私たちのクライアントの約5割は社内報を発行されており、その8割が発行頻度1ヵ月もしくは3ヵ月で運用しています。国内の企業数は500万社を超えると言われていますが一体、そのうちの何社が社内報を発行しているのか、正確な数字はありません。
ただ、「我が社の社員数が●●人になったんだけど、そろそろ社内報に力をいれるべきか?」とクライアントから相談されることが増えているように感じます。
私が新卒で入社した株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)は社員が3人の時から社内報『週刊リクルート』を発行していました。既に56年前の話です。“愛することは知ることから始まる”というドイツの心理学者エイリッヒ・フロムの言葉を引用しながら、創業者の江副浩正氏は「情報の共有」を経営の根幹の1つに据えました。
『週刊リクルート』に続いて、管理者向けの『リクルート・マネジャーズ・ブリティン(小冊子)』が発行され、10年後には会社や仲間、仕事に対する想いを投稿するカタチの月刊社内報が誕生しました。それが同社の有名な『月刊かもめ』です。
私が入社した1984年には、ビデオ社内報『リクルートNOW』が月2回発行され、各事業部門では事業部門報、支社では支社報、グループ各社でも社内報があり、おそらく全体で100誌近い社内報が存在していたのではと思います。当時の従業員数が約5,000人でしたので、50人に1誌の社内報があったことになります。リクルートにおいて社内報は、まさに企業文化と呼べるものでした。
“友達の数は最大でも150人が限界”という仮説があります。これはイギリスの文化人類学者ロビン・ダンバー教授が提唱したもので、「人間は何人まで友達を持てるのか?」という文脈で、最近ネット上で注目され話題になりました。
霊長類には社会性、つまり「つながり」があり、そのつながりゆえに栄え、人間も大きく繁栄してきました。しかし、そのつながりには限界があるというのです。
“150人”という数字の根拠として、古今東西のあらゆる民族、種族、村などの遺跡や住居跡、集団、組織(軍隊や学者の組織、アーミッシュなどの共同体など)を調査したところ、共通して「限界値が150人前後」であったことを、ダンバー教授は挙げています。
このつながり、親密度の同心円で描くことで、概ね「5人→15人→50人→150人」という人数の区切りが、ダンバー数の単位として見えてきたそうです。要はこの数字に注目して組織づくりに活かしていくことが、自然の道理に適っている、というわけです。(詳しくは、ダンバー教授の『友達の数は何人?』~ダンバー数とつながりの進化心理学~発行インターシフト社、を是非読んでいただきたい)
そう考えると、リクルートの50人に1つの社内報が存在していた事実も、実は理にかなっていたのだと思います。
この記事の著者
並河 研
株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。