インナーブランディングパートナーとして、人・組織の“ありたい姿”の策定と実現を支援する株式会社ゼロインが、従業員エンゲージメントの高い組織づくりに役立つノウハウをお届けします。
この記事では、コーポレートブランドの策定・浸透サポートやインターナルコミュニケーションのプロジェクトを多数手掛ける三宅が、インナーブランディングの最前線をお伝えします。
2023年から「人的資本」の開示義務化が検討されていることで、人的資本経営がにわかに注目を集め、その重要性が認識されはじめています。経済産業省では人的資本経営を次のように定義しています。
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
従来の経営では、人材を「資源」と捉え、人件費などを「コスト」として抑制・管理してきました。それに対して、人的資本経営では、人材は価値の源泉として「投資」の対象であり、個人の自律性が尊重されます。
背景には、産業構造や価値観が変化する中で、企業価値における無形資産/非財務資本の重要性が高まっていることが挙げられます。変化が激しく不確実なVUCA時代では、特に社会価値やイノベーション創出の源泉となる、ブランドや経営理念、人材や組織カルチャー、技術力や顧客ネットワークといった「知的資産」が不可欠です。そして、それらの知的資産を生みだし、育んでいく源泉となるのが「人的資本」なのです。
その意味で、知的資本経営と人的資本経営はひとつながりです。『人材版伊藤レポート』に記載された「〔視点1〕経営戦略と人材戦略の連動」は「ブランド戦略と人材戦略の連動」と言い換えることができます。
「ブランド戦略と人材戦略の連動」は、
などが取り組みの方向性として挙げられます。
これらは、動的な人材ポートフォリオや知・経験のD&I、多様な働き方など、図の〔共通要素〕にもつながるものであり、従業員エンゲージメントはこうした従業員の体験を通じて高まっていきます。
『人材版伊藤レポート』における「〔視点2〕As is – To beギャップ」は、ブランドや企業文化の「ありたい姿」をもとに、従業員エンゲージメント調査や社内インタビュー調査を通じて把握していきます。このとき、社内にどのような行動やシーンがあれば「ありたい姿」に近づくのか、増やしたい行動を設定しておくことがポイントです。
そして、増やしたい行動を生みだすために、社内でどのような機会や場づくり、従業員体験をつくっていく必要があるのか、中長期や年間通じたコミュニケーション戦略を立てて施策を実行していけると、より効果的です。
このとき、機会や場づくりで重要なことは、プロセスへの参加を促して従業員を巻き込んでいくとともに、その動きを積極的に表出・社内共有していくことです。また、従業員一人ひとりの「やりたい」という思いやワクワク感といったエモーショナルな部分を大事にすることも必要です。
パーパスやビジョン・バリューなどのブランドメッセージにもとづいた、一貫した従業員体験のストーリーづくり、継続的な取り組みが、「〔視点3〕企業文化への定着」を促進していきます。これらは、ゼロインがインナーブランディングの『3E – 4C』として推奨することと共通しています。
『人材版伊藤レポート』「〔視点3〕企業文化への定着」で着目される企業文化ですが、ゼロインは企業文化の中でも「ともに学び合う文化」が特に重要だと考えています。なぜなら、VUCA時代においては、イノベーションを生みだし、知を混ぜ合わせながら挑戦と改善をし続けていくことが企業の発展・成長に不可欠だからです。
この「ともに学び合う文化」の醸成に向けて、もっとも取り組みやすく効果的なのが、ブランドを軸にした「アワード」の開催です。次回は、人的資本経営に不可欠なアワード設計の考え方について、具体的に解説します。
この記事の著者
三宅 柚理香
株式会社ゼロイン シニアコンサルタント
1997年からリクルートグループにおいて人材領域を中心に採用広報の企画・制作に携わる。2010年、株式会社ゼロインに入社。インターナルコミュニケーションのコンサルティング、コーポレートブランドの策定・浸透サポートなど多数プロジェクトに従事。現在はシニアコンサルタント 兼 コミュニケーションデザイン総研責任者。