2019/03/28

たった1人の使命感が会社を変える!全社を巻き込む幾多のプロジェクトを生んだ信念

『〝なりたい〟に本気』をビジョンに掲げている株式会社ビーボ。美容健康商材を扱うD2C事業をはじめ、メディア事業を展開しており、今期立ち上げ予定の新規サービス2つを含めるすべての事業において、顧客の目的を達成させる“カスタマーサクセス”を追求しています。

同社は2010年に設立し、17年に海外進出を果たすなど順調に事業を拡大する一方で、内定者が次々と辞退したり、退職率が50%に達したりする時期があったそうです。

たった1人で人事部を立ち上げた鈴木千帆さんと、ビジョン策定に取り組まれた橋口和奈さんに、幾多の組織課題に立ち向かう苦悩や信念、現在に至るまでの打ち手を伺いました。

編集部:鈴木さんは、入社後すぐに人事部を立ち上げられたと伺いました。その背景をぜひ教えてください。

鈴木さん:私が入社したのは2016年4月ですが、弊社には内定者インターンの制度があり、例にならって私も入社の半年以上前から内定者インターン生として勤務していたんです。その時は私も含めて5名のインターン生がいたのですが、2か月ほど経つとみんな辞めてしまい、私1人になっていました。その後も採用活動を継続していたのですが、最終的に同期の16卒で内定が出た13名のうち、入社したのは3名でした。

というのも、当時はまだ社員数30名ほどで人事部もなく、採用はほとんど代表の武川が進めている状況でした。そのためインターン生は即現場に配属され、すぐに業務を覚えて“とにかくやる”というスタイルでした。自分がいいと思って決めた会社ですし、私はここで頑張ろうという気持ちでしたが、ついていけないと感じる人もいました。また、「社長の考えには共感したけど、現場には共感できるものがない…」と言って辞めた人もいます。

学生の甘えもあったかもしれませんが、内定者の受け入れ体制や育成のフローがもっとしっかりしていたら結果は違ったような気がして、とても残念でした。

それを採用の時に関わっていた役員に話す機会があり、「学生の辛さと、会社の状況や至らなさ、両方分かっているのは鈴木だけじゃない?」と言われて、ちょっと大げさですが、私が変えなきゃ!と使命感のようなものを感じたんです。それが入社式の前日で、入社式の後に武川と1対1で面談した際、「人事部を立ち上げたい」と直談判しました。それが社内初の人事部HR Div.の始まりです。

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鈴木千帆さん

編:新卒入社1日目で人事部を立ち上げ…すごい行動力と覚悟ですね。まずはどのようなことからはじめられたのでしょうか。

鈴木さん:まずは最も課題に感じていた、内定者の受け入れと育成に着手しました。会社のことや仕事の手順を事前に説明するだけでも内定者は安心します。

特に当時の17卒は、遠方に住んでいて月に数日しかインターンに来れない子や、入社直前に引っ越してきて、入社の直前からインターンに参加する子など、内定者によって状況が異なっていました。相手の表情の変化なども見逃さないように、一人ひとりと向き合う時間を作り、とにかく“個別に対応する”ことを心掛けましたね。

くわえて、内定者には社内イベントを企画してもらいました。内定者が運営側に回ることで会社に対する当事者意識をもってもらうことが狙いです。毎月実施していましたが、内定者が受け身にならず、自ら積極的に社員とコミュニケーションを取っていて、入社後の関係性づくりに繋がったと思います。

社内運動会の様子

内定者が企画した社内運動会は大盛り上がり

編:内定者に企てる側になってもらう。素敵なシカケですね。駆け抜けた1年目、思い返して感じることはありますか。

鈴木さん:「みんなの成長にはどうしたら起因できるのか」それだけを思って突っ走った1年でした。正直、常に何が正解かもわからないままで、翌年の2017年4月1日を迎えたときも「自分に何ができたのだろう」「これでよかったのか」という気持ちでいっぱいでした。

橋口さん:でも、この年に入社した17卒社員の、鈴木に対する信頼はすごく強くて、鈴木の気持ちは間違いなく伝わっていると思います。

橋口和奈さん

橋口和奈さん

鈴木さん:そう言ってもらえると嬉しいです。

編:たった1人でやり遂げるには、相当なエネルギーが必要だと思います。鈴木さんご自身のモチベーションはどこにあったのでしょうか。

鈴木さん:私が1人でやっていたとは全く思っていません。特に内定者の受け入れは現場の方の協力があってこそ成り立ちました。皆さんとても協力的で、本当に助けられました。

ゲームで盛り上がる忘年会の様子

ゲームで盛り上がる忘年会の様子

一方で、「目の前で10人の同期が辞めていく」という状況を目の当たりにした原体験が、自分を突き動かしていたと思います。正直、私も内定者時代は会社に不安を抱くこともありましたから(笑)、もうそんな子は増やしたくないな、と。昔から目の前の課題解決にあたることそのものがモチベーションにつながるタイプなんです。

編:新卒内定者の受け入れを進める一方で、中途採用も積極的に行い、社員数の増加に合わせて新たなビジョン策定にも取り組まれたそうですね。

橋口さん:30人前後だった社員数が一気に50~60人に増加したことで一体感が薄れ、創業時からいる社員と新しく入った社員の間で意識の差が生まれ始めていました。みんなで同じ方向を向いて仕事ができていない、バラバラな状態だったと思います。

それは代表も課題に感じていて、2016年の夏ごろに全社横断プロジェクト『未来プロジェクト』を立ち上げました。各部署から1名、1年目の社員から管理職まで6人のメンバーで4~5か月かけて現在のミッション、ビジョン、クレドを作ったんです。

ミッション『Blue Bee One』

ミッション『Blue Bee One』

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ビジョン『〝なりたい〟に本気』

編:新しく策定したビジョン、ミッション、クレドはどのように広報されたのですか。

橋口さん:2017年1月4日、年初めの総会で発表しました。年始ということで会場にはお酒も用意されていましたし、寝ている人もいて。その場では社員の共感を全く得ることができませんでしたね。

編:その後未来プロジェクトはどのような活動をされたのですか。

橋口さん:もう本当に色んなことをしました。まずは知ってもらいたい、覚えてもらいたい一心で「ミッションとは!ビジョンとは!」をことあるごとに繰り返し、15個あるクレドのテストやクレド表彰も実施しました。各部署に時間を取ってもらって『プロジェクトメンバーへの質問タイム』というのも設けましたが、質問は全く出ず「時間の無駄だ」と、現場からブーイングをもらう場面もありました。

クレドカード

クレドカード

そんなとき、内定者の子から「目的が分からなくなっていませんか?これじゃあビジョンがなかったときと同じじゃないですか…」と言われたんです。衝撃的でしたし、我に返った瞬間でした。

鈴木さん:そもそも、新しいビジョンを発表した時点で、なぜビジョンが必要なのかが理解されていなかったんです。役員や未来プロジェクトのメンバーは、今の組織コンディションに対し危機感をもっていましたが、特に業務に大きな支障をきたしている訳ではなかったですし、売上も落ちていなかったので、現場ではビジョン策定の背景が理解しきれなかったんだと思います。

そんな状態にも関わらず、未来プロジェクトの高まり切った熱量と勢いで新たなビジョンを発表したため、温度差が生まれてしまいました。今ではとても反省しています。もっと現場を巻き込みながらプロジェクトを走らせるべきでした。

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橋口さん:どんなにいいビジョンを作っても、そしてどんなに浸透施策を展開しても、ベースの基礎知識、新しいものを受け入れる環境づくりがないと、それらの行為は全く効果がないと改めて感じましたね。

そこで、まずビジョン自体は置いておいて、「なぜビジョンが必要か」、「ビジョンにはどんな意味があるか」と前提の情報から伝えることにしたんです。特に力を入れたのは、『少人数ワーク』でした。社員を3名ずつグルーピングし、ビジョン策定の背景や目的など基本情報を丁寧に伝え、「ビーボのビジョンと、その意味するもの」、「あなたの〝なりたい〟とは?」と、2~3回に分けて話をする場を設けました。

すると、日常の業務と『〝なりたい〟に本気』が徐々に紐づけられ、徐々にみんな自然と覚えてくれるようになったんです。

編:そんな中、退職率が50%に達する時期があったと伺いました。それはいつ頃のことでしょうか。

橋口さん:2017年の秋ごろです。入社半年の定着率が悪く、本来なら職場や業務にも慣れ、やりたいことや目標に向かって力を発揮していくタイミングのはずが、やりたいことが見つからない、あるいは、自分の経験やスキルを十分に活かせないと感じて退職するケースが多かったようです。

鈴木さん:HR Div.として、もっと一人ひとりが自分の強みや〝なりたい〟に向き合えるよう、2018年1月にオンボーディングを開始しました。新規入社者に理念研修を行い、一人ひとりにメンタ―をつけて業務の手順や社内ルールなどを丁寧に伝え、悩み事などを相談しやすい体制を整えました。

橋口さん:ほかにもビジョン研修を実施するだけでなく、会社のこれまでの歴史をまとめたムービーを見て理解を深めてもらう、各部の上長とのランチを設定してコミュニケーションを取りやすくするなど、会社理解や社員との交流を促す施策にとにかく力を入れてきました。

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忘年会もコミュニケーションイベントの一環として毎年開催

編:結果として退職率は改善されたのでしょうか。

鈴木さん:2018年の春には30%程度にまで回復し、2018年秋には10%まで減少しました。

編:素晴らしい成果ですね。お話を伺っていると、内定辞退や一体感の希薄化、退職率の増加など、常に新たな課題に取り組み、様々な施策が行われているようですが、現在取り組まれていることはありますか。

橋口さん:退職率が下がり、2018年の秋には社員数が100名を超えたことで、また新たな課題に直面しています。一人ひとりの組織に対する関心が薄れ、「組織のことは人事や経営管理部に任せておけばいい」という雰囲気が漂うようになってきたんです。

しかし武川は「ビーボは社員一人ひとりが作る作品である」と常に言っています。人任せではなく、誰もが事業と組織の両面を作っていくことを全社で再認識する必要があると感じ、2018年9月に組織横断プロジェクトを再度立ち上げました。

全社総会でプレゼンする鈴木さん

全社総会でプレゼンする鈴木さん

鈴木さん:立ち上げたのは、全部で6つのプロジェクトです。

① 才能開花プロジェクト:一人ひとりの強みを活かす仕組みを作る
② 人事制度プロジェクト:人事制度のあり方や運用の改善をする
③ サーベイプロジェクト:3ヶ月に1回実施するサーベイの結果を分析し、組織課題に対するアクションを先導する
④ リファラル採用プロジェクト:リファラル採用を推進し、自らチームを作るという文化を醸成する
⑤ 新卒採用プロジェクト:全社を巻き込みながら新卒採用を推進する
⑥ 総会プロジェクト:3ヶ月に1回実施する全社総会の設計から運営まで行い、組織全体の目線をあげる

編:6つのプロジェクトを進めることで、組織に変化はありましたか?

鈴木:少しずつですが変化を感じています。

組織横断のプロジェクトを始めて半年になりますが、一番変わったことは、組織を作ろう・動かそうという意識を持った社員が増えたことです。

オフィス内の『COMPANY BASE』では、Div.を超えた交流が盛んに行われている

オフィス内の『COMPANY BASE』では、Div.を超えた交流が盛んに行われている

これまでは、PECDiv.が全社に「こうしよう、ああしよう」と呼びかけていました。正直手応えを感じられなかったこともありました。今ではプロジェクトメンバーが、率先して自ら組織改善のための動きを考えて、各チームメンバーに働きかけてくれています。

もちろん、社員全員が組織を作る意識でいるか、というとまだまだだと感じています。ただ、確実に「ビーボは社員みんなで作る作品である」という姿に近づいてきていると感じています。

編:少しずつではありながらも前進されているのですね。今後の広がりが楽しみですね。これからPEC Div.が目指す姿を教えてください。

鈴木:これからも組織の変化や規模の拡大により、次々と組織課題がでることは避けて通れません。その都度ビジョンに立ち返り、社員が自らの〝なりたい〟と向き合うキッカケづくりをして、社員全員がエンゲージメントを感じる組織作りをしたいですね。私もまだまだ力不足なところもありますが、これからもみんなに助けていただきながら突き進んでいきたいです。

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筆者

竹井淳子

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