2016/09/09

働きがいを生みだす信頼と信任。VSNが実現する企業変革【前編】

約3,000名の正社員エンジニアを擁し、さまざまな企業の技術部門にエンジニア派遣を行っている株式会社VSN。「IT・情報システム分野」「メカトロニクス・エレクトロニクス分野」「バイオ・ケミストリー分野」の3分野を中心に事業を展開しています。

VSNを語る上で欠かせないのが『バリューチェーン・イノベ―ター』というサービス。これはVSNの造語で「技術提供のみならず、顧客の事業課題をも解決していくコンサルティングサービス」の名称であり、同時に社員が実現するべき姿を表している取り組みです。

今ではサービスの核となっているバリューチェーン・イノベーターですが、もともとはリーマンショックによる経営危機の最中、選ばれし数名の社員によって経営者不在の中で定められました。

バリューチェーン・イノベーターはなぜ生みだされ、どのように浸透していったのか。その舞台裏と今後の展望について、代表取締役社長の川崎健一郎さんにお聞きしました。

編集部(以下、編):耳なじみのないバリューチェーン・イノベーターという言葉ですが、これはどのようなものなのでしょうか。
「VSNは何屋ですか?」と問われたら「バリューチェーン・イノベーター屋です」と答えるような、私たちの核となるものです。これはマイケル・ポーターが提唱した“バリューチェーン”と、改革者を意味する“イノベーター”をつなげた造語です。この言葉が誕生した背景は、私たちにとって非常に重要です。

弊社は技術者派遣を行っていますが、技術者をすべて正社員として雇用し、お客様先に派遣しています。この業界は稼働率(派遣率)90%が採算ラインですが、2008年のリーマンショック当時、稼働率が95%から60%近くまで低下したことがありました。

当時は世の中がひっくり返って、どの企業も人余りを起こし、弊社の経営も厳しい状況でした。そこで次なる方向性を定めるべく、エンジニアや営業など、各部門のエースとされる16名を選抜して、事業改革プロジェクトをつくったのです。

私から16名に与えたテーマはただひとつ。「今後、VSNは何屋になるのか? これまで通り、技術者派遣屋でいくのか、新たなビジネスを展開するのか」でした。

彼らは、VSNという船が向かうべき旗印を立てるんだ、という強い想いから『フラッグシップ』というプロジェクト名を命名。8ヶ月間、じっくり時間をかけ議論を重ねて出した答えが『バリューチェーン・イノベーター』でした。

しかし、この議論、最初の数ヵ月間は平行線だったようです。

 

編:「だったよう」ということは、川崎さんはその場に参加されていないのですか。
参加していません。何を決めたとしても、日々頭を使って、身体を動かして実現していくのは全て現場にいる彼らです。自分たちが「実現したい」と思うものを生みだしてもらいたかったので、経営陣は一切参加しないと最初から決めていました。

選抜した16名は当時のエース。役職や年齢は関係なく、弊社の社員で最も優れていると思われる代表選手たちです。その彼らが突き詰めて出した答えが、我々が届きうる最高のレベルなのだと考えていました。

 

編:長く続いていた議論が平行線から脱したきっかけは何だったのでしょうか。
メンバー16名のうち4名はお客様先に派遣中のエンジニアだったのですが、きっかけを生んだのは彼らの実体験でした。

というのも、リーマンショック当時、派遣業界は同業他社も含めて多くの人員が派遣契約を次々と解約されており、企業によってはプロパー社員の方までがリストラされているような状況でした。

議論を進める中で、その4名がふと「なぜ自分たちは解約されないのか?」ということに気づくわけです。同業他社の自分より技術力の高い人たちが契約を解約されている。場合によっては正社員もリストラされている。

それでも自分たちが技術者として、派遣先で業務をし続けられている理由は何なのか。無意識で行動している何かが、お客様を惹きつけているのではないか。そこに気づき、日頃の行動を分析していったのです。

そして分析の結果、”お客様の事業目標やあるべき姿”を常に把握し、そこに到達できていない理由は何かを具体的に考え、解決に向けて奔走する、という共通の行動が見えてきました。

場合によっては、お客様先のA部長とB部長の反りが合わず重要プロジェクトが頓挫しているときには、ふたりを説得しながらプロジェクトを円滑に推進する、というところまでコミットしていました。一人の派遣社員が、です。

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編:そこまで入り込んでいると、厳しい環境のときだからこそ、むしろ残ってほしい存在になっていそうですね。
余計に必要でしょうね。ですので、そうした彼らの行動を、VSNという組織単位でサービス提供できるようになれば、これはものすごい価値になるのではないか。そう考えていったようです。

サービス名称は100個くらい考えたそうですが(笑)、「お客様の事業モデルに改革を起こす」、つまりバリューチェーンにイノベーションを起こす存在だよね、と決まったのが『バリューチェーン・イノベーター』です。

単に技術力を提供するだけではなく、問題を発見し、解決さえしてしまう。まさにコンサルティングです。相談に乗ってアドバイスをして終わりではなく、解決策を考えながら自ら実行して完了してしまうことが、私たちの独自性です。

 

編:リーマンショックという危機に、これからVSNが進む方向性を新しく決めていく。そうした重要な局面で、経営陣も外部のコンサル企業も参加せず、社員の手に任せるというのは、非常に勇気のいることだったのではないですか。
迷いはありませんでした。私もこの会社に新入社員として入社し、ITバブルの崩壊という経営危機を経験しました。当時も同じような事業改革プロジェクトがあり、私はリーダーシップを発揮するような役割を担っていました。

そこで実感したのが、行く先を自分たちで考えて創りあげていくことの大切さです。先程も申しあげたように、最後に実行するのはどこまでいっても自分たち。自分たちで考えないと、最終的に気持ちが入らない、魂が入らないと考えています。

ですので、かつて自分なりに感じた“自分たちで考える”ことの重要性を一番に置いた決断でした。

 

編:今回の事例のように、任せると応えてくれる風土がもともと根付いていたのでしょうか。エンジニアのみなさんは普段、お客様先でお仕事をされていると思います。そうした働きかたのときに、自社へのロイヤリティを醸成するは非常に難しいのではないかと予想しているのですが。
お客様先で常駐して働いているので、コミュニケーションはものすごく大変です。会社を感じる機会をなかなか与えられませんからね。そこで対策として取り組んだことのひとつが組織化です。

具体的には、すべての社員がチームの一員となれるように、エンジニアの中にチームリーダー、ユニットリーダー、マネジャーと、職位をつくることで、自分たちで現場をマネジメントできる体制を構築しました。

同じ派遣先に5~6名いる場合はマネジメントしやすいですが、物理的に離れている派遣先を抱える場合のマネジメントは相当難易度が高く、立ち上がりは大変でした。「こんな遠隔で、マネジメントはできません」と、そういう具合です。

そうした声には「難しさはわかる。でも遠隔マネジメントができるようになったら、君はスーパーなリーダーになれるぞ。今後ますますグローバルな環境で、国をまたいで仕事するようになるのに、ちょっと拠点が離れているから見られません?そんなマネジメント能力では将来的に全く使いものにならなくなるぞ。逆に今のうちに経験できるなんて有り難いじゃないか」と伝えていました。

当人は半分納得、半分不満を抱えながら頑張ってくれました。似たような苦悩はたくさんありましたが、それらを乗り越えたからこそVSNのマネジメント能力は非常に高くなっていると思います。

情報共有会も自発的に始め、ユニットをまたいだリーダー同士のコミュニケーションも活発化しています。

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働きがいを生みだす信頼と信任。VSNが実現する企業変革【後編】はこちら(https://cd.zeroin.co.jp/cappy/vsn02/

筆者

中島浩太

株式会社ゼロイン CAPPY編集部
2008年、ゼロインに新卒入社。総務アウトソーシングや社内イベントの企画・設計を担当。新卒採用担当を経験したのち、社内広報とマーケティング組織の立ち上げに携わる。CAPPYでは編集、インタビュー、ライティング、撮影まで担当しながら、各社の魅力的な取り組みを発信中。
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