2016/06/09
アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)を基盤とした24時間365日のフルマネージドサービス『cloudpack』を運営するアイレット株式会社。
AWSクラウドの利用時に発生するさまざまな課題を解決するサービスをパッケージ化した『cloudpack』は、立ち上げからすでに6年以上が経過しており、現在では600社以上の導入実績があります。また、最上位のAWSパートナーのみが認定される「プレミアコンサルティングパートナー」に4年連続で認定されています。
アイレットは2015年4月に、人員増加に伴い虎ノ門ヒルズに本社を移転。事業の成長とともに、2年前には数十人だった社員数も現在130名を超えました。
アイレットには、社員の”働きやすさ”にこだわった福利厚生制度が数多く存在します。しかも、その福利厚生制度の多くは、社員からの要望をきっかけに制度化されていると言います。これは結果的に、社員全員が”働きやすさ”について考えるようになり、より良いオフィス環境を追求することにつながっているそうです。
さまざまな制度に込められた”アイレットで働く”ことへの想いについて、執行役員の後藤和貴さん、広報チームの増田隆一さん、羽鳥愛美さんにお話をうかがいました。
編集部(以下、編):福利厚生制度を考える際に大事にしていることは何ですか。
どの会社にもある、一般的な福利厚生は最低限やるようにしていますが、考えの中心にあるのは”社員の働きやすさの追求”であり、“働きにくさ”につながる要因は解消していくように心がけています。
例えば『近隣住宅手当』なども、割とよくある福利厚生ですが、アイレットでは社員がなるべく会社の近くに住むことを推奨しています。具体的には、虎ノ門オフィスを中心に半径1km圏内に住むと最大月額5万円が支給されます。
あとは距離に応じて1km単位で支給額が変わります。近くに住むことで通勤時間が短くなり、仕事以外に使える時間が増えますからね。これは比較的、住まいを自由に決められる単身者の利用者が多いです。
以前、港区海岸にオフィスがあった頃は月額3万円支給だったのですが、虎ノ門に移転したら半径1km圏内の家賃が高くなってしまって(笑)。オフィスの移転と同時に上限を月額5万円まで引き上げることになりました。
一方で、既に持ち家だったり、家族の都合でどうしても近所に住めなかったりする社員もいますよね。通勤に1時間半以上の遠方から通う社員には申請制で『グリーン車手当』を用意しています。文字どおり、グリーン車定期券の費用を会社が負担する制度です。北は埼玉方面、南は神奈川方面と、まあまあ遠方から通う社員も多く、混雑する時間帯に身体的負担の軽いグリーン車で通勤できると重宝されています。
社員が仕事で最大のパフォーマンスを発揮できるために会社ができることはやる、必要なモノはとにかく提供する、というスタンスが徹底されているというわけです。
(編)日本人の通勤にかかるストレスは相当なものがありますよね。他にはどのような施策があるのですか。
ちょっと変わった施策だと、マッサージ・鍼・カイロプラクティックを専門とする施術師に月曜日と金曜日にお越しいただいて、オフィスの一室で施術をしていただいています。普段は千葉県にあるご自身の治療院で施術されている先生なので腕も確かですし、疲労回復に直結するので、社員からはとても喜ばれています。
先生は10時から19時の間で待機しているので、オンラインの予約表を確認して、空いていれば誰でも業務の合間に、自由に予約ができます。15分単位で最大60分まで予約できるのですが、しっかりと60分かけて施術を受けてリフレッシュしている人が多い印象です。
他にも、各種資格取得支援制度としてAWS資格認定やTOEICの受験料負担などもあります。最近では、海外のお客様とのやりとりが発生する案件もあり、オンライン英会話の費用負担制度もトライアルとして新しく始めました。25分の英会話の受講も、毎日続けることで英会話慣れにつながるようですね。
(編)こうした制度はどのようにして設計されているのでしょうか。
現場の各セクションリーダーには、社内コミュニケーションが目的であれば自由に使用できる予算が割り振られています。役員も積極的に社員とコミュニケーションをとる機会を設けていたりもします。
そうしたコミュニケーションの場で、社員から福利厚生のアイデアが寄せられると、その場で意見をまとめてその週の役員会で決定する、そんなスピード感です(笑)。『グリーン車手当』も、ある飲み会での社員の一声から生まれました。
役員会は毎週実施しているのですが、超スピードでさまざまな経営判断を行うのがアイレットのスタンスです。誤った経営判断を修正するスピードもとにかく速いので、ここまで大きな誤りなしに成長することができました。
福利厚生の導入は多くがテスト運用から始まります。テスト運用の目的は、その制度が定着するかどうかです。定着を図るために運用ルールや金額が変わることはありますが、完全に廃止に至った福利厚生はほとんどありません。業務内容や組織の変化に応じて適応させながら、定着していくことがほとんどです。
(編)そうした社内制度は創業当時から積極的に導入されていたのでしょうか。
以前は、今と比較するとないがしろでした。「仕事はきちんとやろう」「健全さは最低限を担保しよう」というレベルでの運用に留まっていた時期がありました。
明文化されていない制度もあり、不明瞭な状態だったと思います。現在では明文化することも含めて、社員の”不満”や”不安”、”働きにくさ”を積極的に潰していこうとする方向性を明確にしています。
社員数が100人を超えて、社員の思考も千差万別です。あらゆる瞬間で耳をダンボにしていないと、社員の声を聞き逃してしまうので、コミュニケーションを密にすることを重視しています。
(編)制度を整備していくことで、会社内で目に見える変化はありましたか。
まず唐突に退職する人が減りました。コミュニケーションを密にする機会や意見を吸い上げる機会が増えたことが功を奏しているのかもしれません。いろいろ溜め込んで、突然に燃え尽きてしまう人が減ったのだと考えています。
さまざまなタイプの制度を導入していることで、社員それぞれが何か特定の制度で喜んでいるようです。全員で「この制度いいね」と言うよりは、自分は「この制度がありがたい」というように、フィットするものが異なるのも最近わかってきました。
創業時は独身者が多かったのですが、年月が経つにつれ、所帯を持つ社員が増えてきました。ライフステージの変化で働き方は当然変化しますので、固定化された制度ではなく、単身の場合は『近隣住宅手当』、所帯を持って遠くなった場合は『グリーン車手当』と、社員の状況に応じて活用しやすい制度を増やすことで、働き方の差分を埋めることができているのだと思います。
他にも、『cloudpack』というサービスの特性上、24時間対応のシフト勤務メンバーもいます。夜間や土日祝日の割増手当はもちろんですが、連休の勤務では手当が増える制度があります。例えばゴールデンウィークなどの長い連休があれば、その連休中に1日でも出社した場合、割増手当とは別に、通常の何倍かの手当が支給されます。皆が休みたい期間にシフトに入ってくれるメンバーに感謝して、それに報いたいと考えた制度です。
基本的に、会社の利益は積極的に社員の働きやすさに還元したいと思っています。可能な限り、全社員が対象となる手当という制度に仕立てつつ、率先して事業に取り組んでくれる社員には、より働くメリットが出るようにしたいですね。
(編)ビジョンに「血のかよったチーム」という言葉がありましたが、この言葉はどのように会社の中で活きているのでしょうか。
企業文化や風土を言語化することはあまりないのですが、あえて言葉にすると”同級生”のようなキーワードが出てくるかもしれません。これは創業メンバーの関係性が影響しています。実は創業メンバーは幼馴染どうしで、小学校や中学校のときから、ずっと集まっていた仲なんです。
幼い頃からの信頼できる仲間で事業に取り組んでいるが故の強固な関係性もありますが、新たに人を採用するときも、その人との関係性がどうなるかを意識してみています。経験やスキルだけでなく、人間性や価値観が合致するかです。
社長も役割としては会社のリーダーですが、仕事をする上ではお互いに切磋琢磨する関係です。ときにはお互いにプレッシャーを与え、ときには鼓舞し合い、ときには支え合うような感じです。
これは人数が今以上に増えていっても残していきたい風土ですね。制度を変えたり、やり方を変えたりしながらでも、こだわっていきたいです。
(編)今後、アイレットが次のステージを目指していくときに必要なことは、何でしょうか。
アイレットではこれまでお話ししてきた企業風土に加えて「お客様を見てよく働く」というスタンスが醸成されています。ただし、これらは言語化されて社内に流通しているわけではなく、社内で働いていて感じる雰囲気や、それを体現する同僚の姿によって保たれています。
現在の社員規模なら、この”雰囲気”でまとまるかもしれませんが、今後150人、200人、それ以上になってくると、雰囲気だけでは伝えきれないでしょう。
実際、この1〜2年で入社した社員の割合が増えていますので、創業から大切にしてきたものが希釈化されて、ひょっとしたら消えてしまう可能性もあります。成長の過程で、大事にするもの、守らなくてはいけないもの、変えなくてはいけないもの、それぞれあると思います。その中でも、ここまでの成長の中で大切にしてきたものは、やはり残していきたいですよね。
感覚的には”会社の文化を守る”よりもずっと手前の段階で、まだ文化にすらなっていない。むしろ雰囲気でやっているものを、企業文化のようにどう明確化できるか、どう浸透させていくかが重要になってきます。これは経営や広報など、一部の誰かがやることではなくて、全員で取り組んでいくことですよね。
そうした取り組みの一端を担うのが、福利厚生だと思います。制度が充実していることだけではなく、働きやすさにつながる制度をトップダウンで決めずに、現場と一緒に考えて全員でつくる。そうした積み重ねが、企業文化の確立につながっていくと考えています。
その組織で働き続ける理由が「給与や福利厚生が充実していること」という人は間違いなく減ってきています。この会社で働く意義、つまり ”アイレットで働く意義” が、社員それぞれ違うものだったとしても、何か共通の『大切なこと』を創りだして、それを一人ひとりが意識しながら働けていたらいいですよね。
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この記事の著者
中島 浩太