アメリカ合衆国では、バラク・オバマ氏の「Yes We Can, Yes We did.」を最後にドナルド・トランプ氏に政権が交代し、1月20日には就任演説が行われました。
大統領はもちろんのこと、多くの人の心を動かし、時には奮い立たせるというミッションを背負った人にとって、“スピーチ”は最大の武器であると同時に最大の悩みのひとつでしょう。
企業でも社長やCEO自身、あるいは社長室、経営企画室、広報室、総務部など、多くの担当者が毎年、年頭所感や社員総会、入社式の訓示など様々なシーンでご苦労されているのではないでしょうか。
アメリカ大使館のオフィシャルサイトのコラムに、元副大統領アル・ゴア氏のスピーチライターを務めたロバート・レーマン氏がスピーチライティングの基本的な考え方について書かれています。
以下、5つのコツを引用させていただきます。
導入部分で「この人が語り始めていることは、自分たちに関係していること、自分たちのことなんだ」と聴衆の注意を惹き、スピーチに引き込むことで、語り手と聴衆が同じ世界にいると感じさせていく。
その上で、「自分たちが今後どのような問題に直面するか?」あるいは「今どのような問題に直面しているか?」と語り手と聴衆の視界を合わせる。そこまで持っていった後で、理想的な解決策にはどのようなものがあるか?を問いかけ、それは「ここにいるみんな、すなわち私とあなた(聴衆)の参加なしには実現できない」と訴える。
つまり「あなた(聴衆)自身の力で“こそ”解決できるのだ」と。
その解決に向けた行動は、アメリカであればアメリカ建国の精神に。企業であれば自分たちのDNAに基づくものであり、目指しているビジョンそのものであると述べて、私たちの理想を信じてもらう。
締めくくりは、オバマ氏であれば「Yes We Can!」という流れになるのでしょう。
すべてのスピーチでこの“型”が通用するとは思いませんが、参考にしてみても良いかもしれませんね。最後に、同じコラムで紹介されているビル・クリントン元大統領のスピーチライターだったジェフ・シエソル氏の言葉を紹介します。
―最初に考えなければならないのは「何を話すか」ではなく、「なぜこのスピーチをするのか。このスピーチで何をしようとしているのか」だ。~中略~スピーチライティングにはいろいろなツールやコツがあるが、究極的には最も重要な問いかけは実存的なものである。すなわち「私はなぜここにいるのか」である。―
記事の一部はアメリカ大使館公式マガジンAmerican Viewより引用(http://amview.japan.usembassy.gov/your-speech-j/)
この記事の著者
並河 研
株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。