サブスクリプション時代のWeb社内報開封率の上げ方

徐々に読まれなくなる社内報…

昨年春、ドイツに行くことになった部下と旅立ち前に日本でも聴いておこうと、ベートーヴェン交響曲7番のコンサートに行きました。後日その楽団から届くようになった案内パンフレットのタイトルには「SUBSCRIPTION CONCERT」と書かれています。「サブスクリプション?」昨今、サブスクリプションという言葉は、ビジネスモデルで使われている言葉でしたが、改めて調べてみるとサブスクリプションはもともと「定期購読」という意味で、パンフレットは「定期演奏会の案内」という意味だったのです。

サブスクリプションモデルは、利用者がモノを買い取るのではなく、一定期間モノを利用する権利を買った人が、その一定期間分の費用を定期的に支払っていくものです。このモデルで最も留意したいのは「解約」です。解約は「チャーン」と言われ、解約率を意味するチャーンレートをいかに低く抑えるかがこのモデルで収益を確保する鍵となっています。ちなみに、チャーンとは英語で「かきまわす、泡立てる」という意味で、それが転じて「移り気な顧客」のことを差しています。

インターナルブランディングに置き替えて考えてみると、社内報やトップ発信のメルマガなどビジョン浸透を目的とした定期刊行物の顧客は紛れもなく従業員。社内報やメルマガはどんなに質の高い内容を発信しても、開いて読んでもらわないことには何の意味もありません。つまり、チャーンは起きて欲しくないものです。

配信タイミングの工夫で読まれる社内報に

かつて、あるクライアントのメルマガをお手伝いしていた時、週のはじまりの月曜の午前までには、読んでおいて欲しいということで、毎週金曜日の夕方に配信していました。ですが、どうも開封率が悪い。調べてみたら、その会社は毎週金曜日の夕方が営業〆の繁忙期で社内メールなど開く余裕がなく、くわえて月曜日の朝イチの営業会議の準備もあり、それどころではありませんでした。このクライアントにおける配信の正解は、月曜日の正午だったのです。

最近はイントラやメルマガを使ったデジタルな社内報をお手伝いすることが増えています。デジタルになると、アナリティクスを実装することで、開封率や読んでもらいやすい時間帯を把握できます。ただ、ここでもう一歩踏み込んで取り組む場合は、「社内情報が一体いつ、どのように、どんな内容が、誰から誰に向けて発信されているかをまずは調べませんか?」と提案するようにしています。

NHK放送文化研究所では、「国民生活時間調査」というものを、1960年から5年ごとに実施しています。これは、仕事、家事、食事など、日本人の1日の生活行動を時間の面からとらえたもので、日本人の生活に関する基礎的なデータとして、行政機関や企業、研究機関など、多方面で広く利用されています(詳細はこちら)。
次回は2020年に実施予定なのですが、調査設計の大きなテーマに「細切れ時間への対応」「無意識時間への対応」ということがあげられています。この調査自体は、15分単位でどんな生活行動をしているかを調査票に記入していくのですが、インターネット利用が日常化し、SNSが圧倒的に普及してしまった現在、15分単位よりももっと細切れの行動や “ながら“行動、無意識行動が増大していて、それらをどう把握していくかが課題であるというわけです。

社内の情報に、従業員がいつ、どのように、どれくらい接しているのか?また一方でどのようなアウトプットを行っているのか?「従業員の生活時間」を知ることが、チャーンを防ぐ第一歩のような気がします。

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この記事の著者

並河 研

株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。

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