2021/05/19
森永乳業株式会社(以下、森永乳業)は、2017年に創業100周年を迎え、森永乳業グループのコーポレートスローガン・経営理念を新たに策定しました。この新しいコーポレートスローガンと経営理念の体現に向け、森永乳業グループは「社員一人ひとりがみずから考え行動する自律型組織」を目指して組織づくりに取り組んでいます。
この自律型組織づくりの一環として、理念・行動指針の理解を深める『夢共創フォーラム』をCSR推進部が、社内表彰制度『Morinaga Milk Awards』を人財部とCSR推進部の共催で、それぞれ集合型イベントとして企画・実施してきました。
ところが2020年に流行した新型コロナウイルス感染症によって、社員が集まるイベントの実施は難しい環境になりました。そこで検討を重ね、『Morinaga Milk Awards』の表彰式と『夢共創フォーラム』の両イベントを、森永乳業グループ初のオンラインイベントとして実施することを決定します。
オフラインで実施していた集合型の社内イベントを、どのようにしてオンラインイベントへと切り替えたのか。イベントを担当するCSR推進部CSR企画グループの大野奈美さんと、人財部労政企画グループの福地久美子さんに取り組みについてお聞きしました。
編集部(以下、編):今回、森永乳業グループとして初めてのオンライン社内イベントを挑戦されたとのことですが、『Morinaga Milk Awards』とはどのようなイベントなのでしょうか。
『Morinaga Milk Awards(以下、MMA)』は、5つのテーマで社員の功績を表彰する社内表彰制度です。表彰テーマは『社長賞』『年間提案大賞』『トライアル&エラー大賞』『活き活き大賞』『イクボス大賞』で、森永乳業グループ社員6,000人超が対象となっています。
この『MMA』は、新しい経営理念の策定をきっかけとして2018年にリニューアルしています。以前から社長賞と提案大賞は表彰していたのですが、この2つの賞は大きな成果・貢献を取りあげるもので、表彰対象は限られていました。
そこから新しい経営理念が策定され、自律型組織を目指す組織像として定めたとき、「社員のどのような行動を称賛することが自律型組織につながるのか?」を目的軸であらためて考えなおしました。結果、大きな成果だけではなく挑戦や失敗などの“行動”や“プロセス”にもスポットライトを当てたいという想いから、3つの賞を追加して現在の『MMA』が完成しました。
編:『MMA』の受賞者はどのように選出されるのでしょうか。
基本的に募集制でエントリーを受け付けています。表彰式は毎年11月に実施するのですが、5月から6月頃に「この賞に当てはまる取り組みはありませんか?」と募集をかけています。エントリー件数は賞によってまちまちで、『社長賞』は大きな功績を求められるため十数件程度です。
一方で年間提案大賞のエントリーは非常に多く、総数は何万件もの数字になります。もともと社内には日常的に改善提案を行う文化と、そうした改善提案の取り組みを吸い上げるシステムがあるので、その積み重ねが何万件という数字になっています。
そうしてエントリーされた案件の中から、一次審査、二次審査、最終審査と社内で吟味し、受賞が決定します。ちなみに『活き活き大賞』と『イクボス大賞』は社員投票が行われるのですが、今年の投票人数は2,712人と多くの社員が投票に参加してくれました。
編:『夢共創フォーラム』はどのようなイベントなのでしょうか。
『夢共創フォーラム』は、経営理念や行動指針、森永乳業グループの未来まで、日常の仕事を離れて一日かけてじっくりと考えるイベントです。年に一度、公募制で集まった約100名の社員が一堂に会します。日本各地の事業所やグループ会社から、役職も業務内容も異なる多様な社員が集まり、役職を抜きにしてフラットな状態で対話できるように設計されたプログラムに参加します。
『夢共創フォーラム』は、新しい経営理念の浸透促進を目的として始まった『夢共創プロジェクト』の一環で行っています。『夢共創プロジェクト』には、『夢共創フォーラム』のほかに、「挑戦しやすい職場づくり」や「活き活きとした職場づくり」を牽引するリーダーを目指す『管理職ワークショップ』、職場内の対話・職場外の連携を目指す『職場独自の取り組み』などが含まれています。
2019年までの『夢共創フォーラム』では、趣向を凝らしたプログラムを毎回企画していました。たとえば6人程度のグループに分かれて対話するプログラムを実施したことがあります。そのときは、8つの行動指針のうち「できていること」「できていないこと」を共有し、できていないことについて行動の阻害要因は何で、どうすれば阻害要因を排除できるのか、どうすればより活き活きした組織にできるのか、各々が書きだしながらグループで整理して、全体で共有し合いました。
重要なことは、経営理念や森永乳業グループについて、日頃の職場の仲間だけではなく、離れた職場の仲間とも想いを共有することです。役職や業務内容が異なる人の想いを受け止め、そこで考えたことを自分の職場に持ち帰り、周囲に共有してほしい。そうした狙いで実施していました。
編:実際に集まり、膝を突き合わせて会話することが重要なイベントだったように思います。それが2020年は新型コロナウイルス感染症によって、集まることが難しくなりました。森永乳業グループでは、今回のような環境変化を受けてイベント実施をどのように検討されたのでしょうか。
2020年の夏頃は感染拡大が一時的に落ち着いたこともあり、集合型とオンライン、両方の実施方法を視野に入れて検討を進めていました。ところが秋から再度、感染者数が増えたことで、完全にオンライン開催の判断になりました。
併せてさまざまな制約が重なった結果、これまで別日で開催していた『MMA』表彰式と『夢共創フォーラム』を同日開催することになり、オンラインと同日開催を踏まえたプログラムの見直しにも取り組みました。
最終的な仕立てとしては、午前中に『夢共創フォーラム』を、午後に『MMA』の表彰式を開催する形式です。『夢共創フォーラム』は以前のように集合して対話をすることが難しいため、『MMA』の『活き活き大賞』にノミネートした方々の取り組み内容をプレゼンテーションしていただく形式へと大きく変更しました。
編:はじめて社内イベントをオンラインで開催するに際して、どのような不安や懸念がありましたか。
何よりオンラインでのイベント開催方法がまったく分からなかったので、ツール選定や配信方法など、イベント運営は日頃取引のある会社に頼り切りでお任せしていました。
企画に関しては、参加型から視聴型に変わることで、見ている社員が飽きたり温度差が生まれたりすることを懸念していました。『MMA』表彰式は社員の素晴らしい取り組みを称賛するために実施するイベントです。受賞者をしっかりと盛りあげながら、かつ視聴している社員も楽しめる内容にすることが重要だと考えていました。
『夢共創フォーラム』についても、集合して感じられる一体感や日常から離れた交流が魅力でしたので、オンラインになり交流プログラムがなくなることで、満足度が下がってしまわないかと正直不安でした。
編:では、実際にオンライン社内イベントに挑戦してみて、事務局としての手ごたえや、参加された方々の反応はいかがでしたか。
参加できる人数がぐっと増えたことは非常に良かったと思います。これまでの『MMA』表彰式はスケジュールや予算の都合で、参加者は受賞者と役員に限られていました。オンラインになったことで受賞者は自分の職場から参加することができ、受賞者発表の際は周囲の同僚から称賛されて盛りあがっていました。これは初めての光景でしたね。
『夢共創フォーラム』も、ノミネート者のプレゼンテーションは初めての試みでしたが、視聴した社員からはポジティブな反応が多く寄せられました。実はこれまでの『MMA』表彰式では、ノミネート者が自身の取り組み内容について社内に共有する機会がありませんでした。
今回はプレゼンテーションを通じて受賞者の取り組み内容を詳しく共有できたことで、「自分の職場で真似してみようと思う」と、次の行動につながる声がいくつも挙がっていました。
ノミネート者からも、「プレゼンテーションの準備を通じて、自身の取り組み内容を再整理できた」「ほかのノミネート者と意見交換をすることで、新しい視点を得られた」というフィードバックがありました。
編:オンラインでの開催について、どのような特徴やメリットがあると感じましたか。
『MMA』と『夢共創フォーラム』、両方に共通して言えることは、仲間と情報を共有する難易度が大きく下がりました。
これまでは「一箇所に集まる」という制約から、どうしても参加者を限定したイベントにせざるを得ませんでした。ところがオンラインになったことで自職場からでも簡単に参加できるようになり、周囲の仲間と一緒に参加しながら内容を共有できるようになりました。
同じ情報を職場内で共有できたことで、社内で生まれている挑戦を知り、経営理念や行動指針をあらためて振り返る機会が持てたのではと思います。
編:最後に、今後の『MMA』と『夢共創フォーラム』の構想を教えてください。
新たに挑戦した『活き活き大賞』ノミネート者のプレゼンテーションに対する好評を踏まえて、ほかの4つの賞でも取り組み内容を共有する場を設けてもいいのでは、という話は出ています。
実施方法については、オンラインでも効果的なイベントができることがわかった一方で、「できれば集まりたい」という話はやはり挙がります。しかしコロナ以前に戻ることは考えられません。集合しながら、同時にオンラインで共有する設計の仕方もあると思うので、今回の結果を踏まえてさらに進化させていきたいと思います。
今回のイベントは、オンラインイベントになり参加者が増えたことで、社員から多くの反応が寄せられました。イベント後に事後アンケートを実施しているのですが、好意的な感想と同時に「もっとこうなれば嬉しい」と多くの要望も挙がっています。
『MMA』や『夢共創フォーラム』は一部の社員が対象になるのではなく、森永乳業グループの全社員が積極的に関与して“参加”してくれることがひとつの目標です。こうして興味を持っていただけたことは嬉しく思います。
100周年を機に社員参加型でつくりあげた「森永乳業グループらしさ」の実現に向けて、今後も多くの社員に参加してもらいながら魅力的なイベントを実現していきたいですね。
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この記事の著者
中島 浩太