理念浸透とは、従業員が企業の理念に共感し、従業員から理念を体現する行動が生み出されている状態を指します。
現代は不確実で変化の激しいVUCA時代と呼ばれ、企業には想定外の出来事にも柔軟に対応する能力がより一層必要とされるようになりました。こうした状況では、従業員がトップの指示を待つだけの状態では、企業が競争力を維持することが難しくなります。変化に適応し成長し続ける企業となるには、理念を社内全体に浸透させ、従業員がその実現に向けて主体的に行動できる環境をつくることが重要なのです。
理念浸透は企業にとって重要なテーマですが、多くの企業が理念を策定していながらも、それを浸透させることに課題を抱えているのではないでしょうか。
本記事では、企業の理念浸透やインナーブランディングを支援するゼロインが、理念浸透が進まない原因や理念浸透を成功させるための重要なポイントについて詳しく解説します。
目次
理念浸透とは理念浸透とは?理念とは?理念浸透が重要な理由理念浸透によって目指したい状態理念にもとづく判断基準を持っている共通の価値観による一体感が生まれている従業員エンゲージメントが向上している理念が浸透しない7つの原因理念の内容が曖昧で分かりにくい日常のなかで理念に触れる機会が少ない従業員の共感を意識できていない理念と経営戦略に一貫性が無い役職ごとに発信するメッセージが異なる理念を体現する行動が評価・称賛されない理念体現を推奨する企業文化がない理念浸透で重要な従業員体験とは?理念浸透における従業員体験の重要性理念浸透施策を企画する際は、従業員体験設計を意識する理念浸透施策の具体例理念プロジェクトブランドブック研修・ワークショップ社員総会・キックオフアワード・表彰社内報映像1on1ミーティング評価制度理念浸透を成功させるコミュニケーションのポイントトップがコミットメントする変化を少しずつ促すアプローチの順序を工夫する継続的に取り組む従業員の内発的動機づけを大事にする理念浸透の成功事例事例|ブランドリニューアルで次の100年へ!富士酸素工業の100周年プロジェクト事例|社内表彰制度&社内表彰式『自律型挑戦大賞』で実現する“オールローソン”事例|メンバーズ社員総会はオンラインとオフラインのハイブリッドイベント!2,300人で向き合う社会課題解決理念浸透のまとめゼロインは、理念策定から理念浸透の設計・実行までサポート理念浸透とは、企業の理念が従業員一人ひとりに深く共有され、従業員から理念にもとづいた行動が生まれている状態を指します。理念が浸透することで、従業員は「会社が何を目指すのか、何を大事にするのか」「自分の業務が何につながるのか」「どのような基準で判断・意思決定すれば良いのか」を明確に理解し、日々の業務に取り組めるようになります。また、従業員の価値観が一致することで、企業全体に一体感が生まれ、組織の統率力が向上します。その結果、従業員のモチベーションや生産性の向上といった効果も期待できるため、理念浸透は企業が継続的に成長するために不可欠なものだといえます。
企業における理念とはどのようなものなのでしょうか。
理念は、「企業がなぜ存在するのか」「どのような目的を持つのか」を明確に示したものです。企業が果たすべき使命や価値観を定めた指針であり、社会環境が変化するなかでも、企業が一貫して実現・実行すると約束し続けるものです。
また、理念は従業員の行動規範や価値観の基準となり、企業文化の形成に影響をあたえるものです。対外的には企業のブランドイメージを形づくるとともに、ステークホルダーとの関係性を築く上でも重要な役割を果たします。
社会の変化が激しい現代において、企業が成長し続けるには、理念を社内全体に浸透させることが不可欠です。理念が浸透することで、従業員は企業の目指す方向性を理解し、目的意識を持って業務に取り組むようになります。その結果、一人ひとりが自発的に考え行動し、高いパフォーマンスを発揮することが期待できるのです。
また、現代では企業が「働く人を選ぶ」時代から、働く人が「企業を選ぶ」時代へと変化しています。働き方の多様化や価値観の変化により、企業選びの基準は給与や福利厚生だけでなく、理念や社会的意義に共感できるかという点も重視されるようになりました。特にZ世代を中心とした若い世代は、「自分らしく働けること」や「企業が社会に与える影響」を重視する傾向が強まっています。そのため、企業が理念や目指す方向性を社内外に伝え、従業員や求職者の共感を得ることは、優れた人材の確保に直結するといえるでしょう。
このように、理念浸透は企業成長においても極めて重要なものなのです。
理念が浸透している状態では、従業員が日々の業務で判断に迷った際、理念を指針として行動することができます。そのため、トップが細かい指示を出さなくても、従業員一人ひとりが迅速かつ適切な意思決定を行えるようになり、スムーズな企業運営ができます。
一方で、理念が浸透していない場合、従業員がそれぞれ異なる判断基準で行動してしまい、企業としての統一感が損なわれるだけでなく、企業の信頼やブランド価値を損なうリスクが生じます。理念を共通の判断基準として活用することで、企業は持続的に価値を生み出し続けることができるのです。
理念が浸透すると、従業員同士が共通の価値観を持って行動するようになり、企業全体に一体感が生まれます。特に、多様なバックグラウンドや職務を持つ従業員が集まる企業では、共通の理念があることで、異なる立場の人が同じ目標に向かって協力しやすくなります。それにより、従業員同士の信頼関係が深まり、チームワークが強化されるだけでなく、日々の業務においても意思決定のスピードが向上し生産性も高まります。
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の目指す先を理解し、自発的に貢献しようとする意欲のことを指します。理念が浸透している企業では、従業員が理念にもとづいて行動し、企業全体で一体感を持って仕事に取り組むため、従業員が「自分がなぜこの企業で働いているのか」「自分の仕事が企業の成長や社会にどのように貢献しているか」を明確に認識できるようになります。こうした認識をもつことで、従業員の仕事へのやりがいや誇りが高まり、従業員エンゲージメントの向上につながります。
従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が企業の目標に向かって主体的に行動するため、持続的に成果を生み出すことができるのです。
理念が従業員に浸透しにくい原因はどこにあるのでしょうか。理念浸透を妨げる主な原因とその対策について解説します。
理念は抽象的な概念であるため、単に理念を言葉として伝えるだけでは、従業員は具体的にどのように行動に移せば良いのか分かりません。理念を行動に落としこむには、実際の仕事と照らし合わせた具体例を示し、従業員がイメージできる状態にすることが重要です。
たとえば、「顧客第一」という理念を掲げる場合、「顧客にとって自社サービスの導入が最適ではないと判断した場合は、その旨を顧客に誠実に伝える」といった行動例を示すことで理解しやすくなります。
良い行動例だけでは伝わりづらい場合、理念に反する行動(Don’t)を示すことも有効です。このように、理念を具体的な行動レベルまで落としこんで伝えることで、従業員の理念に対する理解が深まります。
理念に触れる機会が無いと、理念そのものが従業員にとって遠い存在になってしまいます。理念を浸透させるには、日常の中で理念に触れる機会や場を意図的に設けることが必要です。
社員総会や表彰式などのイベント、社内報で理念を体現した従業員を紹介する、日常のミーティングで理念について話し合う場を設けるなど、従業員が理念に触れ意識する機会を頻度高く設定していきます。
理念浸透には、従業員の内発的な動機付けが不可欠です。「この理念にもとづいて行動してください」と一方的に指示するだけでは、従業員は「やらされている」と感じ、理念を自分ごととして捉えにくくなります。
「これをやるべきだ」と理念を押し付けるのではなく、従業員自身が理念の価値を実感し、「自分も実践したい」と思える状態を生み出すことが重要です。そのためには、理念の意義を丁寧に伝え、従業員の「いいな」「ワクワクする」といった共感の感情を引き出す工夫が求められます。
理念が掲げられていても、経営戦略や実際の業務と矛盾している場合、従業員は混乱します。たとえば、「顧客満足度の向上」を理念に掲げながら、実際の評価基準が売上のみである場合、従業員はどちらを優先して行動すべきか迷い、理念が形骸化してしまいます。
理念に沿った経営戦略を掲げ、経営のあらゆる側面で一貫性を保つことで、従業員は明確な指針のもとで行動することができます。
トップやマネジメント層、現場リーダーなど、役職ごとに理念の解釈や理念体現へのコミットメントの度合いが異なると、理念浸透は進みません。トップが「顧客第一」を唱えていても、マネジメント層が「とにかく売上を上げろ」と指示すれば、現場の従業員は、理念をどのように行動に落としこむべきか分からなくなります。
どの役職においても同じメッセージを発信することを心がけ、トップから現場の従業員までが同じ方向に向かって行動することが重要です。
従業員が理念体現行動をとっていても、評価基準が理念と一致していなければ、従業員は理念体現よりも、高い評価につながる行動を優先するようになってしまいます。
たとえば「どんどんチャレンジする」という理念を掲げていながら、従業員が失敗をした際に責められる文化があると、従業員はチャレンジすることを避けるようになります。失敗を恐れず、チャレンジする行動を増やすには、チャレンジに対して適切に評価・称賛することが重要です。失敗したとしても「そのチャレンジ、良かったね」「失敗をどう活かすか考えよう」という会話が交わされることで、従業員は「どんどんチャレンジしても良いのだ」と感じることができ、理念体現行動を続けやすくなるのです。
企業文化とは、企業に共有された価値観や信念、行動規範を指します。理念を浸透させるためには、理念を体現する行動に対して、称賛・応援する文化が根付いていることが重要です。従業員一人ひとりの意志と努力だけでは、理念体現行動をし続けることに限界があり、理念体現を推奨する文化がなければ、従業員は理念に沿った行動を起こしにくくなります。
理念体現が企業文化として当たり前になれば、従業員は自信を持って理念に沿った行動をとるようになり、企業全体に理念が浸透しやすくなります。さらに、周囲が理念に反する行動をとった際には違和感を覚えるため、理念を軸とした企業運営が促進されるようになります。そのためには、理念体現行動を積極的に共有し、称賛し続けることが重要なのです。
理念が浸透しない原因を理解し、適切な対策を行うことで、理念体現行動を増やすことができます。理念浸透は一朝一夕では実現できませんが、継続的に取り組むことで、企業全体が理念にもとづいて成長できる組織へと進化していくのです。
理念浸透では、どのようなことを意識して取り組みを進めれば良いのでしょうか。ここからは、従業員の行動を生み出す上で重要な「従業員体験」について解説します。
理念を効果的に浸透させるためには、従業員が実際の体験を通じて、理念を理解する機会をつくることが重要です。従業員が理念にもとづく行動をとった際に、周囲から「その行動、素晴らしいね」「ぜひ今後も続けてほしい」と共感・称賛される体験があると、従業員は「もっとこの行動を続けたい」と感じるようになります。
こうしたポジティブなフィードバックが繰り返されることで、従業員の行動が後押しされ、理念に基づいた行動が組織全体に広がっていきます。従業員にどのように理念を体験させ、さらなる行動へとつなげるかをデザインすることが、理念浸透を成功させるポイントであるといえます。
理念浸透施策を企画する際は、施策を単発で捉えるのではなく、従業員体験の全体の流れを考えた「従業員体験ジャーニー」を設計することが効果的です。施策を企画する際には、「従業員に何を感じてほしいのか」「どのような行動を生み出したいのか」を明確にし、それを実現するための段階的なアプローチを設計することが重要です。
単発の施策で一気に理念浸透を実現しようとするのではなく、最初の施策では理念の存在を知ってもらい、次の施策で理念への共感を得る。さらに次の段階で、小さな行動へと移してもらうといったように、施策を積み重ねて、徐々に理念浸透が進むように設計しましょう。
理念浸透は実施背景や狙いたい効果によって、さまざまな施策を通じて行われます。理念浸透を促す具体的な施策にはどのようなものがあるのでしょうか。
理念浸透のもっとも効果的な施策の一つが、理念策定と浸透そのものをプロジェクト化することです。従業員が主体となり、「どのような未来を実現したいか」を議論しながら理念を策定し、その後の理念浸透施策の企画から実行までをプロジェクトとして推進します。理念策定から浸透までのプロセスをとおして、従業員が理念に何度も触れることで、理念の価値を実感できるようになります。理念について深く考えることで、「この理念を実現したい」といった想いが湧き上がり、理念への共感が深まります。
理念や目指す方向性を明文化し、いつでも立ち返れるツールとして有効なのがブランドブックです。理念はシンプルな言葉で表現されることが多いですが、その背景には企業の歴史や文化、理念策定に至るまでの大きなストーリーがあります。こうしたストーリーを単発のイベントで伝えきることは難しく、従業員によって理解の深さに差が生じます。ブランドブックを作成し、従業員がじっくりと読み込める形式で残すことで、理念の背景をより深く理解し、日々の行動につなげることができます。
理念を浸透させるには、単に聞くだけでなく、従業員が自分で考え、周囲と意見交換をする場を設けることが効果的です。理念に関する研修やワークショップでは、従業員が自分の仕事や自社の好きなところ、働いていて嬉しかった瞬間や理念を実感したエピソードを共有することで、理念をより身近に感じることができます。
同じ部署内で行えば具体的な業務と結びつけやすく、異なる部署や役職の従業員と行うことで、新たな視点や気づきが生まれます。
理念を伝える場として、社員総会やキックオフといった全社イベントも有効です。企業のビジョン・ミッションは重要なメッセージですが、従業員にとっては目の前の仕事が優先であり、日々の業務の中で理念を意識する機会が少なくなりがちです。
こうした非日常の場を活用し、「自分たちはどこへ向かうのか」「なぜこの仕事をするのか」といった理念の意義をあらためて伝えることで、企業の方向性を再認識し、従業員の意識を揃えることができます。
理念浸透の大きなポイントは、「理念にもとづく行動」を促進することです。そのためには、理念を体現した従業員の行動を全社的に称賛し、評価することが効果的です。アワードや表彰制度を設け、実際に理念を体現した従業員を表出することで、「企業が大切にしている行動」が具体的に伝わります。また、表彰する際には単に行動を称賛するだけでなく、その行動に至った背景や考え方を共有することで、他の従業員にとっても学びの機会となります。
社内報は、理念や活動の進捗を定期的に共有するための有効な手段です。トップメッセージや理念策定の背景、浸透プロジェクトの様子、従業員のインタビューなどを発信することで、全社的な共感を醸成できます。
発信する際には「メッセージを誰が語るのか」も重要です。トップや社内関係者だけでなく、時には顧客や取引先の声を取り入れることで、「社外から見た自分たちの価値」を再確認しやすくなります。
映像は、理念や企業の未来像を視覚的かつ感情的に伝える手段として効果的です。過去の歴史を振り返る映像や、未来の姿を描いた映像を制作することで、従業員に自社が創業以来培ってきた“らしさ”や、これから目指す方向性を直感的に理解してもらうことができます。また、顧客やステークホルダーからの感謝や期待の声を取り入れることで、「自分たちの仕事が社会にどのような価値を提供しているのか」を従業員が実感する機会にもなります。
上司と部下が定期的に1on1ミーティングを行い、理念について話し合う場を設けることが効果的です。上司が部下の仕事ぶりを直接見て、理念にもとづいた行動ができている点をフィードバックすることで、従業員は自身の行動を振り返り、理念の理解を深めることができます。上司からの直接の言葉によるフィードバックは、理念への共感を高め、日々の業務と理念を結びつける大きな助けとなります。
理念にもとづく行動が正しく評価される仕組みが必要です。評価制度に理念を組み込み、業績だけでなく理念体現行動も評価対象とすることで、従業員は理念を意識して行動しやすくなります。理念を重視した評価制度を設けることで、組織全体に理念が浸透し、企業文化としても定着しやすくなります。
理念浸透を効果的に進めるには、適切なコミュニケーションが欠かせません。さまざま企業の理念浸透をサポートしてきたゼロインが、理念浸透を成功させるための重要なポイントについて、インナーコミュニケーションの観点から解説します。
理念浸透を成功させるためには、トップのコミットメントが不可欠です。トップがみずから理念の背景や意義を従業員に伝え、企業の方向性を明確に示すことで、理念の重要性を効果的に伝えることができます。トップが未来のビジョンを語り、それに向けた覚悟を示すことで、従業員は理念を「自分たちが目指すもの」として認識しやすくなります。また、トップが現場の取り組みを直接称賛することで、組織全体の士気が高まります。トップの熱意とコミットメントが、理念浸透の推進力となるのです。
組織や従業員に対して急激な変化を求めると、反発が生じやすく、理念浸透が進みにくくなります。そのため、一気に理念を浸透させようとするのではなく、少しずつ変化を促していくことが重要です。
理念体現行動を増やしたい場合は、従業員の現在の行動を否定するのではなく、「この部分は素晴らしいので続けていきましょう。一方で、社会の変化に対応するために、今後はこんなことにもチャレンジしていきたいですね」といった伝え方をすることで、従業員の抵抗感を和らげることができます。
従業員に対してまったく新しいことを求めるのではなく、既存の良い部分を認めながら少しずつ変化を促すことで、従業員は変化を受け入れやすくなります。そうすることで、企業全体が少しずつ、確実に変化していくのです。
理念浸透を効果的に進めるには、トップからマネジメント層、そして現場の従業員へと段階的に広げていく方法が効果的です。まず、トップが理念に対する想いや体現行動の具体例をみずからの言葉で語ることで、企業全体の方向性を明確に示します。次に、マネジメント層が理念と業務を結び付けて伝える役割を担い、現場で具体的にどのように実践すべきかを示すことで、現場の従業員への浸透をサポートします。
現場の従業員に対しては、アーリーアダプター(理念を積極的に体現する従業員)の行動を共有し、実際の業務でどのように理念を活かしているかを示すことが効果的です。具体的な行動例を伝えることで、他の従業員も理念を自分ごととして捉えやすくなり、理念にもとづいた行動が組織全体へと広がっていきます。
理念浸透は、単発の施策で実現するものではなく、長期的に取り組むことが必要です。少なくとも数年単位で継続的に施策を実施し、理念が定着するまで粘り強く取り組むことが求められます。一時的なイベントだけでは、理念浸透は表面的なものにとどまってしまうため、日常業務の中で理念を意識し続ける仕組みを整えることが重要です。
継続的に理念を発信し、理念にもとづいた行動を称賛・共有し続けることで、少しずつ従業員の行動が変化し、組織全体が理念に沿った動きをするようになります。
理念浸透を成功させるためには、従業員の内発的な「ワクワク感」や「やりたい」という気持ちを引き出すことが不可欠です。理念浸透の推進役となる従業員が、みずから理念に共感し、楽しみながら取り組むことで、その熱意が周囲にも伝播し、組織全体へと広がっていきます。
最初は従業員が、理念に対して強い想いを持っていなかったとしても、「自分たちの組織がどうあるべきか」を考えるプロセスを通じて、徐々に意識が変化していきます。その結果、「この理念を周囲に伝えていきたい」「もっとこんなことを実現したい」という熱意が芽生え、浸透が加速するのです。
ゼロインがこれまでにプロデュースした事例から、理念浸透に成功した代表的な事例を紹介します。
静岡県東部エリアを中心に、法人・個人向けのガス事業を展開している富士酸素工業株式会社様は、創業100周年を迎えました。富士酸素工業様はこの100周年を迎えるにあたり、5年以上前から周年プロジェクトを立ち上げ、「次の100年」への一歩を踏みだす準備を進めてきました。
そして、プロミス(経営理念)を従業員主体で策定するプロミス策定プロジェクトや、CI(会社ロゴ)・ユニフォームのリニューアル、従業員や取引先・消費者を対象にしたイベントなど、さまざまな周年記念施策を1年以上かけて順次、展開しています。
株式会社ローソン様は、『自律型挑戦大賞』というナレッジ共有&社内表彰制度を実施しています。現場で生まれた“いい仕事”を全社員の前で称賛することで、一人ひとりが新しい気づきを得ることや、褒め合うことでのモチベーション向上が狙いです。
そして、自発的な挑戦を推進し、属人化ナレッジを組織の財産として蓄積することで、“オールローソン”で一致団結する意識を生みだし、会社全体を強くすることを目指しています。
この『自律型挑戦大賞』のコンセプト設計に際しては、全従業員にとってこの賞がどのような位置づけになったら良いかという3カ年計画を作成しています。1年目は「『自律型挑戦大賞』のことを知る」、2年目は「ワガコトとしてとらえる」、3年目は「もっと主体的にとらえ、全体化する」と、年々進化していくプランです。
株式会社メンバーズ様は、メンバーズグループ16社(2022年6月開催時点)の社員、約2,300人が参加するグループ社員総会を、オンラインとオフラインを掛け合わせたハイブリッドイベント形式で実施しました。
社員総会は、社員がミッション・ビジョンにじっくりと向き合う『Social Value Meeting(ソーシャルバリューミーティング)』と、会社周年を祝う懇親会『Membirthday(メンバースデー)』で構成されています。『Social Value Meeting』は、ミッション・ビジョンの実現に向けた社員の自発的な取り組みを称えるとともに、自分たちの仕事の意味や価値をあらためて考える場です。
当日は、事前選出された社員/プロジェクト10組がメンバーズの模範となる取り組みをプレゼンテーションする『Social Value Award』と、全社員がチームに分かれてミッション・ビジョンについて対話する「ワークショップ」、二つのコンテンツを実施しています。
理念浸透は、企業が持続的に成長するために欠かせない取り組みです。
本記事でご紹介した、理念浸透のよくある失敗例と成功のポイントを参考に、理念浸透施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。
理念浸透は短期間で実現できるものではなく、継続的な取り組みが必要です。少なくとも3年はかかるといわれており、2~3年は継続して実施しないと取り組みが浸透せず形骸化してしまう可能性があります。 さらに、理念を企業文化として定着するにはさらに時間を要することが想定されますが、浸透施策を少しずつでも継続的に行っていくことで文化は着実に変化していきます。理念浸透を進める際には、従業員に急激な変化を求めるのではなく、小さな変化を積み重ねることを意識し、長期的な視点で施策を設計することが大切です。
従業員が理念を「自分ごと」として捉え、その実現に向けて自発的に行動したくなる環境を整えることが重要です。一方的なメッセージの発信だけでは、理念を実感しにくいため、従業員自身が理念との接点を見つけられるような機会を提供しましょう。 効果的な方法の一つが、対話やワークショップを活用し、従業員が日々の業務を通じて感じた成功体験や価値観を共有し合う場を設けることです。これにより、理念を抽象的なものではなく、実際の業務に結びついた具体的なものとして捉えやすくなります。 また、施策を単発で終わらせるのではなく、複数の施策を組み合わせ、継続的に実施することがポイントです。理念浸透の取り組み全体を通じて、「従業員にどのような行動を生み出したいのか」を明確にし、従業員体験を設計することで、より効果的な理念浸透が実現できます。
理念浸透施策を企画する際に、「何から手をつければ良いか分からない」「どのように進めるのが効果的なのか判断できない」といった課題に直面している企業が多いのではないでしょうか。
ゼロインは、インナーブランディング支援の豊富な経験を活かし、理念策定から浸透施策の設計・実行までを一貫してサポートします。「理念浸透の進め方を知りたい」「パーパスやビジョン・ミッションを見直したい」「自社らしさを社内に浸透させたい」など、理念浸透のお悩みがあれば、ぜひご相談ください。
この記事の著者
お役立ちブログ編集部