2020/09/02

自然発生ではじまり、定着したミクシィの1on1!企業文化を育み、アップデートする秘訣とは

上司と部下が1対1で行う面談、1on1ミーティング(以下1on1)。これまで面談といえば、半年に1度程度の人事評価面談が主流でしたが、変化が激しく、先の見えにくい中で、より短いサイクルで定期的に行われる1on1が注目されるようになっています。

とはいえ、そのやり方は企業によって様々。制度はあっても、現場でうまく運用できない、なかなか定着しないなど、悩まれている方も多いのではないでしょうか。

SNSの“mixi”をはじめ、スマホアプリの“モンスターストライク”や、ライフスタイル、スポーツ領域まで広く事業を展開する株式会社ミクシィ。どの事業も、コミュニケーションを通じた価値提供を大切にしているそうです。そんなコミュニケーションを大切にする会社だけに、1on1も特徴的。なんと始まりは自然発生、それがいつのまにか定着し、このコロナ禍においても進化を続けているとのこと。そこで今回、人事の杉村さんと村上さんにお話を伺いました。

編集部:1on1は人事制度ではないそうですが、どのような経緯で始まったのでしょうか?

杉村さん:最初は2007年頃らしいのですが、誰に聞いても定かじゃなくて(笑)。それくらい自然発生的に始まったようです。それが現場からの口コミで、「これはいいぞ」という声で広がっていって。当時は社員が300人くらいだったかな。いまは1000人弱位ですが、アンケートをとると9割程度のメンバーが実施しているという状況になっています。

村上さん:もともと横の関係性も非常に強い会社なので、一つでもいいよという実績や声があがると、実際にどんな風にやっているのかなとなって、広がっていくんですよね。

編:具体的には、どのように1on1は運用されているのでしょうか。

杉村さん:一般的にやっているのは、マネジャー(課長層)とメンバー、部長とマネジャー、社長と役員など、上司と部下で。あと、マネジャー同士や部長同士だったり、別の部署のメンバーとだったり、それぞれ必要に応じてやっている感じです。私も人事と関係ない部署の組織開発系のメンバーと1on1をやっています。

そのメンバーは組織開発に未経験でチャレンジしようとしていて、その相談にのったり。同じグループではないので、評価もないし、1対1でアンオフィシャル感もあるので、よりフランクに相談できるんじゃないですかね。さらに横同士の場合だと、オフィシャルな定例の場ではなかなか言えないような、ぶっちゃけた会話が多いと聞いています。

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1on1を実施しやすいよう2名用の会議室を各フロアに用意

村上さん:ほとんどの方が週1回、30分程度とってやっています。上司と部下どちらから設定してもいいし、時間の使い方も自由です。ただ、その時間自体は、マネジャーのものではなく、メンバーのものなので、メンバー側がアジェンダ設定をして、メンバー自身が様々な意思決定をする場となるように、アドバイスしています。

編:なるほど。人事としては、1on1に対してどういう関わり方をしているのですか?

杉村さん:制度ではないものの会社として何も支援していないところに課題を感じて、昨年からいろいろ取り組みを始めました。

マネジャーから、「自分のやり方が正しいのかわからない」「他の人がどんなふうに1on1をしているのか知りたい」といった声があったので、まずつくったのが現場マネジャー同士や部長同士での共有の場です。有志を集めて、こんな風にやっているというところを教えあって。そこで見えてきた課題として、テクニカルなところもあったので、「アカデミア」という研修を支援策として立ち上げまして、昨年は5回やりました。

そこでお伝えしているポイントは大きくは2つで、「傾聴」と「承認」です。

傾聴については、みんな知らないわけじゃないのですが、話を聴くとはどういうことか、改めて基礎からお伝えしています。すると、確かにそうだった、自分は思ったほど傾聴できていないな、となる。30分のうち7割位、相手に話をさせられるとベストなのですが、いかに自分が話しすぎていたかを再認識するわけです。後日、待つことを覚えたら、相手のちょっとした変化に気付くようになったといった声もありました。

もう一つ、難しいのが、承認の行為です。これは決して“ほめる”ではなくて、普段からメンバーの動きを見て、ポイントポイントでちゃんと労い、声をかけていきましょうということです。あわせてその効果的なやり方とタイミングをお伝えしています。

実際アンケートでも、部下側が有意義な時間であると満足感が高かった1on1は、仕事の承認や労い、キャリアについての対話で、単に業務相談の場を求めているわけではないことがわかりました。このあたりを上司側が意識的にやれるようになると、より充実したものになると感じています。

マネジャー同士で1on1の悩みやノウハウを共有し合う共有会

マネジャー同士で1on1の悩みやノウハウを共有し合う共有会

編:今回のコロナ禍で一気にリモートワークに移行したと思いますが、やり方など何か変化はありましたか。

杉村さん:基本は対面と変わらずですが、1on1ではカメラオンにしましょうとはお伝えしています。その際、オンラインだと思っている以上に、自分が相手にどう見えているのかがわかりにくいので、明るさだったり目線だったり、気を付けた方がよいポイントをまとめて共有しました。

村上さん:マネジャーや役職者には、ノンバーバル、非言語コミュニケーションに注意しましょうということは言っています。オンラインの場合、大人数になると、声を出すタイミングって難しいじゃないですか。そこを「前のミーティングで何か言いたそうだったけど何かあった?」みたいな感じで、1on1の場で補填するとか。口を開きかけたとか、一瞬を見逃さず、声をかけていくというのが大事ですね。

あと最近は、特に入社者に対しては、上司だけでなく、メンバー一人ひとりとも1on1の時間をとってしっかりと自己紹介しあうことをお勧めしています。大勢の中だとなかなか聞きづらいですからね。この人はこういう経験があるんだ、こういう時に頼ろうというようにわかってくるので。

編:中途で入社された方も、すんなりこの文化に入っていけますか?

杉村さん:1on1が当たり前すぎて、こんな感じなんだと自然に身に付くみたいですね。1on1の前提としてもお伝えしているのは、信頼関係を築くことです。何もない状態でいきなりプライベートの話とかできないですし。仕事の話でも、一緒の時間を共有しながら、丁寧に対話していけば、自然とそういう空気になっていくのかなと。

村上さん:コミュニケーションをつくる会社で、そこに興味がある人が集まっているので、人に関わっていくということには共感があるのだと思います。社風というか。

杉村さん:私も中途入社ですが、入社当時思ったのは、一人ひとりの受容性が非常に高いなと。役員をはじめ、相手を受け止める力に長けている人がすごく多い。

村上さん:役員もSlackで気軽に発信してくれて、メンバーもそれにダイレクトにもっとこうした方がいいといった返信をしていて。社長もそれを見て、「どんどん意見を言って」と発信しています。それくらい風通しがいい。

人事戦略グループ マネージャー 杉村元規さん(左)と人事戦略グループ人材育成チーム リーダー 村上沙妃さん(右)

人事戦略グループ マネージャー 杉村元規さん(左)と、人事戦略グループ人材育成チーム リーダー 村上沙妃さん(右)

編:なるほど。そういった企業文化をつくっていくためには何が大切なのでしょうか。

杉村さん:社員を信頼していることだと思います。この会社に入ってすごいなと感じたことは、管理型ではなくて、会社が一人ひとりに任せ、委ねている。この会社、性善説にふりきっているなって。

人事としても、制度化することで阻害要因にならないようには気をつけています。1on1もやりたい人が自由にやれる気楽さがある。そこは失っちゃいけないんだと思います。あくまで支援。自発性を大切にしておかないと急に息がつまってしまうので。私たちは黒子に徹して、質をあげていくことを意識しています。

村上さん:マニュアルとか、こうやりなさいだと一斉にみんなひいちゃうので。やりやすい環境は整えるけど、型にははめない。このコロナ禍でも、会社として働きやすい環境をつくるための構築費は支援しつつ、その中身は社員に委ねています。今のところ、リモートワークへの移行は大きな問題もなく、順調に推進できています。

編:今後は1on1や企業文化をどう発展させていきたいですか。

杉村さん:実はこれまで社員育成など、会社として体系的に提供はできていなくて。仕組みがなかったからこそ、1on1が発達したところもあるのですが、そのベースや自発性は大事にしつつ、会社として大事にしていることを、意欲ある人たちが学べる場を提供していきたいと考えています。

あと最近、課題として見えてきたのが、変化に対応するためとはいえ、すぐに組織が変わることで、方針・戦略が伝わりづらくなっているということです。そこで人事も入りながら、方針を落としていくというサポートをしています。

村上さん:オンラインがベースになったことで、キックオフなども参加しやすくもなっていて、アーカイブ化することで全員に情報は届けやすくなっている面はあって。ただ、入社時期やタイミングによって、一斉に伝えても伝わるものが違ってきます。方針がうまく伝わっている組織は、そこを1on1で、その人のキャリアに応じて背景から丁寧に伝えるなど、一人ひとりにあわせて細やかなフォローをしています。今後はさらに、全体の情報共有の場と1on1をうまく掛け合わせて、よりよいコミュニケーションをつくっていきたいですね。

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