ブランドプロポジションが、愛される企業への第一歩

ビジョン・ミッションとブランドプロポジションの関係

2018年6月、日経MJから2018年上期のヒット商品番付が発表されました。
横綱:東・大谷翔平、西・平昌五輪
大関:東・フリマ経済圏、西・『君たちはどう生きるか』
関脇:東・ゾゾスーツ、西・eスポーツ

アシックスから発売された大谷選手モデルの野球商品は1日で予約完売、平昌五輪における羽生選手の競技シーンは視聴率40%超えもあり、スポーツの魅力がいかんなく発揮された上期でした。

ある期間に爆発的にヒットし、ブームになる商品がある一方で、100年以上人びとから愛され、売れ続けている商品もあります。例えば、三ツ矢サイダー(1884年~)、カゴメトマトケチャップ(1908年~)、森永ミルクキャラメル(1899年~)などです。

私が社会人デビューを果たした1983年には東京ディズニーランドが開園、カロリーメイトやカシオG-SHOCKが世に出ました。これらは35年経ったいまでも私たちをワクワクさせてくれています。

このように、売れる商品には人を惹きつけるチカラがあります。それは長く続けば“ブランド”として認知され、人びとに愛され、思い起こされ、その商品ならではの世界観を形成していきます。これを買っておけばまずは安心、間違いないと思う人もいるでしょう。

この春、あるクライアントから「ビジョン・ミッションを定義したのだが、次のフェイズとしてブランドプロポジションを言葉にしたい」というご相談があり、現在その構築に取り掛かっています。その中でインナーブランディングの観点から、ビジョンとブランドプロポジションの関係について感じたことを少し整理してみます。

弊社では、ビジョン・ミッションを、企業が社内外のステークホルダーに対して「自分たちはこうありたい、こうしていきたい」と宣言するもの、ブランドをステークホルダーが企業に対して「この会社ってこうだよね」と感じたり認識したりして初めて成立するもの、と捉えています。

ブランドは、さまざまなメディアを通じて企業から発信されるあらゆるメッセージやビジュアル、あるいは店舗での接客や商談シーンなど従業員との直接的な関わりを通して、ステークホルダーに焼き付きつけられていくものです。

ブランドプロポジションに沿ったブランディング

次にブランドプロポジションですが、直訳すると「ブランド定義」です。ステークホルダーが「その企業からしか得られない“価値”は何か」、企業がステークホルダーに対し「どういうブランドだと思われたいか」を明文化したものです。他社や他サービスとの差別化ポイントと言ってもいいかもしれません。

このとき私たちがよく引用させていただくのが、スターバックスが掲げている「third place(第三の場所)」です。

スターバックスは美味しいコーヒーを提供しているだけではなく、職場や家庭とは別の「第三の場所」として、気兼ねなくくつろげ、リラックスできる空間を提供しているのです。

スターバックスは、このブランドプロポジションに従って、バリスタのフレンドリーな接客やサービス、店内の居心地の良いインテリア、大通りに面した店舗の立地、そのすべてをクリエイティブにデザインしています。ブランドプロポジションを確立し、細部にまで反映しているからこそスターバックスは愛され続け、買われ続けているのです。

まとめてみると、ビジョン・ミッション、ブランド、ブランドプロポジションは、常にそれぞれを連動・連結を意図された設計、構築、浸透が必要であることが分かります。

ブランドを体現する従業員の行動

「〇〇だから、あなたたちの商品を買い続けます」。

みなさまの会社の「〇〇」には、何が入るでしょうか。

実際に言葉を入れてみても意味がつながらない、しっくりこない、自社らしくないと感じる場合は、きっとブランドプロポジションではないのでしょう。

自社の「〇〇だから」について従業員同士で語りあうコミュニケーション施策を、インナーブランディングの第一歩にしてみても良いかも知れませんね。

なぜなら、企業がどんな素晴らしいマーケティング・宣伝活動を行ったとしても、従業員一人ひとりがブランドを体現した行動ができていなければ、ステークホルダーから自社の目指すブランドを認識してもらうのは難しいでしょう。

社外へのブランドメッセージと、従業員の行動が一致していることが重要なのです。

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この記事の著者

並河 研

株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。

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