従業員の体験をデザインし、自律・自発の行動を促す。「プロミス策定」「社内アワード」事例

インターナルブランディングパートナーとして、人・組織の“ありたい姿”の策定と実現を支援する株式会社ゼロインが、従業員エンゲージメントの高い組織づくりに役立つノウハウをお届けします。

この記事では、コーポレートブランドの策定・浸透サポートやインターナルコミュニケーションのプロジェクトを多数手掛ける三宅欣広が、インターナルブランディングの最前線をお伝えします。

「従業員参画型」「従業員主体」で、体験をデザインする

編集部(以下、編):前回の記事「生みだしたい従業員の行動から、社内コミュニケーションをデザインする」では、企業文化をアップデートする必要があり、そのアップデートには継続的な体験のデザイン、中でも従業員をプロセスに巻き込むことで生まれる「やりたい」やワクワクの感情が重要である、という話がありました。最近のプロジェクトでは、従業員の体験をどのようにデザインしているのでしょうか。

コロナ禍以降、ますます先行きが見えにくくなる中で、パーパスやプロミス、中長期の経営ビジョンといった、目指す方向性や企業の核となる価値観をあらためて明確にする活動が多数起こりました。

そして、私たちゼロインがその策定をお手伝いしたお客様は、ほぼすべての会社で「従業員参画型」や「従業員主体」をテーマにプロジェクトを実施しています。その中から、策定・浸透活動を通じてカルチャーが変わり始めた会社の取り組みを紹介します。

事例1|策定プロセスで生まれるWILLや想いが企業文化を変える

まずは、周年を機にプロミス策定を実施したプロジェクト事例です。これまで明確な企業理念は策定されていませんでしたが、生活インフラを扱っており事業は安定しています。しかし、その安定性がゆえに、どこか受け身になりがちな企業文化でした。

そこで今回のプロミス策定は、一貫して従業員参画型・主体型のプロセスで実施しました。この会社において前例のない手法のため、やはり最初は積極的なコミュニケーションがなかなか生まれず、発言もまばらでした。しかし、論理よりも直感、「やりたい」というWILLを重視するワークショップ設計、ファシリテートを通じて、回を重ねるごとに対話が活性化。参加者一人ひとりの想いが少しずつ出るようになりました。

最後には、ワークショップ参加メンバーから経営陣にプレゼン、ディスカッションを行いました。プロミスに込めた想いや、その実現に必要な浸透施策を堂々と語るメンバーの姿や発言内容を受けて、経営陣も従業員の変化に驚いていました。

プロミス策定後は、策定メンバーが周年プロジェクトの実行委員となり、社内へのプロミス共有会や周年イベントといった場づくりを企画・実施しました。ここでも、経営から従業員へ一方的に伝える場ではなく、策定メンバー同士のトークセッションや参加者全員が参加できる簡易ワークなど、全社の巻き込みを意図して企画を進めました。

ともすると「参加型」のコンテンツは、研修のように見られがちです。最初は“やらされ感”や“いやいやの参加”でも、場の心理的安全性や対話の土台をいかにつくっていくか、企画の工夫によってどれだけ“ワクワク感”を醸成できるか次第で、前向きさや主体性が生まれ、変化していきます。ゼロインは、この“ワクワク感”をキードライバーと考え、目的・ゴール整理やプロセス設計、クリエイティブにこだわって仕立てています。

事例1|全社に広めるエバンジェリストが生まれるか

このプロジェクトによって生まれた変化は想像以上で、従業員参画型を想定せずに社長と進めていたプロミス実践の場づくり(地域企業と共創する取り組み)に、なんとメンバーの一人から「ぜひ一緒にやりたい」と手が挙がりました。自分の中にWILLが生まれ、それを発信する社員が出てきたことに私も感動してしまいました。

策定プロジェクトのプロデュースを通じて実感するのは、「従業員を巻き込んで策定するプロセスの中でこそ、当事者意識やWILLが生まれる」ということです。

浸透の初期フェーズにおいては、この当事者意識やWILLをどれだけ生みだせるかが非常に重要で、その後の浸透を左右します。エバンジェリスト(伝道者)となった従業員は、周囲とコミュニケーションを取りながら大きな巻き込みの渦をつくりだし、より多くの従業員に広める手助けをしてくれます。

事例2|バーチャル空間で創りだす参加感

次に、従業員の体験をデザインする観点で、共感やワクワク感を大事にプログラムやコンテンツを設計した事例を紹介します。

最近プロデュースする社内イベントは、少人数の発表者・参加者が配信会場に集合して、進行の模様をリアルタイムで撮影・配信する、リアルとオンラインをかけ合わせた「ハイブリッド型イベント」がスタンダードになってきました。

これは感染症対策になるだけでなく、場所や時間の制約も少なくなることで、働き方の多様化にも適している手法だと感じます。しかし、ただウェブ会議ツールを利用して延々とスピーチする一方通行の発信だけでは、“一人で視聴している”ことの孤独感を覚えやすいため、参加感や一体感が著しく低下する恐れがあります。

今回の事例では、一人ひとりのアバターが登場するバーチャル空間型のツールを使って社員総会を実施しました。リアルイベントでは、ホテルや会議室など普段とは異なる外部会場と照明・音楽を活用した演出で、非日常の空間を演出します。バーチャル空間では、背景にグラフィックデザインを活用することで、ホテルや会議室とも異なる、自由な空間を創出でき、「みんなで集まっている」空気感の演出に成功しました。

事例2|心情や想いにこだわるアワードづくり

このお客様は、長期ビジョンで「社会価値の創出」を掲げており、社員総会の目的を「全員で社会価値について考えていく場」と置いていました。しかし、壮大なビジョンと日常の仕事とをなかなか結びつけられない社員が多い状態に頭を悩ませていました。

そこで今年の社員総会では、一人ひとりが自分の思いに気づき、ビジョンとの接点を見出していけるよう、アワードとワークショップの再構築に取り組みました。

アワードは、受賞者の位置づけやプレゼンテーションのあり方を見直しました。それまでは「何をやったか」や「成果」など、WhatやHowのみが語られていました。そこで「なぜ向き合えたのか」といったWhyの部分と、「向き合った結果、実現できたこと」や「取り組むことで見えてきたこと」などに発表の重点を置きました。

発表する本人が意識できていないことも意外と多いため、事前にプレゼンテーションをブラッシュアップするミーティングを設け、発表者の方とゼロインとで一緒にWhyを紐解いていきました。発表当日は配信会場に来ていただき、イベントの臨場感や同僚の応援を感じられる中でプレゼンテーションを実施しています。

これまではロジカルプレゼンテーションの印象が強い内容でしたが、今回の見直しによって、その人なりの言葉で心情や想いまで語られるエモーショナルな場となりました。視聴していた社員からはポジティブなコメントが多数寄せられ、好意的に受け取られたようです。

このアワードでのプレゼンテーション終了後は、その内容をヒントに、自分たちについて考えるワークショップを行います。このタイミングで、バーチャル空間の背景を野外のグラフィックに変え、ファシリテーターはツアーガイドの格好をするなど、研修的な場に感じないような演出を施しています。

ファシリテーターから投げかける言葉にもこだわり、どのような言い回しなら参加社員が考えやすいか、事前に事務局でテストワークを行い、カルチャーフィットさせました。結果、長時間のオンラインワークショップにも関わらず、濃密なコミュニケーションとポジティブなコメントであふれ、「社会価値創出」に向けた宣言がたくさんアウトプットされました。イベント終了後にも、「具体的に取り組みたい」「アクションのイメージがついた」と行動につながる声が寄せられたそうです。

働き方の多様化に伴いオンラインを活用した社内イベントが増えています。今回のようなハイブリッド型の社員総会においても、感情を重視したコンテンツや空間演出、参加性・双方向性をもたせることで、参加者の体験に新しい変化を生みだしました。

ITやAIの進化によって、人・組織をより良くするツールや手法は日々生まれています。体験のデザインを意識した継続的な場づくり、ぜひ挑戦してみてください。

この記事の著者

三宅 欣広

株式会社ゼロイン シニアコンサルタント
1997年からリクルートグループにおいて人材領域を中心に採用広報の企画・制作に携わる。2010年、株式会社ゼロインに入社。インターナルコミュニケーションのコンサルティング、コーポレートブランドの策定・浸透サポートなど多数プロジェクトに従事。現在はシニアコンサルタント 兼 コミュニケーションデザイン総研責任者。

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