2024/07/02

働く人の武器になって欲しい!非連続な成長を目指すfreee社の「ブランドコア」の取り組みに迫る

働く人の武器になって欲しい!非連続な成長を目指すfreee社の「ブランドコア」の取り組みに迫る

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、統合型経営プラットフォームを開発・提供することで「だれもが自由に自然体で経営できる環境づくり」を目指すフリー株式会社(以下、freee)。2019年に上場し、2021年にはさらなる成長を目指しリブランディングを遂行しました。その際に制定したのが、freeeのあらゆる顧客接点におけるブランド体験を整理したブランドコアです。

Brand Team(以下、ブランドチーム)でHumor Directorを担う長野弘樹さんはこの新しい概念について、「社員のみなさんが仕事をする上での武器になって欲しい」と語ります。freeeのブランディングをミッションとするブランドチームでインターナル領域を担う長野さんに、ブランドコアと社員の接続に向けた取り組みの裏側についてお伺いしてきました。

<長野弘樹さんプロフィール>
愛媛県今治市出身。2021年4月、新卒入社。アドバイザー事業部 (現パートナー事業部)に配属後、2023年6月までの2年間は、おもに税理士、会計士の方をサポートする事業部で、セールスやカスタマーサクセスを経験。 その後、2023年7月よりブランドチームに異動して活躍中。自身も学生時代にボードゲームの会社を経営した経験を持つ。freee自らがスモールビジネスを経営すると言う理念の下、東京都台東区・蔵前にある書店「透明書店」の運営も担う。

“freeeらしさ”を社内外に発信し、整え、コントロールするブランドチームのミッションとは

編集部(以下、編):本日はよろしくお願いします。インタビューの前にオフィスを長野さんにご案内いただきました。バックオフィスの歴史(会計と道具の歴史)を振り返る展示や、キッチンスペース付きの会議室、freeeのノベルティが販売されているショップなど、オフィス内におもしろい仕掛けをたくさん見ることができました。

会計ソフトを扱っていると聞くと、どうしても堅いイメージの先入観を持ちますが、それとは真逆の、随所に遊び心が散りばめられた空間づくりで一気にイメージが変わりました。

ありがとうございます。まさにこだわっているところなので嬉しいです。2022年8月に東京本社オフィスを五反田から大崎に移し、約2倍の床面積へと拡大移転を行いました。コロナ禍でも従業員数は約2倍、顧客数も約2倍と急成長しており、会議室不足など環境整備の必要性だけでなく、コミュニケーション機会の減少といった課題も、こだわりの背景にはありました。

Brand Team Humor Director 長野弘樹さんBrand Team Humor Director 長野弘樹さん

新オフィスの設計では、社内SNSに寄せられた200件近くのアイデアも取り入れながら、「楽しさの多様性と働きやすさ」を追求しています。このあとご説明するブランドコアである、「解放」「自然体」「ちょっとした楽しさ」をお客様に提供するべく、社員自身も「ちょっとした楽しさ」を体感できるオフィスになればと思っています。

バックオフィスの歴史(会計と道具の歴史)を振り返る展示エリアバックオフィスの歴史(会計と道具の歴史)を振り返る展示エリア

編:ご案内ありがとうございました。早速本題に入ってまいります。まずは長野さんの所属するブランドチームの体制と仕事内容、具体的なミッションを教えてください。

ブランドチームは、社員が全体で7名ですが、2名が育休中のため、現在は5名体制です。デザイン周りは業務委託のデザイナーさんのお力も借りながら推進しています。

ブランドチームのミッションは、社内(インターナル領域)と社外(アウター領域)に向けた、“freeeらしさ”の発信や浸透が主なテーマです。

インターナル領域では、freeeにおけるブランドのトンマナを整え、デザインのフィロソフィーやアセットを整理して、社内の人たちに共有していきます。

たとえば、社内にさまざまな事業部がある中で、「この表現はfreee的に問題ないか」といったブランド観点でのチェックも大きな役割の一つです。マーケティング施策や営業資料、ウェブページなどに関して、私たちから素材を提供してガイドラインを整備した上で、各事業から上がってきたアウトプットをチェックします。社外に発信する“freeeらしさ”を整える、大切な業務です。

その他には、公式キャラクター「Sweee(スイー)」やオリジナルグッズを制作しています。らしさを保ちつつ、表現の幅を増やす素材や武器を生み出していく仕事とも言えます。冒頭で触れたオフィス設計に関しても、部署を横断したプロジェクトを組み、「freeeらしいオフィスって?」というところを考えながら設計しました。

2024年4月に誕生したfreee公式キャラクター『Sweee(スイー)』2024年4月に誕生したfreee公式キャラクター『Sweee(スイー)』

2021年のリブランディング時に策定したブランドコアも、ブランドチームで担当しています。

ブランドコアは、freeeとfreeeのステークホルダーとのあらゆる接点においてコミュニケーションの核となるものです。このブランドコアを、freee社員の個性を重んじながら社内に浸透させていくミッションを、ブランドチームの中でも私が中心に担当しています。

具体的には、新卒や中途入社者向けのオンボーディングや、「ブランドコアを考えるきっかけ作り」のワークショップを開催することで、ブランドコアの落とし込みを行います。ほかにも、ブランドコアをすでに体現している社員をピックアップした社内報や、ブランドコア図鑑を用いた事例紹介もミッションの一つですね。

freeeのミッションである「スモールビジネスを世界の主役に。」を文字通り体現するべく、自らスモールビジネスに着手した『透明書店』という本屋の運営も行っています。ちょうど1年前、東京都台東区の蔵前にオープンさせたのですが、「透明」の名の通り透明性を持った経営を大事にしており、実際の体験や試行錯誤の様子、収支までSNSやnoteで赤裸々に発信しています。

東京都台東区の蔵前にfreeeがオープンした『透明書店』東京都台東区の蔵前にfreeeがオープンした『透明書店』

編:多岐に渡る業務範囲ですね。そもそもブランドチームという組織は社内でいつごろ立ち上がり、これまでにどのような変遷があったのでしょうか。

約6年前にブランドチームは発足しました。代表の佐々木がブランドに強い想い入れを持っており、「本当に強いブランドは外注して作るものではない。中の人間が主体的に考え、生み出していくべきだ」という考えの下、CEO直下組織に位置していました。

その後、2021年6月のリブランディングから1年を経て、新たなブランドやブランドコアが固まってきたところで、「ブランドをもとにビジネスインパクトに繋げていこう」と、CEO直下から事業部管轄へ移転しました。

そこでは、ブランドのビジネスインパクトを数値で測るため、展示会やイベントでの数字効果を指標として設定しています。2023年からの1年ほどの期間は、ビジネスを後押しする形でブランドチームは動いてきました。

そして2024年4月からは、コーポレート組織へと位置付けが再度変わりました。ビジネスインパクトへの貢献をある程度証明でき、管轄する組織が変わったとしてもパフォーマンスを継続できる確信が持てたので、今度は社内に向けたインナーブランディングの取り組みと連携を高めていくフェーズに移ったという理解です。

特に、社内イベントなどを通じてカルチャーを守り進化させるミッションを担うカルチャーデベロップメントという部署があるので、この部署との協働をより一層図っていくことが必要です。ブランドチームとカルチャーデベロップメントがタッグを組むことで、社内施策にカルチャーとブランドの観点を織り交ぜられ、社員への浸透を加速させられるのでは、と期待しています。

freeeが成長していくために。「ブランドコア」を武器にしていって欲しい

編:2021年6月に行われたリブランディングについてお伺いしたいのですが、リブランディングに取り組んだそもそもの背景や取り組みの全体像を教えていただけますでしょうか。

ミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」をさらに前進させていこう、という事業戦略をもとにリブランディングに取り組み、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム。」という新ビジョンを策定しています。

同時に、事業の幅を広げやすくするために、商品名含めブランドイメージを統一しています。以前まではプロダクトごとに色が異なっていたのですが、ブランドカラーを青色に統一しています。また、プロダクトのネーミングも、「freee」というプラットフォームの一つのサービスであることを体現するために、「会計フリー」「人事労務フリー」といった名称からすべて「freee会計」「freee人事労務」「freee販売」と、freeeを冠に据えています。

フリーの統合型クラウドERP

ビジョンを策定する中では、あらためて「freeeがお客様に伝えたい感情ってなんだろう?」「顧客に感じてもらいたいfreeeらしさとは何だろう?」を追求し、社内で認識統一をしていく必要がありました。

それまでは人数規模も400〜500人ほどで、先輩の所作を見てfreeeらしさを学ぶことができましたし、経営陣や創業メンバーとの距離が近かったこともあり、口伝でらしさを理解することができました。ただ、会社や事業規模の拡大を見越したとき、 「freeeらしさの考え方の統一が急務だよね」という話になり、リブランディングの中で「freeeらしさ」についてもしっかりと議論していこうとなりました。

編:ミッションの実現に向けたfreeeらしいブランド体験として言語化されたブランドコアについて、詳しくお伺いさせてください。

リブランディングを考えた時に、ただロゴや名称を変えるだけでなく、社内にも「変わっていくぞ」という意思表示、認識統一を促進することも大事です。その意味合いで、ブランドコアの策定に話が進んでいきます。

ユーザーへの本質的な価値の提供に向けて、freeeでよく使われる言葉に『マジ価値』という言葉があります。「マジ価値=本質的な価値とは」の議論は、昔からよく社内で行われてきたテーマです。ただ、この言葉自体は抽象的で、一人ひとりの基準や価値観に依存したものでした。

そこでこの機会に、マジ価値を提供されたユーザーが「どのような感情になるのか」「そこにある体験とは」「その要素とは」を分解することを目指しました。

各々の価値観で認識していた部分をブランドコアとして確立させることで、顧客への価値提供の基準を整理し、社内での認識の統一を図ることを目的に走り出したのです。

編:かなり重要かつ大きなプロジェクトだと思うのですが、誰を巻き込んで取り組まれたのですか。

CEOをはじめ、当時ブランドチームに所属しており、企業ブランディングに精通したメンバーが2~3名と、役員クラスとでコミュニケーションを取りながら進めていきました。策定後のプロセスに関しては、各事業部のセンター長(事業本部長)向けにブランドコアの必要性を解いて浸透のきっかけづくりを行い、その後、雇用形態に関係なく全社向けにも発信していく、そうしたプロセスをとっていきました。

編:策定に関しては、社内全体の声を拾い上げ反映させながら作っていったというよりは、あえて経営陣やブランドメンバーで作ったものを全体に浸透させていった、という流れですね。

フリーのブランドコア

ブランド体験には「解放」「自然体」「ちょっとした楽しさ」の3つを掲げていますが、社内でも業務内容はもちろん、ユーザー規模、役割、内容、目指すゴールなどが異なっている中で、この3つだけでは統制が成り立たないと考えていて、ここにあえて余白を持たせています。

社内全体の意見をかき集めて固めてしまうよりも、「解放」「自然体」「ちょっとした楽しさ」、この3つを背骨にしながら、各事業部に応じたブランドコアを作ったり、フィットする形に変化させたりしながら我がごとにしていって欲しいという思いも込め、あえて柔軟に対応できるようにしています。

編:あえて少人数の意思決定者でシャープに基準を作る。その上で余白を残しながら実際の事業部に浸透を促していく。このプロセスがfreeeさんの状況にフィットしていたのだなと、興味深く聞かせていただきました。

ただ、freeeのメンバーが働く中で大事にしている価値基準というものが別にあって、これはみんなで決めました。これは価値基準委員会というものを発足して会社全体で作られた言葉として、社内の行動指針のような役割を持ちます。会社の成長とともに作っては壊してを繰り返し、今の形になりました。

フリーのマジ価値

編:ブランドコアの浸透を通じて、社内にどのような変化を期待しますか。

現在、社員の70%以上が入社して2年に満たない人で構成されています。社歴の短いメンバーが多い中で、それでもfreeeらしさを早く体現して活躍して欲しいですよね。そんな時に先輩を見て真似するのももちろん良いのですが、freeeらしさを発揮するための指針としてブランドコアが武器になってもらえれば良いなと思います。

もう一つは、私のエゴになってしまうかもしれないのですが、ブランドコアがあるから「働くことが楽しいな」と感じてもらいたいです。個人的には、ここに強い思いがあります。

freeeが大切にする「ユーザーに自由を届けていく」という考えを好きになり、愛着が湧く。そうすることで自社へのエンゲージメントが上がっていく。こんな循環が生まれたら嬉しい限りです。

もちろん、ブランドコアの主語はユーザーですが、私たち自身が自由を感じていないとユーザーに自由の提供はできないと考えます。歯を食いしばってがんばることも時には大事です。ただ、そうした状況に違和感を抱き、自由を感じていなければ意味がないと思っています。

ブランドコアというものが、楽しさや思いやり、遊び心を考えるきっかけになって欲しいですよね。また余白がある部分にも押し付けではなく、社員がその余白を使って、自分で自由に考えて欲しいという思いを持っています。

セールスやカスタマーサクセス、バックオフィスなど、多様なバックグラウンドで仕事をしてきたメンバーが集まっていますが、「freeeで仕事をすると楽しいな」「自由を感じながら仕事ができているな」「それってブランドコアがあるからだな」、そう感じてもらえたら、こんなに嬉しいことはないですね。

ブランドコアを社員が理解し体現する、きっかけづくりの施策とは

編:ブランドコアを社員のみなさまに理解してもらい、体現するために長野さんが取り組まれている施策をお教えいただけますでしょうか。

まずは「ブランドコア図鑑」が挙げられます。Googleスライドで制作しているのですが、ブランドコアを具現化している事例を社内からピックアップし、真似できるポイントを抽出したものを掲載しています。ブランドコアを落とし込んだポイントを当事者に提示してもらい、その人自身も称賛することで社内浸透の促進につなげています。各部署でさまざま取り組んでいることを、ブランドコアという軸で捉え直し、紐解き紹介しています。

フリーのインナーブランディング施策「ブランドコア図鑑」

取り上げる事例や人は、社内SNSでの投稿や周りの人からの声をヒントに見つけることが多々あります。これは弊社の価値指針の中にある「あえて共有」という文化が推進力になってくれていますね。社内での良いエピソードを積極的に共有し合う文化が、ブランドコア図鑑づくりを助けてくれています。

編:読み応えありそうですね。他に取り組まれていることはありますか。

こちらもGoogleスライドで毎月制作しているのですが、「ブランドコア社内報」です。登場人物は社内外問わずで、ユーザーさん、社内のエンジニア、カスタマーサクセスなど、年次や性別を問わず、ブランドコアを体現している「人」にフォーカスしてインタビューしています。毎月発信で、最近は出社も多くなってきたので社内の見えるところに印刷して掲示しています。

フリーのインナーブランディング施策「ブランドコア社内報」

初回の記事は「ブランドコアってなんだ?」を説明するコンテンツで、「解放ってなんだ?」のようなブランドコアの一つを取り上げる企画や、体現している人や出来事にフォーカスする回もあります。

記事にする時に特に意識していることは、その人が大事にしているスタンスや思いに注目することです。情緒的な側面を掘り下げ、エモーショナルなストーリーになることを大切にしています。

業務をメインに「コト」軸で学びのヒントとなるブランドコア図鑑と、「人」に寄ったテーマで共感を呼び、感情の動きに働きかけるブランドコア社内報、この両面でバランスを取りながら使い分けをしています。

編:2つの施策が補完し合う関係が良いですね。デザインにもfreeeらしさが溢れていて素敵です。これらはブランドコアと従業員との接続がテーマと考えますが、施策をする手前の段階として、どのような課題設定のもとで施策を推進していったのですか。

ブランドに関するアンケートを社内で実施しているので、その結果に基づいて施策を設計しています。

たとえば、「ブランドコアを知っているか?」という質問に関しては、「聞いたことがない」という人は約10%程度なので、認知は取れている。ただ、「ブランドコアとは何か?」という問いに対して「自由を体験するための指針」という一言がわからない人が多かった。そこで、ブランドコアの理解度と体現度のアップを目的に施策を整理していきました。

ブランド図鑑は事例をたくさん用意することで、言葉や概念を表面的に理解するだけでなく、身近な人が実施している「コト」を通じて理解してもらうものです。また、取り上げられ、注目されることで刺激を受けて欲しいとも考えています。最終的には、「自分も体現してみよう」という行動変容まで生まれることを狙っています。

まずはブランド図鑑を作り、「人」を通じてエモーショナルな部分も見せていく方が体現度は上がるのではないかという仮説から、図鑑を補填する意味もあり社内報の企画に至りました。

編:お客様に対してブランドコアをどれくらい体現できているのか、その成果や影響を感じられる機会はあるのでしょうか。

freeeのプロダクトを一定数導入いただいているロイヤルユーザーのことを、社内では「Blue Wing」と呼称させていただいているのですが、一度ファンミーティングのような形式で「Blue Wing」の方々に弊社オフィスにお集まりいただき、交流イベントを開催しました。

来社したユーザーさんは、オフィスのコンセプトや空間はもちろんのこと、イベントを開催した意義にも共感してくださり、最終的には「バックオフィスがもっと面白くなればいいね」という言葉を残してくださいました。

まさにfreeeが大切にする「ちょっとした楽しさ」を感じてもらえた場になったと感じます。ちなみに、この内容も社内報で取り上げることができました。

編:freeeさんのサービスは会計管理や人事労務の領域が主であり、どうしてもMUST業務が多く、ミスがあってはならない仕事の領域ですよね。だからこそ「ちょっと楽しくする」という思考を取り入れるのが素敵だなと思います。

私も「ちょっと楽しくする」に非常に共感していて、どの規模になってもこの思考を楽しく意味づけられたら良いなと思っています。

たとえば、個人事業主や小さな法人の方ならば、絶対に対応しなければならないバックオフィス業務や申告のための経理業務ではなく、「経営のためのバックオフィス業務・経理業務」と捉えて欲しいですね。せっかく自分が意思を持ちハンドルを握って作った会社や事業を楽しんでやって欲しいですし、freeeはその後押しができるプロダクトだと思っています。

大企業であれば、各セクションに専任の方がいる中で、バックオフィスは縁の下の力持ちと思われがちです。しかし、バックオフィスの方々が花形に見え、バックオフィスで働きたいと思われる存在にしていく、その一助になれれば良いなと思います。

非連続な成長を目指すfreee社で、ブランド浸透を推進する葛藤と挑戦

編:freeeのプロダクトを使う中で「ちょっとした楽しさ」「自由」「解放」が醸し出された体験をユーザーが体感できる。これこそがブランドコアが体現されている状態ですよね。今後の浸透に向けて、現時点での長野さんの葛藤や手応えがあれば教えてください。

freeeも会社として大きくなるにつれて、組織としての縦割り意識は少しずつ強くなってきているという感覚があります。各事業単位で200〜300人とそれなりの規模になっていますし、新しいメンバーも多くなり、どうしても社内で声が通りづらくなってきていると感じます。そうした状況に対して、私としてはインセンティブや評価基準なしで、社員が楽しくなるような仕掛けを作っていきたいですね。

リブランディングをしてから2年が経ち、ブランドコアについてのサーベイを最近取りましたが、社員が2,000名程度いる中で、認知している人が90%、理解している人は50%、体現できている人は25%という結果になりました。まだまだ伸び代はあるように感じられますが、一方でこれ以上数値を上げることが果たして可能なのか、という葛藤もあります。

特に、ユーザー接点を持たない職種ではどうしてもブランドコアの浸透率は低く、施策に取り組んで数値を上げたとしても、ユーザーに本質的な価値が届くまでに時間がかかったり、届いたかどうかが認識しづらいと考えています。

ブランドに関わる施策も、現場にフィットしなければ意味がありません。事業課題を抱え、高い売上目標が掲げられている中で、「Q毎の目標にブランド浸透も組み込んでください」はブランドチームのエゴでしかありません。だからこそ事業課題と紐付け、課題を前に進めるためにブランドコアが武器になる、そんなシーンを増やしていきたいんです。

編:事業側もブランドの浸透が事業成長につながることを本気で信頼できるのか。ここは重要なテーマですね。

経営的な側面で言うと、2025年6月期の黒字化を目指しているので、ブランドコアの浸透に潤沢な予算をかけることは難しい実情もあります。ただ、余白が無くなりそうになる中で、いかに目の前の仕事を楽しみ、楽しさを取り入れられるかを伝え続け、取り組み続けるのが私の使命なのかなと思います。

昨年、ブランドコアを考えるワークショップを各事業と実施しました。こうした機会をどんどん増やして、ブランドコアの大切さを広げていく仲間を現場にもどんどん増やしていきたいです。ゲリラ的なイベントも勝手に仕掛けたいと密かに企んでいます。

編:たくさんのお話本当にありがとうございました。毎日の中にちょっとした楽しさや喜びを感じさせる、そうしたfreeeらしさを常に考え続ける姿勢をこれからも引き続き貫いていってください!応援しています。

この記事の著者

増田 祐己

元CAPPY編集長(三代目)
業界・企業規模を問わず、インターナルブランディングやインターナルコミュニケーションのプロジェクトを多数プロデュース。経営と現場、2つの視点を持つことを大事にしており、双方のつながりを生みだす共感の接点づくりが得意。
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