人を超える大きな組織の中に「変化の兆し」が生まれていることに、とてもワクワクしました。角野さんが巻き起こす「茶ッカソン」によって、周囲の方々のモチベーションに”着火”しているのではないでしょうか?

筆者

中島浩太

株式会社ゼロイン CAPPY編集部
2008年、ゼロインに新卒入社。総務アウトソーシングや社内イベントの企画・設計を担当。新卒採用担当を経験したのち、社内広報とマーケティング組織の立ち上げに携わる。CAPPYでは編集、インタビュー、ライティング、撮影まで担当しながら、各社の魅力的な取り組みを発信中。
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