※「インナーブランディング年間戦略の立て方」連載記事はこちら
インナーブランディング年間戦略の立て方~中編~行動を変えたい人は誰ですか?
インナーブランディング年間戦略の立て方~後編~自分ゴト化するためのステップ
クライアント様から弊社にインナーブランディングの年間設計をご依頼いただく際、クライアント様が現在どのようなインナーブランディングの取り組み、社内コミュニケーション施策を実施しているのかを必ず確認しています。そして、その実施状況をマトリクス図にまとめ、各施策の相関やターゲットを整理するようにしています。
図は、横軸が時間、縦軸が社員の階層と置きます。たとえば、横軸は年度始まりの4月から翌年の3月までを表し、縦軸は経営層からミドルマネジメント、現場のリーダー、一般社員と並びます。施策を時間軸と階層軸に分けてみることで、施策が経営層からミドルマネジメントへと段階を踏んでいる様子や、施策と施策が連鎖している状況が分かりやすく整理できます。
もしくは横軸に、定期発行している社内メディアやイベントを並べることもあります。社長メルマガ、紙で発行する社内報、イントラでの記事配信、社員総会や四半期ごとのキックオフ、ナレッジ共有会など挙げればきりがありませんが、こうした施策を有機的に機能させるための、『社内コミュニケーション俯瞰図』とも言えましょう。
この2つのマトリクスは基本中の基本とも言えますが、さらにもう1つ。ピラミッド図を紹介します。
ピラミッド図は三階層から成り、一番下層の大きいところは「情報」、中間は「視点」、頂上は「行動」と名付けてみます。
考え方ですが、まずはインナーブランディングの取り組みを通じて一番動かしたい相手、つまりメッセージを響かせたい社員を想定します。そして頂上の「行動」部分に、社員にどのような行動を起したいかを書きます。次に「視点」の部分に、「起こしたい行動」に至るためには、どのような視点になる必要があるかを書きます。そして「情報」には、そのような視点になるために提供するべき情報はどのような情報か、思いつくだけ、あるいは実行できるだけ書き出してみます。
たとえば、「顧客接点からイノベーションを生む」という全社方針を掲げたとします。そうしたときには、日常業務の中、いたるところにイノベーションの芽があることを、あらゆる手段と機会を使って情報を提供してみます。特に、普段から活躍しているトップ社員ではなく、ある種保守的な社員や新入社員、契約社員にフォーカスして、イノベーションの芽につながる行動を掘り起こし、その事実を情報として伝えます。
すると「自分は決められたことをやっていれば良いのだ」「イノベーションを生む仕事は自分に関係ない」と思っていた社員は、「あれ、自分も勇気を出して発言すれば良いのだ」「顧客要件そのものを、ときには疑っても良いのだ」と、視点が変わるきっかけになるでしょう。
会社の「時間軸」と「階層」「メディア」の表に加えて、人を動かすためのピラミッド図を取り入れると、インナーブランディングの活動もより戦略的になるのではないでしょうか。
この記事の著者
並河 研
株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。