2018/04/02
近年、多くの企業で実施されているファミリーイベント。
実施が増える背景には会社・家族・社員の相互理解をうみ、ダイバーシティの促進や働き方改革につながるだけではなく、社内のコミュニケーション活性化を狙いたいという企業の思惑があるようです。
2017年12月に東急住宅リース株式会社が実施したファミリーイベントは、総務が事務局となり、実行委員会として各部署から社員を巻き込みました。実行委員会はイベント参加者をもてなすホストとして活動し、事務局はイベント制作会社と協働し、ハード面を作りこむ部分を担当しました。
今回は、実行委員会の方、事務局の総務の方にファミリーイベントがもたらす効果についてお話を伺いました。
編集部(以下、編):今回が初めてのファミリーイベントと伺いました。実施に至った背景を教えてください。
事務局(以下、事):当初、ファミリーイベントをやることが決まっていたわけではないんです。
東急住宅リースは、2015年4月に3つグループ会社(東急コミュニティ―、東急リバブル、東急リロケーション)の事業を統合して営業を開始しました。
統合前の各社は、それぞれで運動会などの社内イベントを行っていた実績があります。統合直後にも「社内コミュニケーションを促す企画をやりたい」と話がでていましたが、昨年までは統合による業務に追われ、実現には至っていない状況でした。
事務局を務めた総務の神田さん
営業開始から3年が経ち、ようやく会社として落ち着いてきました。そこに「部署間の連携を増やしてほしい」と北川(代表取締役社長)より打診があり、社内コミュニケーションを促す企画を実施しようという動きからファミリーイベント実施に帰着しました。
編:さまざま社内コミュニケーション企画がある中で、なぜファミリーイベントをご選択されたのでしょうか。狙いを教えてください。
事:今回の企画の狙いは、様々なバックボーンを抱える社員が、自らの会社を理解することでエンゲージメントを高めてもらうことでした。イベント実施にあたって、総務でブレストを行いながらエンゲージメントを高めるためにはどのような企画が有効かを議論し、普段の業務ではなかなか知る機会が少ない他部署の仕事や人を改めて知ってもらうために「人を知る、仕事を知る、会社を知る」というテーマで企画することとしました。
その後、どうしたらこのテーマを実現できるのかを外部のコミュニケーションパートナーとも相談をしながら、社員だけではなく社員家族をも巻き込んだイベントが効果的と判断し、ファミリーイベントを行うことにしました。
例えば、普段は部下達に厳しい上司が優しいパパの一面を見せることで、「人を知り」社員間の相互理解を深め、「パパ、ママの会社っていいね!これからもお仕事頑張って!」と家族から第三者的に評価をしてもらうことで、社員に会社への愛着や仕事への誇りをもってもらうきっかけに繋げる狙いがありました。
事務局を務めた総務の藤井さん
編:イベントを準備するにあたり、総務以外の社員さんを巻き込まれた理由は何でしょうか。
事:ファミリーイベントは、任意参加のイベントのため、ゲストになり得る30~40代の社員は積極的に参加してくれると想定していましたが、子育て中ではない若手等の社員は参加しにくくなる懸念がありました。総務が主体で行う全社イベントであり、若手社員も積極的に巻き込んでいきたいと思い、社内各部署からメンバーを募り実行委員会を立ち上げることにしたんです。
実行委員会メンバーにはこのプロジェクトを通して「人を知る、仕事を知る、会社を知る」というテーマを、誰よりも体感してほしいという想いもありました。また、イベント当日だけの一過性で終わらず、通常業務においてもこのプロジェクトで得た人脈を活かし、部門を超えた新しい連携を生みだすことを期待していました。
編:ファミリーイベント当日は、どのようなプログラムを行ったのでしょうか。
事:午前は本社ビルにてクイズを交えたオフィスツアー、午後は本社ビル近隣のホテルにて懇親会を行いました。
【午前プログラム】 10:30~12:30
①『参加者受付』:保険申請をチェックし、パンフレットなどの配布物をお渡しし、受付対応者が当日の流れを簡単にご説明
②『パパ・ママの席を探そう』:風船を手掛かりに、パパ・ママの席を探す
③『名刺作成』:人生で初めてのマイ名刺を2枚作成
④『オフィスツアー』:クイズチャレンジ、お仕事インタビュー、記念撮影
カラフルなバルーンで装飾されたオフィス内
【午後プログラム】13:00~14:30
①『社長挨拶』:参加者へ感謝のメッセージ
②『お仕事紹介ムービー』:実行委員が作成した仕事風景のスライドショー
③『クリスマスツリーメッセージ』:クリスマスツリーにメッセージカードを飾る
④『集合写真撮影』
⑤『お見送り』:実行委員会、事務局にてアーチをつくってお見送り
クリスマスの装飾を施した、本社近隣での懇親会での様子
実行委員会には『クイズチャレンジチーム』『お仕事インタビューチーム』『受付・スライド作成チーム』の3つに分かれて活動してもらいました。
編:では、実行委員会リーダーの3名に実際の活動についてお話を伺いたいと思います。
初めてのファミリーイベントにホスト役として参画されて、企画や当日の運営をするうえで気を付けていたことはありますか。
近藤さん(以下、近):私は『お仕事インタビューチーム』で、お子さんがインタビュアーとなり、仕事内容について社員に質問をするというコンテンツを担当していました。
実行委員会チームリーダーの近藤さん
質問内容をあらかじめ記載した質問カードを作成し、お子さんにカードを選んでもらう形式です。
社員が質問に答えるときに、ビジュアルがあった方がお子さんには伝わりやすいので、A3の厚紙に仕事内容が分かるような画像をいれたフリップを作成しました。裏側にはカンペを準備し、質問に対する答えの統一化を図りました。そうすることで、どの社員が回答する側になってもきちんと説明できる状態をつくるようにしていました。
おもちゃのマイクをもって、お子さんと目線を合わせてインタビューする近藤さん
栗原さん(以下、栗):私は『クイズチャレンジチーム』を担当しました。 準備の段階では、子どもが分かりやすい、さらにパパ・ママを巻き込むことができる企画を意識していました。
実行委員会チームリーダーの栗原さん
クイズは、「東急住宅リースのロゴマークはどれでしょう?」といった、ビジュアルで伝えやすい内容にし、答えを3~4択式で、お子さんに手をあげて答えてもらう形にしました。その方が、みんなで声を出しやすく、お子さんたち同士で仲良くなれると思ったからです。
元気よく手を挙げてクイズに参加しているお子さんと、笑顔で対応する栗原さん
当日は、答えが分からなくて困っている子がいたら、「パパ・ママに聞いてもいいんだよ」と促してあげることで親子の交流も活発化し、親同士の交流も自然と生まれていたと思います。
近:もっとも重要視していたのは、参加者のみなさんに楽しんでもらうことだったので、できるだけ明るく楽しく、大きな声でゆっくり話すことを心掛けました。
ちょっとシャイな子にも「どうしたの?」「一緒に読もうね」と、一人ひとりに気を配ることで自然と盛り上げることができました。
編:一人ひとりに気を配るために工夫していたことはありますか?
近:ホスト側は心に余裕を持つことが必要だと思います。チームメンバーで議論を進める中で実際にやってみないと分からない部分もあるよね、という話になり、当日の緊張をほぐす意味も兼ねてロールプレイングを行いました。
ホスト役と子ども役に分かれたのですが、子ども目線になってホスト役の動きを見ると、「フリップは下げた方が子どもの目線からは見やすいんじゃない?」「声が小さいからもう少し大きく」といった、実際にやってみないと分からない改善点が見つかりました。
お互いに当日の動きを確かめ合ったことで、本番では自信と余裕をもって子どもたちに向き合え、笑顔のある対応につながったと思います。
編:当日、ゲストからはどのような反響がありましたか。
加藤さん(以下、加):お子さんからは「楽しかった」「ありがとう」「クイズのお兄さんが面白かった」と言ってもらえました。社員の方からは「いい休日になったよ」、ご家族からは「主人の会社を知ることができてよかった」と、ポジティブな意見を多くいただきました。
当日の感想を星やハートのカラフルなカードに書き、クリスマスツリーにオーナメントとして飾り付け
不動産管理業はどんな業務なのか、社外の方は具体的に想像できないところがあると思いますが、実際に見たり聞いたりしたことで、相互理解につながり、当初の「人を知る、仕事を知る、会社を知る」という目的を達成できたと思います。
実行委員会チームリーダーの加藤さん
近:私は、3歳の女の子から似顔絵をもらいました。自分とその子の妹さんが一緒に描かれた絵で、とても嬉しかったですね。
実際にお子さんからもらった似顔絵
編:ファミリーイベントを終えて、社内で変化したことはありましたか。
栗:部署を越えたコミュニケーションが増えたことが、何より大きな変化です。今回の実行委員会を通して、今まで業務で関わったことのない社員と知り合うことができ、社内での交流が広がりました。このプロジェクトが終わったあとも、業務で困ることがあった際、気軽に相談ができるようになりました。
近:私は、上司のイメージが変わりました。普段は厳しい上司も、お子さんの前では優しい表情をされていて、新たな一面を知りました。イベント当日は上司のお子さんや奥様とも交流することができ、上司が優しくなった気がします(笑)。
編:今回の実施を踏まえて、次に活かしたいことはありますか。
栗:今回問題にはなりませんでしたが、想定し得ない危険にもっと気を配りたいなと思います。例えば、普段は通路に置物があって角が出っ張っていたり、通り道を狭くしていたりします。小さなお子さんにとっては、目線と同じ高さに角があることになるので、大変危険ですよね。
加:仕事をしている社員との温度差にも注意しなくてはいけないと思います。弊社は土日も仕事をしている社員がいるので、事前の告知やイベント自体の設計も考慮するべき点だと思います。
編:事務局のみなさまは、期待していた効果を感じられましたか。
事:このプロジェクトを通して新しい交流が広がり、業務でも役に立っていると聞いています。イベントを通して、これまで知らなかった社員を知ることができ、「ファミリーイベントの人でしょ?」と広く社内で自分を知ってもらうきっかけにもなっていました。
また、今回は社員家族に向けて、「東急住宅リース」という存在をより知ってもらえた良い機会だったと思います。
小学生の私の子どもは私(パパ・ママが働く)の会社や仕事に関心をもっていますが、改まって不動産という仕事を教える機会がありませんでした。ファミリーイベントを通じて不動産という仕事に触れてもらうことで、社員のお子さんに「不動産っていう仕事があるんだ!」と知ってもらえたり、その中に東急住宅リースという会社があって、「パパ・ママが活躍しているんだ!」と思ってもらえたり、そういうアピールができたことも、今回やってよかったと思える点です。
「将来の夢は、何ですか?」という質問に対して、お花屋さんや学校の先生など身近な職業を答えることが多いと思いますが、同じように不動産の仕事を身近に感じてもらえたら嬉しいな、と思います。
弊社はこれから「東急住宅リース」という“カラー”をつくっていく段階です。
今回実行委員会メンバーが貢献してくれた活動は人事評価の対象としており、会社としても社内コミュニケーション企画の継続的な実施を推進しています。
今回のファミリーイベントをきっかけに、社員同士のコミュニケーションがうまれる仕掛けづくりを、これからどんどん行っていきたいです。
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筆者
三浦蒔子