M&A後の組織づくりに挑んだブレイン・ラボのPMIとは?

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M&A後の組織づくりに挑んだブレイン・ラボのPMIとは?


M&A後の組織づくりに挑んだブレイン・ラボのPMIとは?

1990年代以降、バブルの崩壊や法律の改定の煽りを受け、日本でも活発化してきたM&A。

合併や買収による企業と企業のM&Aは、その成立がゴールではありません。その後の統合プロセスであるPMI(Post Merger Integration)の成否こそが、M&Aが企業にもたらす成果の度合いを左右するといわれています。とりわけ大きなテーマが、両社の企業文化や風土の違いをどうマネジメントするか。

人材紹介会社向けにサービスを展開する株式会社ブレイン・ラボは、2014年にM&Aによって、じげんグループに参画しました。M&Aから4年が経ち、一人当たりの生産性を上げ、新製品の開発にも着手するなど、PMIのフェーズ1を終え、次のフェーズに移ろうとしています。

そこで同社にてPMIを担ってきた株式会社ブレイン・ラボの中江典博さんと山下和彦さんに、M&A後の事業開発や組織づくりについてお話を伺いました。

編集部(以下、編):お二人はどのような形でPMIに携わられていたのでしょうか。

山下さん:じげんがブレイン・ラボを買収したのが2014年7月。その1年後の2015年7月に新しい経営に切り替わりました。私はその後のタイミングでブレイン・ラボに入社し、まずは人事機能の立ち上げを任されました。採用や人事制度の企画・運用を行いながら、前職がIT業界だったこともあり、開発のプロジェクトリーダーやシステムの導入コンサル、さらに経営企画にて数値管理や管理部門の体制構築も担っていました。現在は、管理本部のマネジャーとして後任の育成やPMIフェーズ2の取り組みを行っています。

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        山下和彦さん

中江さん:私はじげんから出向メンバーとして、2015年7月にブレイン・ラボに参画しました。じげんには新規事業のプロデューサー兼ディレクターとして入社し、出向後は開発部門の統括としてサービス開発にも携わりながら、より開発者目線での組織づくり、評価設計、エンジニアの採用などをしてきました。

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        中江典博さん

編:M&A直後のブレイン・ラボはどういう組織だったのでしょうか。

中江さん:M&A以前は経営者が細かな意思決定1つ1つにまで責任を持ち、事業を伸ばしてきた経緯があったため、組織も事業もトップが引っ張る風土が根付いていました。ボトムアップカルチャーの強いじげんとは、雰囲気もカルチャーも全然ちがいましたね。

山下さん:当時、じげん代表の平尾は「自分たちで当事者意識をもって事業をつくっていくという、じげんのコアとなる部分は受け継いでもらいたい。でもブレイン・ラボらしさも大切にしてほしい」と言っていました。私としても、じげんグループの一員として共通に持つべきマインドは前提として取り入れつつ、ブレイン・ラボというプレゼンスは持ち続けたいという強い想いがありました。

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編:じげんから継承したのはどのようなところでしょうか。

山下さん:組織面では「トップダウンからボトムアップへ」がひとつのキーワードでした。つまり、新生ブレイン・ラボとしてどういう行いや振る舞いが正しいのか、判断に迷ったときにどうするべきなのか、1人1人が考えて提案し、意思決定できるようにしたいと思いました。

そのためには、目の前の仕事だけでなく、ブレイン・ラボが携わる人材ビジネスの動向や技術トレンド、経営側の想いなど、社内外の情報にもっと興味関心を向けてもらい、さらに部署や職種を超えたコミュニケーションが必要でした。一人ひとりの関心の幅が広がることでコミュニケーションの量と質は向上しますし、その結果メンバー間での信頼関係が醸成され、自発的な提案や行動が増えるのではないか、と考えたんです。

中江さん:また、じげんグループ全体が掲げる業績目標のなかに「営業利益を25%成長させる」というものがあります。その目標の達成には、ブレイン・ラボとして加速度的な成長が求められ、これまでの成長角度から脱する必要がありました。そこで、開発側でもプロジェクトマネジメント体制を抜本的に見直し、生産性を上げることに注力しました。

経営目標をブレイクダウンした適切な数値目標の設定や納期管理体制の構築もこの頃行い、メンバー間で共通認識を持てるようにしました。その上で、当社が提供する『CareerPlus2』というシステムをさらに進化させるために、ボトムアップで積極的に新しい技術を取り入れ、新製品の開発ができる環境を作っていきました。

さらに、その1年半ほどの間に、同時並行で山下と共に評価制度も改めて設計し、経営側として求める役割を職能と等級ごとに可視化しています。

編:ブレイン・ラボとしては、どのような独自性を残したのでしょうか。

中江さん:“アットホーム感”を意図して残しました。

複数の生活領域でたくさんのサービスを展開するじげんに対して、ブレイン・ラボは人材紹介会社向けにひとつのサービスをみんなで創り上げています。サービスの先にいるお客様、ひいては求職者の方々をシステムを通じてサポートしていくために、営業も開発もサポートもコーポレートも、みんなが連帯感を持って協力しないといけないんです。また、じげんと違って職人気質なエンジニアの割合も高かったので、ボトムアップで意見を出しやすい環境づくりのためにも、“アットホーム”な雰囲気を残すことは非常に重要でした。

山下さん:例えば、ささいなことですが、全社員が集まる会では、時に冗談も交えつつインタラクティブに話ができる形式でのプレゼンテーションや雰囲気づくりを意識しています。座席を順不同にしてカフェっぽく演出するだけで、“アットホーム”な空間を創ることができます。くわえて、定時後に好きなお酒を持ち寄り、フランクなコミュニケーションをとる機会も定期的につくっていますね。

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        設立16周年をお祝いしたアニバーサリー企画ではオリジナルTシャツを作成し、より気持ちが一つになったとか。

編:ボトムアップの組織をつくるための具体的な社内制度があれば教えてください。

中江さん:じげんでも行っている全社会議『明日会』を、ブレイン・ラボでも月一で開催しています。その中で社員同士が意見交換をするワークショップを取り入れています。

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        明日会の様子

取り組み当初は、業務で関わる人以外、とにかくお互いのことを知らない状態でした。そのため「あなたの趣味は?」という自己紹介のようなトピックスからワークショップを始めました。その後は徐々に視座を上げていき、「組織課題は何か」という会社視点の議題へと昇華できています。

一人が自己開示することで、「じゃあ自分も話してみよう」と、いい流れを作れたと思います。

山下さん:先ほど評価制度を設計したとお伝えしましたが、変えたことを理解してもらう機会も必要です。ボトムアップで行動したことがどのような形で報われ、どうしたら等級UPに繋がるのかを、具体的に伝えたいと思っていました。そこで「リーダーをやりたい、マネジャーをやってみたい!」など、自推ができる『スキップグレード制度』を導入しました。自ら手を挙げた人にはまず新しい役割にチャレンジをしてもらい、十分に実績を残したら等級がつくという制度です。

社員が自ら役割の幅を広げていく流れが徐々にできてきたと感じています。

編:何かボトムアップの兆しはありましたか。

中江さん:印象的だったのは、クレド策定です。飲み会の席で、「行動指針を自分たちの言葉でつくろうよ」と営業のマネジャーが自ら言い出したのがきっかけでした。

山下さん:彼の一言で、有志で集まった10名ほどの委員会が発足しました。「自分たちが目指すべきところはどこか、自分たちらしさとは何なのか」を徹底的に考え、1か月半をかけて議論を繰り返し、言葉のブラッシュアップを重ねました。最終的に決まった言葉が、『OUR Brain』と呼んでいるものです。

OUR Brain(クレド)
I♡同体
ブレインラボの一員として一人ひとりが当事者意識をもつ!
Enjoy Impossible
「できない」へのチャレンジを楽しみ、「できる」にする喜びを!
縦横無尽scrum
タテ・ヨコ・ナナメ!枠にとらわれないコミュニケーションで一体感のあるチーム!
期待突破value
社内外から期待を超えるもっと良い仕事!もっと良いサービス!

出来上がったクレドに合わせてMVP表彰をしています。「あなたのこの行動は、まさに期待突破valueだね」「Enjoy Impossibleだよね」と具体的なアクションを表出し、全社的な規範を示すことで、クレドの浸透策となっています。

編:情報の流通性を高めるためにはどのような施策を行ったのでしょうか。

中江さん:Slackを導入して気軽に情報発信ができる環境にしました。個々のタスクについても、Backlogなどのツールを使うことによって情報の流通性を高めていきました。どこで誰が何をやっているのか把握できるようになれば、自然とリアルなコミュニケーションも生まれるだろうという狙いです。

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        フランクにオープンスペースでミーティングを行うことが多いブレイン・ラボ

山下さん:組織の階層構造を明確にしたことと会議体を整備したことも、情報を流通させていくうえで必要不可欠でした。GM会議、マネジャー会議、そしてディビジョンごとの会議など、経営会議を起点として情報を正確に下ろしていけるように改めて設計しました。

編:PMIを遂行していく中でのモチベーションはどのように保たれていたのでしょうか。

山下さん: 単純に、最高の会社にしたかった。それだけなんです。それに向けてやるべきことだと、納得感を持ってやってきました。経営と現場、どちらかに偏ることなく、自分の信念は人一倍強く持ってきたと思います。

もちろん、人の入れ替わりや経営と現場のギャップやハレーションに悩まされることもありました。2年ぐらいかかりましたが、ようやく事業と組織のベースができ、PMIフェーズ1を終えたと思っています。

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中江さん:思い浮かぶのは社員みんなの顔ですね。ブレイン・ラボを去ることになった社員も含めて。特にエンジニアにとって働きがいのある環境や魅力をつくっていきたい。一人ひとりのライフステージもある中で、みんなが「ブレイン・ラボでやりきった!」というまで安心して楽しく働いける会社にしたいと、心から思っています。山下という戦友がいたことも、正直大きかったですね。

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        PMIの成果が認められ、じげん本社の月間MVP『ZEUS』にて表彰されたブレイン・ラボ

編:これから目指していきたい組織の姿を教えてください。

中江さん:プロダクトを創る力をつけるため、アジャイルな組織やロケーションに縛られない働き方の仕組みを進化させていきたいです。今はまだ属人化している部分が多い状態なので、自律的に組織の仕組みが回っていくところに早くたどり着きたいです。もっと現場に裁量があってボトムアップ経営ができている状態も、ひとつの進化の先だと思います。

山下さん:個々のキャリアプランの中で、ブレイン・ラボで働いていることの理由を自信を持って言えるエンゲージメントの高い組織へと、この1~2年で成長していきたいです。個人のキャリアパスを考えるとともに、そもそもブレイン・ラボとして、今後のビジョンをどのように定義づけていくのか、もっと透明性や具体性をもって組織に展開していかなければいけないと思っています。

グループ全体の変化のスピードはとても速いですし、マーケットもどんどん変わっていきます。ブレイン・ラボとしても、ビジョンをどう変化させていくのか、一人ひとりの働く場所をどうデザインしていくのか、これからも信念をもって考え、進化させていきたいです。

筆者:三浦蒔子

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