2016/03/07
2016年1月12日、新しい事業を早いスピードで創出し続ける株式会社サイバーエージェントと株式会社リクルートホールディングスが、共同で新規事業を創出するプロジェクト『FUSION(フュージョン)』を始動させることが公表されました。
今までありそうでなかったこの2社の組み合わせ。新規事業という秘匿性の高い分野において、共同プロジェクトにすることでどのような化学反応が生まれるのでしょうか。
”得意領域”、”企業文化”、”リソース”、それらが融合することの期待について、この『FUSION』プロジェクトを推進する株式会社シロク(サイバーエージェントグループ会社)代表取締役社長の飯塚勇太さんと、株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.室長の麻生要一さんにお聞きしました。
編集部(以下、編):この『FUSION』、新しい取り組みとして注目度の高いプロジェクトですが、まずはこのプロジェクトに関わっているお二人の経歴をお教えください。
【飯塚さん】
わたしは2012年の4月にサイバーエージェントに新卒入社しました。ただ、経歴がちょっと特殊でして、実はまだ内定者だった2011年12月にサイバーエージェントグループの株式会社シロクを立ち上げ、代表取締役に就任しています。ですので、子会社社長を務めながらの新卒入社でした。
以降、一貫してシロク代表を務めながら、2013年11月には株式会社ハシゴの代表取締役にも就任し、ずっと子会社の社長としてキャリアを歩んでいます。
そして、ちょうど半年前からサイバーエージェントの新規事業開発も担当することになりまして、現在は子会社2社の代表取締役とサイバーエージェントの新規事業開発を担当しています。
【麻生さん】
僕は2006年に分社化前の株式会社リクルートに新卒入社しました。入社直後は広告営業でしたが、2年目の終わりに社内の新規事業提案制度『NewRING』で入賞後、Media Technology Lab.という新規事業開発部門で自分のプロジェクトを推進し、2010年11月にスピンアウト。株式会社ニジボックスという100%子会社を設立しました。
設立当時は執行役員としての参画でしたが、2013年4月に代表取締役社長 兼 CEOに就任して今日現在も経営者をやっています。その後、2014年4月、リクルートホールディングスに兼任で呼び戻され、会社の成長戦略を考えるR&D本部で戦略統括室という全体戦略を策定する部門を担当、現在の業務にもつながる新規事業創出戦略をまとめていました。
編:お二人とも経営者としてキャリアを歩まれているんですね。さて、今回の『FUSION』、どのようにプロジェクトが立ち上がったのですか。
【麻生さん】
きっかけは僕が2015年4月にMedia Technology Lab.の責任者になり、リクルート全体の新規事業創出を実行するようになった中で、「リクルート“以外”の人たちとも一緒に新規事業開発をやっていきたい」と戦略を立てたことですね。
さまざまな組先は想定されましたが、新規事業といえばサイバーエージェントさんだろうと。サイバーエージェントの藤井琢倫さん(現、株式会社 AbemaTV)が2006年新卒入社組の同世代で親しかったことがあり、「サイバーエージェントさんの新規事業担当者を紹介してくれないか」と言って紹介してもらったのが飯塚くんでした。
最初に話したのは、たぶん夏くらいですかね?
【飯塚さん】
そうですよね、夏くらいにまずはリクルートさんの新規事業の方々とサイバーエージェントの新規事業の面々で、一回交流会しましょうみたいな感じが最初でしたね。
【麻生さん】
いきなりコンテストや共同プロジェクトと言っても現実味がわかなかったので、この二社にシナジーがありそうなのか、なさそうなのかをまず集めて交流してみようという話になってmeet upを実施しました。
当日は20対20くらいの会だったのですが、非常に盛りあがりまして。「これは何かが起きる」と予感がして、その後真剣に考えてできたのが『FUSION』です。
【飯塚さん】
もともと合うとは思っていましたけど、その期待値を上回る相性でしたね。
編:麻生さんはなぜ「他社と一緒に新規事業をやりたい」と考えられたのですか。
【麻生さん】
世界の変化のスピードって加速していますよね。イノベーションを起こすにも、かつては3年研究開発して、3年商品開発してローンチして、そこからテレビCM…みたいな時間軸だったと思います。
ただ、今月思いついたことは来月やらないといけないという時間軸の時代になってきた中で、一社で何かをゼロから生みだして世の中を変えていくっていうのは、もはや限界があるだろうなと肌感で感じています。
リクルートも得意領域はあるんですけどリクルートだけでは実現できない部分もあるので。得意領域を明確にしたうえで、持っていないところを持っている人たちと一緒にやっていった方が、スピードが上がるんじゃないかと考えました。
【飯塚さん】
サイバーエージェントも、大型のM&Aを行わず自分たちの力で新しいビジネスを創出することが強みであり文化なのですが、一方で、新しいことをどんどん取り入れるという意味では、自社だけでやることの限界を新規事業担当として感じていた部分がありました。
そういう意味だとリクルートさんはサイバーエージェントと違った事業領域や強みをたくさんお持ちなので、一緒に何か取り組むうえでは最適だと思っています。
編:先程、飯塚さんから「もともと合いそう」というお話がありましたが、実際に夏のmeet upで会ってみて、印象の変化はありましたか。
【飯塚さん】
想像していたより優しい感じの方が多いと思いました(笑)。リクルートさんは事業を立ち上げるときにいきなりフルスロットルで立ち上げていかれる会社というイメージでした。
なので激しい議論が交わされていそうですし、個が強い方が多いのかなって勝手に思っていたのですが、実際には、物腰の柔らかい方ばかりで(笑)、ちょっと言い方が変ですけど、いい意味ですよ!
【麻生さん】
僕はまったく印象は変わらなかったですね。実は就活のときにサイバーエージェントさんを受けていたりするんですが、そのぐらい好きな会社なので全然印象は変わらなかったですね。
編:プロジェクトを具体化する中で、どのような期待を持ちながら設計していきましたか。
【飯塚さん】
まずは「一社では生み出せない事業を生み出す」という新規事業への期待が当然あります。
あとはサイバーエージェントって、社内の結束力が強い一方で、社外の人とはあまり交流を持たないイメージを他社の方から言われたりするのですが、今回は混合チームでやっていくので、新しい刺激を受けて、日常業務にもいい影響が出ればと思っています。
【麻生さん】
社内に広報したときは予想以上に反応が大きく驚きました。本当は参加希望者全員を呼びたかったのですが、あまりに多くて選考せざるを得ないくらい。
編:それは凄いですね。従業員の方々も『FUSION』への期待が大きいんですね。
【麻生さん】
絶妙な二社だったんだろうなと思っています。おそらく、会社のカルチャーが似ているんですよ。人とか風土みたいなところが似ているからフィット感がありそうなことを、お互いの従業員もわかっていたと思うんですよね。
カルチャーが似ていて、得意領域も似ているんだけど、軸足がちょっと違うっていう。リクルートが情報だったりライフスタイル寄りで、サイバーエージェントさんがややエンタメ寄り。被っているところもたくさんありますが、その軸足の微妙なズレが、いい期待感につながっていると思いますね。
【飯塚さん】
社長の藤田も、「今まで一緒にやってこなかったのが不思議なくらいだ」という話をしていました。確かに、今回が始めてですよね。
代表同士も、現場も、交流は多いですし。それに麻生さんのように、就活のときにサイバーエージェントとリクルートさん、両方の選考を受けた従業員は多くて、共通の友人が凄く多い。
編:個人の価値観でも根っこの部分が似ていて、親和性が高いんでしょうね。お二人は、新規事業が会社にとってどのような意味を持つと考えていますか。
【飯塚さん】
わたしはサイバーエージェントはずっと新規事業で成長してきた会社だと認識しています。創業時はインターネットに特化した広告代理事業から始まって、メディア、ゲーム、エンタメや動画など、新しいことをやり続けることで今があります。
今まで以上の成長をするためには、新しいことをやる以外ないと思いますし、そもそも新しいことに挑戦することは、サイバーエージェントの遺伝子レベルで刻まれている、普通のことなんだと思っています。
【麻生さん】
リクルートもやっぱり同じで、就職情報誌から始まって、新規事業をボトムアップでやることで成長してきました。リクルートってずっと目の前のカスタマー、顧客を幸せにしたいという想いでサービスを創っているんです。
サイバーエージェントさんと同じくDNAとして刻まれているので、新規事業をやることに理由がないというか、やらなくなることはないですね。
編:新規事業を生みだす土壌があるということですが、社内ではどのような観点で向き合っているのでしょうか。
【飯塚さん】
サイバーエージェントは、どのような事業でも市場に一番にマーケットインする、ということに並々ならぬプライドをかけています。藤田は「最速か最高かのどちらかでないと事業は成功しない」ということを至るところで言っています。
特に経験がない若い人だと、正直、最速でやる以外に勝つ方法はないんですよね。だから会社全体で速さの壁になるものを排除する考えが強くて、人事や法務、経営管理部門も事業の現場のスピードを止めないことを非常に意識しているなと、一緒に仕事をしていて感じています。
実際、わたしも内定時代、11月頭に藤田から子会社立ち上げの話がきて、12月1日には会社が設立できていましたので(笑)。当社の経営管理部門のスピードは凄いなと、いつも思っています。
【麻生さん】
リクルートは、「社会課題の解決」ですね。そこがサイバーエージェントさんとちょっと軸足が違うなって思いました。
最速、最高という観点はありますが、一番重要なのは、そのサービスを投入しようとしているターゲット顧客に対して「本当に本質的な課題解決ができているのか」をもの凄く問われますね。「それは社会を良くするのか?」と。
こういう二社の微妙な違いがいい感じなんですよね。ここが融合するといいんでしょうね。
編:これから多くの方が『FUSION』に参加されると思いますが、この場をどのように使ってほしいと考えていますか。参加者に対する期待をあらためて教えてください。
【麻生さん】
僕はこの場所はかなりのチャンスだと思っています。これだけの期待感の中で、最終審査には藤田さんにもお越しいただくことになっていて。
最終審査の場で「本当におもしろいね」となったら、ほかの場所で新規事業をつくるのとは、ちょっと次元の異なる成長やキャリアにつながると思います。だから、ぜひ食らいついて、自分の社会人人生のキャリアにつながるように使ってほしいなと思います。
【飯塚さん】
サイバーエージェント社内でも凄い反響だったので、中途半端な成果ではなくて、大きな成果を狙ってほしいです。
せっかくリクルートさんと組んだのに、サイバーエージェントの中でもやれる規模の事業や内容だったら、正直一緒にやる意味はないですよね。この二社だからこそ生まれる事業モデルや目線、そこを意識して臨んでもらえるといいなと思います。
【麻生さん】
何が起きるかわからないことがいいですよね。わからないことが期待値になって、今まで新規事業に反応しなかった人が参加していたりすると思うんですね。
思いもよらない人が、思いもよらない提案で、思いもしない投資を得るかもしれない。そうしたら大成功ですよ。よくこの二人から出てきたな、とか、よくこんな提案思いついたね、みたいな。こういうのってスター軍団を集めたからって必ずしもいい提案になるとは限りませんから。
【飯塚さん】
あとは、わたし自身が事業によって人間的に成長させてもらった感覚が強くて。今回の参加者は誰かしらが事業をやることになると思いますが、その人たちは成長や経験という実入りがとても大きいので、ぜひそれを目指して頑張ってほしいなって思います。大きなチャンスなので、食らいついてほしい。
【麻生さん】
すべての新規事業は、その人が「やりたい」「解決したい」「世界をこうしたい」っていう凄く強い想いから始まっているんですよね。今後、混成チームを編成していく中で、これまでになかった”WILL”が形成されていけばと思います。ぜひ想いのある事業を提案してほしいですね!
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この記事の著者
中島 浩太