カルチャーにマッチするブランドアワードのつくり方

インターナルブランディングパートナーとして、人・組織の“ありたい姿”の策定と実現を支援する株式会社ゼロインが、従業員エンゲージメントの高い組織づくりに役立つノウハウをお届けします。

この記事では、コーポレートブランドの策定・浸透サポートやインターナルコミュニケーションのプロジェクトを多数手掛ける三宅が、インターナルブランディングの最前線をお伝えします。

前回の記事(「ともに学び合う文化」を醸成するブランドアワード)では、企業におけるブランディング推進の要となる、「ブランドを軸にしたアワード」の意義やあり方について紹介しました。今回は、カルチャーにマッチするアワード設計の具体的なポイントや、より多くの従業員を巻き込み盛りあげるためのプロセスについてお伝えします。

「何を評価するか/しないか」は経営メッセージとして受け取られる

アワードは、エントリーや審査・選出、表彰などの称賛施策、内容共有といった一連のプロセスで構成されています。目的や組織文化にもよりますが、アワードを設計する際は、概ね「エントリー」「審査・選出」「称賛と共有」という3段階を、どのような観点で検討・設定していくかがポイントになります。

ブランドアワードでよく設定される賞には、「ビジョン・ミッションやパーパスの実現度」や「バリューの体現度」などが挙げられます。これらの賞で、「成果が出ていること」を重視するのか、それとも「プロセスにおける体現」を重視するのか、評価軸はよく迷われるポイントです。

業績表彰であれば数字の多寡での評価も良いのですが、ブランドアワードにおける「成果」においては、単に業績の大きさと結びつけてしまうのは早計です。ビジョン的な観点では質的な成果があったか?、パーパスであれば社会的インパクトの度合いはどれほどか?など、短期的な数値には表れない成果も拾いあげる評価軸の導入をおすすめします。

「何を評価するか」「何を評価しないのか」は、エントリーや審査のベースとなるだけでなく、「会社・組織として何を大事にするのか」「従業員に推奨する行動はなにか」といった経営メッセージとして従業員に受け取られます。このメッセージは従業員の行動指標の一つとなり、組織文化にも影響する要素です。

評価軸を検討する議論は、議論そのものがブランド理解や共通認識の醸成にもつながります。安易に決めず、しっかりと検討していきましょう。

自薦か他薦か?ブランド観点で仕事を振り返る機会づくり

「エントリー」の設計において特に組織文化を考慮したいのが、「自薦」か「他薦」か(両方可の場合でも、どちらに注力するか)です。

自薦は、自らの仕事の価値をブランド観点で振り返ることができ、主体性や自発性、発信・共有の文化を育んでいくことができます。一方、他薦は、お互いの仕事を見て、表出・称賛し合う文化を強めていくことができます。この他者から自分の仕事を見られることは実は重要な要素で、他薦でアワードを実施する会社では「自分の仕事をきちんと見てもらえていたことが何より嬉しい」といった受賞者や被推薦者のコメントが多数ありました。

他薦の場合にはマネジメントが推薦者の役割を担うことが多いですが、ブランド浸透・推進フェーズにおいて、マネジメント層の関わり方やコミットメント度合いは非常に重要です。「メンバーの仕事をブランド観点で表出する」行動を推奨していくことは、マネジメントとメンバーの両者にブランド観点を醸成することができますし、アワードを盛りあげ、定着させるのに非常に重要なポイントです。マネジメントのコミットメントを高める観点でも、表彰式の場で推薦者に対して経営から感謝の言葉が述べるようにしましょう。

自薦でもマネジメントの関わり方は重要で、メンバーの仕事をブランド観点で振り返る面談機会の設定や、「あの案件は~の観点で非常に意義があった」とメンバーに気づきとエントリーを促すことで、他薦同様に文化を育むことができます。

エントリーシートは、あまりに要素が多いとエントリー自体のハードルが上がります。ハードルを下げるために簡易にすることも一つの選択肢ですが、そのシート自体が仕事を振り返るフレームになる、という観点もあります。審査時に重視したい観点を欠かさず盛りこむ必要もあるので、エントリー者と審査者のバランスを取りながら設計すると良いでしょう。

仕事のひも解きと共有のプロセスが、納得感や自分ごと化につながる

「審査・選出」のフローや基準は、授賞の納得度につながります。ブランドアワードでは、定性的な内容がどうしても多くなるため、審査は評価基準と判例をつくっていくことでもあります。

これは状況や環境によって変わっていくものですので、毎年見直す必要があります。なお、採点して点数の集計で決めることではなく、議論しながら決めていく審査プロセスに大きな意味があります。このときの議論の内容そのものが、経営・会社の目線や基準をつくります。

そして、議論内容や「何が特に素晴らしかったのか」の評価ポイントを公にして、従業員にメッセージしていきます。ブランドアワードは定性的評価のため「なぜ、あの取り組みが評価されたのか?」という疑問が生まれがちです。そうした疑問が解消されなければ、その取り組みやブランドアワード自体への納得感を得にくくなるので、きちんとひも解いて伝えましょう。

経営・審査側からの評価ポイント、映像などを活用した受賞案件の概要把握、クライアントからの声、本人のプレゼンテーションによる思いの共有、事後に社内報やアワード冊子などの広報物による特集企画、受賞者と双方向でやりとりができる交流会、など話者や施策(場やメディア)を変えながら段階的に共有することで、聞き手も自分ごととして追体験しやすくなり、学びの機会も増えます。

アワードや表彰式は、巻き込みながら継続することが重要です。立ち上げ当初は全員が手探りのため、迷いながらの実施になるかもしれません。しかし、意志を持って取り組み続けることで、エントリーや受賞案件の質、場の満足度、アワード自体のステータスは必ず向上していきます。

「称賛と共有」では、どうしても表彰式の演出に目が行きがちですが、演出の豪華さや新しさで栄誉感を演出するのは限界があります。「みんなの前で自分の仕事を語れる」「自分の仕事がブランドの体現であり象徴である」ことが従業員にとって最高の栄誉であり誇りとなることを目指して、ブランドアワードと文化づくりにじっくりと取り組んでみてください。

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この記事の著者

三宅 柚理香

株式会社ゼロイン シニアコンサルタント
1997年からリクルートグループにおいて人材領域を中心に採用広報の企画・制作に携わる。2010年、株式会社ゼロインに入社。インターナルコミュニケーションのコンサルティング、コーポレートブランドの策定・浸透サポートなど多数プロジェクトに従事。現在はシニアコンサルタント 兼 コミュニケーションデザイン総研責任者。

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