2018/02/06

バリュー体現行動が成長の源泉!“メルカリ流”理念浸透のシカケ

今やフリマアプリの超定番となった『メルカリ』を運営する株式会社メルカリ。山田進太郎氏、富島寛氏、石塚亮氏の3名が2013年に立ち上げた会社は、わずか5年弱で社員数が約600名と急成長しています。

最近ではフリマアプリにとどまらず、即時買取サービスやシェアサイクルなど、さまざまな事業展開をしかけています。また、社内制度や福利厚生への積極的な取り組みから、“働く場”としても注目をあびています。

メルカリが掲げるミッションとバリューは、社員はもとより社外の人にまで知られるほど浸透しています。果たして、メルカリは拡大の一途をたどる中で、どのように理念への共感を生みだし、強い組織をつくっているのでしょうか。

その取り組みについて、社内コミュニケーションなどのソフト面と、オフィスづくりなどのハード面を担当されている、総務グループマネージャーの山下真智子さん、同じく総務グループの松永愛唯(あい)さんにお話を伺いました。

良い時期ばかりではない。厳しい時期にこそ、一丸となるためのバリュー

メルカリは『新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る』という普遍的なミッションを掲げています。このミッションを達成するために“社員がどのように行動すればいいか”を示しているのが、3つのバリューです。

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このバリューが生まれた背景には、小泉(取締役社長兼COO)の経験があります。事業には上り調子のときもあれば下り調子のときもありますが、前職で好調だった事業が低迷した途端に組織の一体感が薄れてしまい、苦労したことがあったそうです。

小泉はそのときの経験から「バリューがあれば、社員が一丸となって困難に立ち向かえたはず」と反省し、メルカリに参画してすぐにバリューづくりに取り組みました。

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総務グループマネージャーの山下真智子さん

創業時は、今とは異なるミッションが定められておりバリューはありませんでした。そこで小泉が入社直後に経営陣で合宿を行い、会社として大切にしたいことや、ミッションを実現するために必要な姿勢などを大量に付箋に書きだし、議論して絞り出されたのが今のバリューです。

このバリューは覚えやすさを意識してつくられています。「3つを超える言葉を覚えられない」という思いからバリューは3つしかありません。全部で7単語しか使っていませんし、単語もわかりやすいものにするなど、こだわっています。

採用段階から、ミッション・バリューへの共感を追求

こうした覚えやすさに加えて、メルカリでは採用の段階からミッション・バリューへの共感を追求しています。採用面接や人事評価では『Go Bold』『All for One』『Be Professional』というそれぞれの項目に対して評価やコメントを行うようになっています。

スキルもさることながらミッション・バリューへの共感を非常に重視しているので入社後のミスマッチも少ないです。

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総務グループの松永愛唯さん

他社の方から理念の浸透施策について聞かれることも多いのですが、実際に取り組んでいることは地道なことが多いです。たとえば、今日着ているメルカリスウェットやTシャツのようなグッズを積極的につくり、常にバリューを目にして意識できるような状態にしたり、会議室にもバリューにちなんだ名前をつけたりしています。

「本当にそれってGo Boldだっけ?」「All for Oneでいこう!」といった使い方で日常会話の中にバリューが出てくるほど浸透しているので、例えばどういった行動がGo Boldなのかも理解されやすい状態になっていると思います。

オフィスの受付にグッズを置いて、オフィスにお越しいただいたお客さまにもメルカリのミッション・バリューを知っていただくことも意識しています。

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バリューに沿った行動が尊重され、評価される

定期的に行われる評価面談では、ミッションや3つのバリューに沿った行動ができたか、細かくすり合わせを行いながらフィードバックがなされています。

バリューについて、印象に残っていることがあります。以前、直属の上司とさらにその上の小泉とで指示内容が異なり、どう行動すればいいか迷ってしまったことがありました。そこで小泉に相談したところ「バリューに沿って考えたらいい」という返事が。さらに「ふたり(上司と小泉)が言っていることより、まちるだ(山下さんの愛称)の考えの方がバリューに沿っているのであれば、それを採用する」とまで言われました。

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普通であれば役職が上の小泉に従うものだと思います。しかしメルカリでは「上司が言ったから行動する」のではなく、“バリューに沿っているか”を基準に考えられるのだと、すっと腹落ちした記憶があります。

ちなみに3ヶ月に1度、3つのバリューを体現した人を『Go Bold賞』『All for One賞』『Be Professional賞』として表彰する制度もあります。

どれかには当てはまる?多用な時代にあり過ぎるコミュニケーション施策

メルカリでは直接のコミュニケーションを大切にしているので、オフィスはワンフロアで、壁がないフラットな環境が特徴です。仙台、福岡などの東京以外のオフィスとも大きなモニターを介して常時接続しています。

常につながっているので「今からビデオ会議をします」という形式ばったものではなく、「今いい?」と隣の人に話しかけるような、距離を感じさせないコミュニケーションができる仕掛けです。

また、席から少し離れたところにみんなでコーヒーを飲めるカウンターを設置して、社員同士が話すきっかけが生まれるようにしています。コーヒーを飲みながらの軽い相談から仕事が進んだり、新しいアイデアが生まれたりするような、偶発的なコミュニケーションを大事にしています。

一方で、ただ偶発的なコミュニケーションを仕掛けるだけではなく、狙った意図を実現させるためにボトルネックを解消する取り組みもしてます。

たとえば、メルカリには新入社員がメンターと一緒に社内の人と交流を図る『メンターランチ』や、毎月全社員からランダムで選ばれたメンバーとランチをする『シャッフルランチ』など、いくつかのランチ制度があります。

ただ、ランチ制度の利用が一時期減っていたことがありました。理由を聞いてみると「立替精算が面倒だ」という答えが返ってきたんです。そこで、お店に名刺を持参し、帰社後にフォームで申請すれば社員が立て替える必要のない“ツケ払い”に対応してもらえるレストランを探して協力していただけるようにしました。

すると次は、名刺を持って行くのを忘れたり、あとからフォームで申請するのが面倒だと言う人がいたりして。では「アプリをつくってしまおう」と、QRコードを読み込むだけでその場で精算が終了するアプリを外部の方と協力してつくりました。単純に制度をつくるだけではなく、“やらない理由”のボトルネックを私たちで積極的に解消しようと意識しています。

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社内コミュニケーションの施策は一見、あり過ぎると思われるくらいありますが、それには意図があります。社員が多くなると、「子育てのため夜の飲み会には参加できないが、昼であれば参加してコミュニケーションしたい」という人や、「大人数の集まりは苦手だが、部活動など少人数の集まりには積極的に参加したい」などいろいろな人がいるので、いくつもある施策のうち、どれかにハマってもらえればいいなと思っているんです。

働けないリスクをカバーする「メルシーボックス」

またメルカリには『merci box(メルシーボックス)』という人事制度があります。この制度設計の狙いは「働けないリスクをカバーすること」です。「保育園に入園できず働けない」「介護のため出社が難しい」という“働けないリスク”について、時間や金銭面から出来る限りサポートしています。

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私は子どもがいるのですが、メルシーボックスのひとつである『認可外保育園補助』という制度を使っています。これは「認可保育園に入園できず、認可外保育園に入園する場合、差額の保育料を会社が負担する」という制度です。

認可外保育園に入れると大きなお金がかかりますし、人によっては復職しない方が金銭面ではメリットがあるかもしれません。でも私は早く働きたいと思っていましたし、会社としても新しく採用するより今いる社員に働いてもらった方がいいですよね。だから、働けないことの理由が金銭面なのであれば、会社がサポートしましょうという考えです。

うまくいっている制度ばかりを紹介していますが、やってみて駄目だった制度もたくさんあります。「やらないよりも、やって失敗」がきちんと評価されるので、新しい提案も行いやすいですよね。会社の規模や状況に応じて今後も柔軟に制度を考えていきたいと思っています。

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筆者

ミノシマタカコ

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