2023/08/05

失敗も貴重な経験の一つ!実行委員会が“ゼロ”から作り上げた初めての社内文化祭『センコーグループ カルチャーフェスティバル』

センコーグループホールディングス株式会社(以下、センコーグループ)は物流を中核とする企業グループです。事業領域は物流事業、商事事業、ライフサポート事業、ビジネスサポート事業の4本柱。2023年5月現在、グループ会社約180社で構成されています。

規模拡大や海外進出によって従業員の急増、従業員の国籍も多様化する中、グループビジョンとして掲げている「未来潮流を創る企業グループ」を実現するにはグループ全体の結束を強め、活性化を図ることが必要です。しかし、短期間で拡大したこともあり、横のつながりが強いとは言えないのが実情です。

人と人とのつながりを作ること、従業員に笑顔で仕事してほしいという思いから、2021年にグループ全体の健康経営を推進する「健康推進部」の中に「文化・スポーツ推進担当」が設置されました。

その初年度の活動となった社内文化祭『CULTURE FESTIVAL 2023(カルチャーフェスティバル)』について、事務局を担った文化・スポーツ推進担当課長 坂田賢二さん、実行委員を務めた管理本部総務部 戸田千秋さんと九州センコーロジ株式会社 出田隆嗣さん、ライブに出演した管理本部サステナブル推進部 豊泉紫帆さんに、計画からパートナー選定、企画・設計、実施に至る過程を伺いました。

文化・スポーツの力で笑顔あふれる未来をつくる

編集部(以下 編):組織のビジョン、ミッションについて教えてください。

坂田:「文化・スポーツ推進担当」のビジョンは「文化・スポーツの力で笑顔あふれる未来をつくる」です。心身ともに健康で活力ある従業員が、経営の基盤です。さまざまな文化・スポーツに触れ、その楽しさを実感することで、従業員一人ひとりが自発的に行動し、充実した職場生活やプライベートを過ごすきっかけを提供したいと考えています。

組織は、2022年4月、執行役員1名で立ち上がり、同年8月に私が中途採用で加わりました。私は新卒で社会人野球チームに所属、引退後はスポーツビジネスに関わりたいと、野球選手のセカンドキャリア支援のしくみ作りや、指導者認定制度のベース作りに関与しました。

その後、人材ビジネスの会社でキャリア開発支援などを手がけ、その時のご縁でこの仕事をすることになりました。これまで関わってきたスポーツ領域と人材領域、両方の知見が活かせそうだと考えたのです。私のミッションは「文化とスポーツをソフトとして活用しつつ、組織を作りそのコンディションを整えること」だと捉えています。

文化・スポーツ推進担当課長 坂田賢二さん文化・スポーツ推進担当課長 坂田賢二さん

編:最初のお仕事が5か年計画の立案だったそうですが。

坂田:はい。まずは2022年スタートの中期経営計画に合わせて「文化スポーツ推進プラン5か年」を策定しました。グループビジョンである「未来潮流を創る企業グループ」を達成するための文化・スポーツの役割を「笑顔あふれる未来をつくる」と置きました。人がご機嫌でいると本人だけじゃなく周囲も楽しいですよね。組織コンディションがいい状態とは、みんながご機嫌で笑顔あふれる状態だと私は思っているんです。

そのために4つの目標を掲げました。1つ目が「文化・スポーツで豊かに生きる!」です。従業員が豊かに生きるためのアクティビティとして、文化祭やスポーツイベントを活用しようとしています。

2つ目は「文化・スポーツで会社を変える!」です。豊かに生き、笑顔あふれる個人が集まる組織の、パフォーマンスが高い状態を作りたい。エンゲージメントサーベイなどで効果をはかっていきます。

3つ目は「文化・スポーツで社会を変える!」です。個人が豊かに生きている、組織コンディションも良好である、そんなセンコーグループが社会も変えていきましょうということです。最近ではスポーツSDGsという言葉が広まっていますが、スポーツや文化を通じて社会課題の解決に寄与していきます。

4つ目が「強く愛されるアスリート集団を作る」です。私たちのケイパビリティとして実業団チームを複数抱えていることが挙げられます。柔道、ゴルフ、剣道、女子陸上、テニスの5チーム80名のアスリートたちの活躍が、前述の3つの目標の実現に寄与すると信じています。今春、男子カヌーと女子アイスホッケー、2名の日本代表選手がセンコーグループに加わりました。彼らのがんばる姿が、これまでスポーツに関心の薄かった層にも影響を与えてくれることを期待しています。

「未来潮流をつくる企業グループ」に向けて文化・スポーツ推進プランが掲げる4目標「未来潮流をつくる企業グループ」に向けて文化・スポーツ推進プランが掲げる4目標

文化やスポーツに触れ、楽しむきっかけを提供する「文化祭」

編:1つ目の目標に紐づいて、文化祭の計画が立ち上がったのですね。

坂田:ビジョンの実現に向けて、まずはグループ従業員に文化やスポーツに触れてほしいと考えました。私はスポーツや文化には人を笑顔にする力があると信じていますが、触れてもらわないことにはその力は及びません。いろんなきっかけを、あの手この手で提供することが必要だと考えました。

「従業員同士のつながりを作ること」「文化を楽しむきっかけを作ること」この2つを目的に、カルチャーフェスティバル(文化祭)の開催を計画しました。計画にあたっては外部の協力会社の力を借りました。「これはすごいイベントになりそうだな」とワクワクさせられる提案はたくさんあったのですが、イベントの企画や設計、当日の運営から反省会まで、半年間に及ぶ従業員の経験を含めてプロデュースしましょうと提案してくれた会社をパートナーに選びました。「失敗も従業員の大事な経験ですよ」という言葉が決め手になりました。

編:イベントの概要を教えてください。

坂田:2023年2月26日(日)、グループの研修施設を兼ねたホテル「クレフィール湖東(滋賀県東近江市)」にて開催しました。文化に触れるきっかけの提供と、人と人とのつながりへの寄与が目的です。「触れ方」にもいろいろあります。直接来場したり、ライブ配信を見たりして、参加してつながるだけでなく、企画運営でもつながりましょう、ライブチャットなどで応援してつながりましょう、と「つながる」ことをテーマに置きました。

ステージでのライブパフォーマンスを中心に、レザークラフト教室や地酒飲み比べなどの体験型イベント、オンライン料理教室、ビブリオバトル、抽選会などを行い、会場には325名が集まりました。LIVE配信は常時80~120名が視聴していました。

さまざまなフェーズで、人と人とが「つながる」ことをテーマに置いた文化祭さまざまなフェーズで、人と人とが「つながる」ことをテーマに置いた文化祭
会場で行うリアルコンテンツと、配信前提のオンラインコンテンツを準備会場で行うリアルコンテンツと、配信前提のオンラインコンテンツを準備

真っ白なキャンバスに絵を描くような…実行委員会

編:出田さん、戸田さんにお聞きします。実行委員会への参加を求められて、どう感じましたか?

出田:6年目社員を中心に組織長経由で「文化祭の実行委員会に入らないか」と打診がありました。私は物流事業に携わっており、イベントの企画・運営なんて普段全く関わることがないので、いい経験になりそうだと思いました。また、みんなが楽しめるイベントを作れたら、センコーグループの一員として活躍できた、貢献できたということになるだろうとも思いました。もちろん不安もありましたが、楽しいことは好きなので、結構ノリノリで参加しました(笑)。

オンラインで参加いただいた九州センコーロジ株式会社 出田隆嗣さんオンラインで参加いただいた九州センコーロジ株式会社 出田隆嗣さん

戸田:私は最初に声を掛けられた時は「文化祭って何?」という感じでした(笑)。あまりイベント事が多い会社ではないので、「いったい何をやるんだろう」という思いを持ちながら参加したというのが正直なところです。初回の集まりで役員から「これは仕事です」というお話もありましたが、イベント事は好きなので、楽しみながら取り組めたらいいかなと思っていました。

管理本部総務部 戸田千秋さん(左)管理本部総務部 戸田千秋さん(左)

編:全く初めての経験だったと思いますが、どのように作り上げていったのですか。

出田:「楽しいこと好きだからやってみよう!」と始めたものの、最初は本当に手探りの状態でした。「何やるの」「どうやって楽しくするの」ってところから悩みましたね。苦労はありましたが、仲間の助けや、事務局の坂田さんのアドバイスを信じて進みました。実行委員会のスローガン「Fire up!ワクワク感に火をつけろ!」そのものですね。自分がやるしかない、楽しくやろう、その思いだけでやっていました。

6年目の同期はグループ全体で80名くらいいるんですが、そのうち8名が実行委員会のコアメンバーになっています。コアメンバーは17名でしたから約半数ですね。同期は困ったときに頼りになる存在としてとてもありがたかったです。カルチャーフェスを通じてお互いの助け合いや絆みたいなところが固まったように思います。

戸田:カルチャーフェスでは同期からかなり意見をもらいました。どんな内容なら人が集まると思うか、といったイベントのコンテンツに関わることから、事務局のパーカーのデザインのような細かいことまで(笑)。

最初は事務局がある程度の形を決めて、その中でやるのかな、と勝手にイメージしていたんです。でも、いい意味でゼロから決めさせてもらいました。リアルかオンラインか、ハイブリッドでやるかといったことから決めていきました。日付と場所、どういうイベントにしたいかという方針は決まっていて、それ以降は全部自分たちで作りあげていった感じです。

実行委員が集まってアイディアを出し、それを4、5人の小グループで持ち帰って具現化の方法を検討する、という流れでした。例えば「ビブリオバトル」という企画があったんですが、どんなルールにするか、どう出演者を集めるかから全部決めていくんです。

坂田:あれでしょ、今「決めさせてくれた」っていう表現使ってくれたけど、「ちょっと負荷高くない?」「そこまで実行委員が決めなきゃいけないの」みたいなのが、最初はあったんじゃない?

戸田:まあ、最初は正直そう思いましたけど、今から思えばそれも楽しかったです、本当に。ただ、アイディアは意外とポンポン出るんですけど、それを実際にやろうとすると結構難しいんだなっていうのは、かなり感じましたね。

私のチームでは、「若者の主張」という企画を持っていたんですけど、応募者がなかなか集まらなかったっていうところが予想外でした。そもそも初めての文化祭なので、思うように集まらなくて当然なのかもしれません。どうしたら応募してもらえるかチームで話し合おうと思っても、全国に散らばってるチームだったのでなかなか難しかったですね。

坂田:宿題を渡すとすぐ集まって打ち合わせしようとするから(笑)。打合せ日時を決めるだけで何度もやり取りが必要になるよね。その時間になんかやれるでしょ、と正直もどかしい思いを感じていました。

戸田:坂田さんには、いちいちウェブ会議で集まってとかそういう進め方じゃなくて、ある程度叩き台を作って意見を収集するとか、仕事に通じることも多く教えていただきました。

ビブリオバトルも参加者が集まらなくて苦労したのですが、個人の声掛けはもちろん、社内報に掲載されていた本好きの方特集を頼りに、グループ会社の方にメールで連絡をとるなど、草の根活動でなんとかなりました。グループ会社の方との接点はほとんどないので、これも新たなつながりの一つだったなと思います。

出田:6年目の同期メンバーだけでなく後輩もいる中、コミュニケーションの取り方自体も普段にない経験だったなと思います。私の場合、部下がいないということもあって、後輩と接する機会があまりないのですごく勉強になりました。

戸田:私は同期との仕事上でのつながりがそれほどありません。今回のカルチャーフェスをきっかけに久々に連絡を取り合って、つながりあえたと思います。6年の間にこんな仕事をしていたんだとか、こんなところが成長したなとか、刺激を受けることが多かったです。

実行委員のがんばる姿に刺激されバンドを再結成

編:次に、社内バンドでライブ出演された豊泉さんにお聞きします。カルチャーフェスティバルに出演したきっかけを教えてください。

豊泉:私はハイボールマニアというバンドでライブに出演しました。新卒入社で配属された大阪本社で、音楽好きな仲間とバンドを組んでいたのですが、私の東京転勤で活動休止していました。戸田さんの上司である総務部長が、私たちの活動を応援してくれていて、「こんなイベントがあるから出てよ」と誘ってくれたんです。

初めは、メンバーと物理的な距離もあるし、練習時間も取れないし、私自身もブランクがあるし、ちょっとなあって感じでした。でも、実行委員の戸田さんのためにやってみようと決心しました。戸田さんの席は私の向かい側なんです。オンラインで会議をしている様子もよく見ていました。大変そうだな、力になりたいなと思ったんです。

管理本部サステナブル推進部 豊泉紫帆さん管理本部サステナブル推進部 豊泉紫帆さん

豊泉:出ると決めてからは個人で猛練習しました。4人揃って合わせられたのは本番当日の控室と、正直ぶっつけ本番感はありましたね。ちょっと事務局の坂田さんに無理を聞いてもらって、30分というかなり大きな枠をいただけたため、かなり気合を入れてがんばりました。

豊泉:出演後は「オンラインで聞いたよ!」と知らせてくれた人もたくさんいました。社内報でも取り上げていただいたので、名前は知っているという方はいたと思います。でも「実際に聞くのは初めてです!」「今日聞けて良かった」と多くの方に言っていただいて。反響は大きかったですね。本当に出てよかったなと。メンバーも次の機会を楽しみにしているくらいです。

「実は僕も楽器をやっていて」と声を掛けてくれた方がいたんですが、「次はぜひ出演しましょうよ」という話になったりして。新しいつながりが生まれて、すごくうれしい経験でした。

坂田:初回のカルチャーフェスティバル出演者は自発的に出てきてくれたんだよね。それだけにとてもレベルが高かったので、次回以降、新規の出演者が躊躇するかも、という心配は少しあります。音楽会や発表会というようなもっと小規模でライトなイベントを開催する手もあるかもしれないね。

「自分で考え、決めて、動く」社員が増える仕掛けを!

編:カルチャーフェスティバルに対する従業員の反応はいかがでしたか?

坂田:実行委員会のメンバーにアンケートを取ったのですが、「仕事では経験できないことが経験できた」という答えが67%、「仕事では気づけない自分の強みや課題に気付けた」という答えが53%だったんです。

また、イベント当日の出演者が「次は実行委員会に入りたい」とメールを送ってくれました。リハーサルや本番舞台裏を見て思うところがあったようで、次は自分も関与して何とかしたいと言うんですね。このアクティビティに「Fire up!」された人、心を動かされた人がいたということがめちゃくちゃ嬉しかった。あとは、実行委員の中にももう一回やりたいという人がいるよね。

出田:私はやりたいです。めちゃめちゃ自分自身が成長できたからというのが理由です。失敗もあったけど、想像以上のものができました。ただ、集客を始め改善すべき課題も見つかっています。次回はその課題をクリアしていけばもっといいものになると思っています。

出田隆嗣さんは次回開催でも実行委員として関わることを力強く宣言出田隆嗣さんは次回開催でも実行委員として関わることを力強く宣言

坂田:出田さんはどんなところが成長したと思う?

出田:思ったことは言う、言ったら実行に移す、ということですね。これは坂田さんに言われたことです。思っているだけでは何も前に進まない、思ったことを行動に移す、それが失敗でもいい、次につながるから、とそんな感じでした。社内でちょっとした問題があってどう報告しようか悩んでいたのですが、それを思い切って口にしたことで、問題が解決に向かって動き出したんです。少なくともカルチャーフェスの前よりは確実に成長しています。

坂田:めちゃくちゃ嬉しい成長ですね、それは。このイベントで実現したかったことを体現してくれてるんで、実行委員は今年限りで大丈夫です(笑)。

戸田:私もまたやりたいです。今回の気付きを次回に生かしたいし、本来業務以外のところでこんな仕事に携われて楽しかったです。カルチャーフェスを通じて新しい何かに出会い、やってみようかなという人が出てきたら、その人の人生を少し豊かにできたのかな、役に立てたのかなと感じられますし。

出田:確かに戸田さんの言う新しいきっかけづくりというのもあります。あとは、カルチャーフェス自体が会社の中でコミュニケーションツールになったところもよかったと思います。カルチャーフェスをきっかけに、これまであまり接点のなかった人との関わりが増え、それが仕事にもいい影響を及ぼしていると感じます。

編:カルチャーフェスティバルを通じて、どんな会社にしていきたいと思われますか。

戸田:センコーグループは現在約180社の企業グループです。自社以外の会社はもちろん、他部署でもどんな業務を行っているか、どんな人がいるのか知る機会がありません。組織の壁を越えてコミュニケーションを取れるようになったらいいなと。カルチャーフェスはそのきっかけとなるツールになると思います。

出田:センコーグループの中で自分から率先して動き、周りを巻き込んで進めていく、そんな人が増えていけば、いい会社、明るい会社、雰囲気のいい会社に繋がっていくんじゃないかなと思うんです。カルチャーフェスをきっかけに、アウトプットできる人が一人でも増えたらいいと思いました。

豊泉:カルチャーフェスを通じてコミュニケーションの幅が広がりました。私たちの音楽を聴いた人が音楽って楽しそうだな、やってみたいと思ったり、新しい趣味を始めようと思う人が増えたらうれしいですよね。新しいことに挑戦するといいことがあると気付けたら、仕事上でも会社を良くしていこうとか、自分自身の人生楽しくしていこうみたいなところにうまくつながっていくのではと思います。

坂田:文化スポーツ推進プランに込めた通り、「笑顔あふれる未来をつくる」というのが最終ゴールです。今回のカルチャーフェスで、実行委員会のみなさんを見て思いを強めたのですが、笑顔でいる、ご機嫌でいるためには、「自分で決める」ことがものすごく大事なんじゃないかと思うんですね。自分はどうしたいのかを一人ひとりが考えて、「よし、こうしよう!」と自分で決めて、それを発信して、行動に移す。それができると仕事も面白くなるし、結果笑顔で仕事に向き合えるんじゃないかと思っています。自分で考えて、自分で決めて、自分で動く社員が増えている、そんな会社になれるような仕掛けをどんどんしていきたいと思っています。

編:ありがとうございました!

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筆者

那須 由枝

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