オープンデーとは、企業が特定の日に自社施設や製品・サービス、価値観やビジョンなどを一般に公開してステークホルダーとの関係性を構築・強化するイベントです。このイベントは多くの場合、企業のオフィス、工場、研究施設などを会場として開催されます。
参加者はオフィス・施設内の見学や、企業が提供する製品やサービスのデモンストレーションを体験できます。ほかにも、業界トレンドなどのプレゼンテーションやワークショップなどのコンテンツや、企業のビジョンや中長期的な戦略を知ることができる場合もあります。
オープンデーの対象者は幅広く、従業員の家族や友人、消費者、学生・求職者、ビジネスパートナー、投資家、地域社会など多岐にわたります。一般的には無料で参加できる場合が多いですが、専門的な内容を提供する場合や外部講師を招いた基調講演や勉強会、高度な設備を使用する場合には、参加費が発生するケースもあります。
この記事では、企業が実施するオープンデーについて、概要から目的・効果、開催イメージまで基本的な情報を紹介します。
目次
オープンデーが行われる背景・目的オープンデーにより期待できる効果新卒採用・中途採用の促進顧客エンゲージメントの強化コミュニティとの関係強化ビジネスパートナーとの連携株主・投資家へのアピール社内コミュニケーションの促進オープンデーで企画されるコンテンツ例会社の施設見学(オフィス・工場見学)プレゼンテーションとディスカッションワークショップと製品デモネットワーキング・懇親会成功するオープンデーのポイントイベントの事前準備目的・参加者に合わせたプログラム設計参加者へのフォローアップオープンデーの企画・開催イメージ自動車メーカーが実施する「未来の車体験イベント」インフラ企業が実施する「持続可能な未来を考えるフォーラム」BtoB企業が実施する「ビジョン&バリューズ・フェア:企業文化を家族で感じる一日」オープンデーをオンラインで実施する場合の注意点オンラインとオフラインの違いオンラインでのエンゲージメント戦略まとめ:オープンデーの重要性と今後の展望オープンデーの実施背景には、いくつかの理由が挙げられます
一つ目は「透明性の確保」です。企業には、社会的責任(CSR)やSDGs(持続可能な開発目標)への積極的な関わりが求められています。しかし、企業の活動は社外からは見えにくいため、企業活動の透明性を高めることで、社会とどのようなつながりを持ち、どのように貢献しているのか、社外に周知することが重要です。オープンデーは、自社の活動をステークホルダーに広く伝えるきっかけになるので、透明性を高める手段として有効です。
二つ目は「ブランディングと信頼の構築」です。企業が社会に対してどのような価値を提供しているのか、その組織にはどのような人々が働いていて、どのような企業文化・価値観を持って仕事をしているのかなどを、従業員や製品・サービスとの関わりを通じて伝え、ブランドイメージや信頼を醸成します。多様な体験を通じたステークホルダーとの信頼構築や深い理解は、ポジティブな企業ブランドの形成に期待できます。
三つ目は「採用と人材育成」です。労働力人口の減少や人材流動化によって、企業の採用や人材の定着に関する難易度が向上しています。そのとき、採用やインターンシップの前段階として、企業文化や仕事内容を求職者が事前に理解できるオープンデーの場を設けることは、採用成功率や入社後活躍確率を高める一つの選択肢になり得ます。
最後に「インナーブランディング」 の観点もあります。インナーブランディングとは、社内・従業員に対するブランディング活動で、自社が大切にする価値や文化を浸透させる活動を指します。従業員が会社のブランドや価値を正しく理解し、それらに共感や誇りを抱くことで、エンゲージメントが高まり、より高いブランドを形づくる原動力となります。
オープンデーは、社外のステークホルダーを対象にしたイベントではありますが、このイベントを迎えるまでの過程において、社内のビジョンや価値観、文化を共有し合う良い機会となります。また、イベント当日にもステークホルダーとのコミュニケーションが必要になるので、社外の視点から自社について認識するきっかけにもなり、「自分たちは何をすべきなのか」という方針への理解が深まるようになります。
要するに、オープンデーは一過性の企業イベント以上の意味を持っており、社内外のステークホルダーとのつながりが、持続的な成長の源泉を生みだすと考えられるのです。
オープンデーは採用活動の促進に非常に効果的なイベントです。企業文化や働く環境、さらには具体的な仕事内容を直接見てもらえることで、応募者は企業の理解を深めることができます。特に学生は企業のリアルな情報を手に入れることが難しいため、新卒採用やインターンシップを検討している学生に対しては、オープンデーは貴重な情報収集の機会となります。オープンデーのコンテンツとして、実際に働く社員と対話できる場を提供することで、応募者と企業とのマッチング精度をより高めることができます。
顧客のエンゲージメントを高める機会としても効果的です。製品のデモンストレーションやサービスの試用を通じて、顧客は製品・サービスの質の高さや提供価値を知ることができます。また、最終的な成果物だけではなく、そのプロセスまで開示してストーリーで伝えることで、その製品・サービスがどのように作られているのかを理解でき、より愛着を感じられるようになります。体験や対話を通じたインタラクティブな経験を設計することで、顧客エンゲージメントを高めるだけでなく、口コミやソーシャルメディアでの評価向上にも期待ができます。
特に、地域社会や特定の業界内におけるコミュニティとの関係強化にも期待ができます。企業が持つリソースや専門知識・経験をコミュニティに共有することで、相互の信頼と協力関係が生まれます。また、地域社会に開かれた企業づくりに取り組むことで、地域に対する社会貢献活動としても大きな意味を持ちます。
オープンデーは、既存または潜在的なビジネスパートナーとの関係を強化するプラットフォームにもなり得ます。顧客エンゲージメントにも近い内容にはなりますが、これまで知る機会のなかった機会や情報を提供することで、共通のビジネス目標や協力可能な分野が明確になり、新たなビジネスチャンスを生みだせる可能性があります。
オープンデーを、株主・投資家に対するコミュニケーション手段として考えることもできます。特にBtoB企業においては、一般的な株主や投資家がその製品やサービスについて詳しく知り、体感する機会は多くありません。業績データや中長期計画だけではなく、企業の成長ポテンシャルやビジョンを伝えるような体験・体感を創りだすことで、株主・投資家が安心して投資できる環境を作れるようになります。
オープンデーの開催によって社内コミュニケーションを活性化させることもできます。社内プロジェクトを立ち上げて、多部門が連携しながらイベントの準備・運営を進めることで、業務上では交流の少ない部署同士の協力・連携が期待されます。また、社員が自分たちの仕事や製品・サービスを外部のステークホルダーに魅力的に説明する準備を進める過程で、自社の強みや優位性を認識して、自信や誇りを持つことにもつながります。
オープンデーでは、オフィスや工場といった会社施設の見学が最も定番のコンテンツです。参加者に従業員が働く空間や、製品・サービスが生みだされる現場を直接見てもらうことで、製品・サービスがどのような過程を経て生みだされているのかを理解してもらうことができます。工場ならば製造ライン、研究施設ならば実験環境、オフィスならば働く環境を公開します。
この施設見学は、企業の透明性を高めるだけでなく、参加者に製品やサービスの質、企業文化、働くスタッフのプロフェッショナリズムなどを感じることができます。同時に、担当者が技術的なことや専門的なことだけでなく、想いや情熱を交えながら解説することで、新製品の開発ストーリーや環境への配慮など、具体的な取り組みを目の当たりにでき、企業への信頼と興味を高められます。
プレゼンテーションでは、企業のビジョン、戦略、業界のトレンドなどを広く伝えるために有効な方法です。しっかりとしたプレゼンテーションを行うことで、参加者は企業が目指す方向性を明確に把握できます。
一方的な発信だけではなく、その後にディスカッションの場を設けて対話を生みだすことで、参加者はプレゼンテーションによって生まれた疑問の消化や意見交換ができ、より深い理解とエンゲージメントが生まれます。
ワークショップや製品デモンストレーションも人気のあるコンテンツです。参加者自身が製品を手に取って体験することで、価値や魅力の理解が深まります。
ワークショップでは、たとえば新しい技術の使い方や業界のベストプラクティスなどを学ぶことをテーマに実施することも一つの案です。ビジネスパートナーや業界関係者を招いて実施する場合には、参加者にとって有用な知識やスキルを習得する機会となり、企業が自社らしい専門的な価値を提供できる場となります。
オープンデーは、参加者同士、または参加者と企業とのネットワーキングの場となります。多くのオープンデーでは、施設内や外部会場に移動して、飲食を伴う懇親会の場を用意します。
懇親会の時間は、参加者が会社や従業員との関係を深める貴重な場となります。施設見学やプレゼンテーションで共有した内容を絡めた参加型クイズが企画されることも多く、楽しくカジュアルな雰囲気で参加者との距離感が縮まるので、エンゲージメント向上につながりやすいコンテンツです。
成功するオープンデーには、しっかりとした事前準備が不可欠です。まず、イベントの目的と、目的に沿った対象参加者を定義することが重要です。オープンデーを通じてどのような状態を実現したいのか、「ありたい姿」を描き、必要な情報を整理していきましょう。
次に、目的と参加者に応じた、適切な日程、場所、そして予算を決定します。内容次第ではありますが、場所を選ぶ際には参加者目線でのアクセスしやすさが重要です。
集客に向けた広報活動も、十分な時間を準備しておきましょう。従業員の家族や友人、取引先であればメールや招待状を直接送付することが必要ですし、社外の方々を招待する場合にはウェブサイト・SNSでの告知やポスター掲示、業界誌への広告など、多角的なアプローチで参加者を募ることが重要です。
イベント当日にスムーズな進行ができるように、タイムスケジュールやスタッフの配置、必要な設備と資料の準備も怠らないようにしましょう。イベント企画や運営においては、イベント会社に委託をすることも選択肢の一つです。
オープンデーのプログラムは、イベント目的にもとづいて設計していきます。
たとえば、採用活動が目的であれば、企業文化や働く環境に焦点を当て、リアルな職場体験を提供するプログラムや従業員との座談会コンテンツが有効となります。ほかにも、従業員の家族や友人を招いた会であれば、ビジョンや社会的な意義のプレゼンテーション、製品・サービスの特長を知れるクイズ大会などが挙げられます。また、新製品のプロモーションを目的に置くのであれば、製品デモや専門家によるプレゼンテーションなどその製品をフィーチャーします。
目的の達成のために、各プログラムで参加者に何を伝え、どのように感じてほしいのか、イベント後の感情や心情の変化を思い浮かべながら、その実現に向けて企画を練っていきます。
プログラムはイベント当日に限定して考えなくても良く、イベント開催前の時間も盛りあげ期間として活用できるので、ウェブサイトや招待状、映像、小冊子などイベント以外のツール活用も視野に入れると、幅広いアイデアを出せるようになります。
オープンデーが終了後のフォローアップも、施策の効果や質を高めます。参加者に対してアンケートを行い、参加者からフィードバックを得ることで、次回以降のイベント改善につながります。また、参加者が会社や製品・サービスに興味を持った場合には、さらなる情報提供を行うこともできます。
たとえば採用活動が目的の場合は、参加者に対して今後の選考プロセスや募集要項を明示的に伝えることが重要です。顧客エンゲージメントが目的であれば、割引クーポンや新製品のサンプルを提供することで、参加者が再び企業と接点を持てるような仕組みを用意すると良いでしょう。
こうしたポイントを押さえ、常に目的や得体効果を意識しながらオープンデーを設計していくことが成功の鍵となります。
実際にオープンデーを開催する場合に、どのようなテーマで企画すれば良いのでしょうか。企画・開催イメージを掴んでいただくために、架空の企業が取り組むオープンデーの開催イメージを挙げてみます。
この企業は電動車と自動運転車の開発に力を入れており、オープンデーではその先端技術を体験できるイベントを設けています。事前登録制で、一般の参加者だけでなく、投資家やメディアも招待。電動車の試乗体験や自動運転車のデモンストレーションが行われ、多くの参加者がその技術の進化に驚いています。さらに、エンジニアやデザイナーによるプレゼンテーションで、企業のビジョンと今後の展望がしっかりと伝わる内容となっています。
この企業は再生可能エネルギーの提供に特化しており、オープンデーではそのテクノロジーと社会貢献に焦点を当てています。会場には太陽光パネルや風力発電のモデルが展示され、エキスパートによるプレゼンテーションが行われます。また、参加者が自分でエネルギーを生成できる体験コーナーも設置されており、子供から大人まで幅広い層が楽しめる内容となっています。
このオープンデーは、企業のミッションやバリュー、世の中に提供する価値を、従業員の家族を巻き込みながら体感することを目的としています。企業の歴史や製品・サービスがどのようにつくられ、どのように社会に貢献しているのかを紹介する展示ブースや、先進的な取り組みを子どもまで理解できるようにダウンスケールしたミニセミナーなどを実施します。普段は仕事が見えにくいBtoB企業の中身をひも解き、家族に事業内容や企業文化を知ってもらうことで、従業員の誇りや自信につながる場となります。
これらの事例からもわかるように、成功するオープンデーは参加者が何を期待し、何を学びたいのかを理解し、その期待に応えるプログラム設計がされています。
オープンデーはオフラインでの開催が基本ですが、オンラインで実施することも可能です。その際の注意点についてまとめました。
オープンデーをオンラインで実施する場合、参加者との物理的な距離があるため、インタラクティブなコミュニケーションが難しくなる点が挙げられます。どうしても企業側が一方的に発信するプログラムになりやすいため、双方向性を持たせるプログラムの工夫や、各種メディア・ツールを駆使することが必要になります。
また、参加者はほかの画面の閲覧やスマートフォンアプリの利用が簡単にできてしまうので、集中力が散漫になりやすいという問題があります。よほど魅力的でない限り、一つのコンテンツに集中し続ける時間には限界があります。この点を考慮して、プログラムは短く、簡潔な内容の設計が求められます。
また、テクニカルな問題も無視できません。インターネットの接続問題、プラットフォームの安定性、音声や映像の品質など、事前に十分なテストと確認を行う必要があります。企業側は事前テストによってある程度は準備できますが、参加者側の理解やリテラシーはさまざまですので予期せぬトラブルが起こる可能性はあります。
オンラインのオープンデーでは、参加者とのエンゲージメントを高めるための新しいアプローチが必要です。たとえば、ツールを活用してリアルタイムでのQ&Aセッションを設けることで、参加者は視聴するだけではなく、内容に参加できるようになります。
また、ブレイクアウトセッションや小規模なディスカッショングループを用意することで、参加者同士でコミュニケーションを取ることもできます。
ゲーミフィケーションも効果的な手段の一つです。プログラムの途中でクイズや投票を行い、参加者がその場で回答できるようにして、その結果によって何か特典が得られる。そうした設計も参加感を高め、エンゲージメントがより高まります。
いずれにしても、オンラインでのコミュニケーションは一方通行にならないように、常にインタラクティブな要素を取り入れることが不可欠です。
オンラインイベントはその便利さとアクセスの容易さで多くのメリットがありますが、参加者のエンゲージメントを獲得するためには、戦略な設計と工夫が求められます。この点をしっかりと考慮してプランニングと実施を行うことで、オンラインでも目的を達成するオープンデーを実現できるでしょう。
オープンデーは、企業が多様なステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、自社をアピールし、信頼と強固な関係性を築く格好の機会です。オープンデーは、一般的な広報活動やマーケティング手法とは一線を画し、企業と参加者が直接対話と交流を持てる場であることが特長です。
企業のビジョンや製品・サービス、そして従業員を核にして集まり、双方向のコミュニケーションを取ることで生まれるエネルギーは、モノやサービスが同質化する中で、その会社らしさに気づき、実感する貴重な機会となります。
オープンデーを通じてどのような効果を生みだすのか。ゼロインでは、イベントプログラムの企画・制作だけでなく、全体コンセプトの策定や、そもそもの課題整理や目的設定から、コミュニケーションコンサルタントがサポートします。ステークホルダーとの新しいエンゲージメント向上施策をご検討の場合は、ぜひゼロインにご相談ください。
この記事の著者
お役立ちブログ編集部