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働き方改革の時代に実施したい表彰式とは企業における表彰式の内容と役割“誰”が、“何”が、表彰されるかは経営メッセージ従業員は具体的な行動を知りたがっている表彰式を含め、社内コミュニケーションに横串をさす働き方改革の実現には、企業で働く一人ひとりの意識改革が欠かせません。働き方改革実現会議でも、取り組みの基本的な考え方の中で「企業文化や風土も含めて変えようとするもの」と明記しています。
確かに、働き方を変えるには制度や仕組みを変えると同時に、それらを実行・実践する従業員の意識が伴っていなければ、実際の行動にはつながらないでしょう。従業員が認識している“共通善”(=自社で推奨・称賛・評価される考え方や行動)が企業文化や社風を醸成していくことを考えれば、働き方改革を実現するために必要な共通善をいかに浸透させ、新しい企業文化・風土に変換していくかが、働き方改革成否のポイントと考えられます。
そこで今後、共通善を含む経営メッセージの伝達・浸透、あるいは企業文化・風土そのものを醸成する手段として、社内コミュニケーション施策がこれまで以上に重要な役割を果たすようになるはずです。社内コミュニケーション施策にはさまざまありますが、活用したい施策のひとつが表彰式です。表彰式は、受賞者というロールモデルを通じて、経営メッセージを具体的に伝えることができます。
あなたの会社の表彰式では、「今回の表彰で従業員に伝えたいことは何か」「何を感じてほしいのか」「どのような行動を生みだしたいのか」は、明確になっているでしょうか。働き方改革の時代に実施したい表彰式を考えます。
表彰では勤続表彰、業績表彰、善行表彰、功績表彰などが一般的で、これら以外にも独自のネーミングで表彰制度を運用している企業は多いのではないでしょうか。どのような表彰を実施する場合でも、狙いに「称賛を通じた受賞者のモチベーション向上」があることは共通しています。会社や同僚から承認・称賛される、ハレの舞台です。
では受賞者以外にとって表彰式はどのような場でしょうか。従業員目線で考えると、「自社にとっての“共通善”を認識する場」と言うことができます。勤続表彰であれば「長く勤めることが素晴らしい」、業績表彰であれば「高い業績をあげたことが素晴らしい」と、自身が勤める企業において何が称賛・評価されるかが明確になる場、ということです。
発信者(経営)の立場では、表彰される人や内容は従業員に向けた経営メッセージです。一方、従業員の立場では、受賞者を見て、あるいは表彰内容を聞いて、それが自社のロールモデルであると認識します。そして「会社はこういう仕事、働き方を求めているのか」と理解するのです。
そうしたとき、社員総会のスピーチや社内報のインタビュー記事で「長時間労働の是正」を発信しているのに、表彰では長時間労働のトップセールスが受賞し称賛されている。そのような状態になれば、従業員は「この会社は本気で働き方改革を実現する気はないのだろうな」と思うでしょう。
ある企業では、高い業績でも規定の労働時間を超過していると表彰されない、という表彰制度を運用しています。業績で貢献しているため人事評価が極端に低くなるわけではなく、成果に対しては金銭報酬が与えられます。しかし会社が実現したい働き方ではない、という経営の意志が強く表れた制度です。
働き方改革を実現するためには、働き方改革を体現している具体的なロールモデルが必要です。「生産性の向上」が今期のテーマだったとしても、生産性の高い働き方を全従業員が知っているわけではありません。そして、知らなければ具体的な行動は起こすことは難しいでしょう。
しかし、社内には既に実現できている人や行動、ヒントになりそうな兆しが隠れているはずです。それらを掘り起こして表出し、可視化して発信をしていくことが、表彰式の担える役割です。
表彰式を設計する場合、受賞者のモチベーション向上を中心とした、表面的な演出の豪華さに目が行きがちです。しかし表彰式以降に、現場における行動の質と量をあげていくためには、従業員にとって表彰式をどのような場にするか=経営として表彰の場を通じて何をメッセージしたいのか、を意識した設計が重要です。
結果が出た“人”を称賛する、その結果に至った“行動”を伝える。もしくは、まだ結果は出ていないが“見えてきた兆し”、メッセージしたい内容によっては“挑戦した結果の失敗”に光を当てることも選択肢にあがります。
働き方改革の実現には、従業員が受け取るコミュニケーションに一環性を持たせる必要があります。
会社のビジョンや、ビジョンを実現するために必要な働き方、その働き方が推奨され評価される人事制度・評価制度、そして評価者の意識変革を促す評価者研修まで、横串をさした設計です。そうして初めて、会社が実現したい働き方の従業員が表彰され、その行動が広まる土台ができあがります。
現場の新しい行動を阻害する要因として、現場管理職の理解不足をよく耳にします。経営から「失敗を恐れずに挑戦しよう」と積極的な挑戦を推奨しても、自身の上司から評価されなければ誰も挑戦しようとは思いませんし、挑戦的な企業文化や風土は生まれません。
「働き方改革を実現する表彰式」とは、人事のみならず、経営企画や広報などの管理部門、そして事業責任者と評価者まで、会社と従業員のコミュニケーションを担当する部門が連携して取り組む必要があるテーマなのです。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。