リモートワーク時代の人事評価のあり方と、納得感を高める組織文化のつくり方

コロナ禍で働き方や日常が大きく変わった2020年もあとわずか。振り返りの季節となり、この状況下での評価や査定の難しさを感じている、という声をよく耳にします。今回は、企業文化の観点から見た評価の在り方、考え方について少し整理したいと思います。

リモートワークによって起きた変化

最近、当たり前になってきたZOOMやTeamsなどといったweb会議システム。使っていて感じるのは、その生産性の高さです。議論が淡々と進み、結論にも早くたどり着き、会議の時間が予定よりも早く終了することが多くなりました。web会議システムを使った会議の方が、議論が拡散しにくく、直線的な議事進行になりやすい印象があり、結果として効率的に会議が行えるように思えます。そうしたメリットがある一方で、「ブレストでいろんなアイデアを出し合う」「執務室内での他者のディスカッションに混ざる」「日常的な情報交換を行う」といった、偶発性の高いコミュニケーションが難しいとも感じています。

何が、評価しにくいのか

コロナ禍においては、これらの偶発性の高いコミュニケーションから得ていた情報が得られにくくなったことが、プロセス評価のハードルを上げてしまったと考えられます。

そもそも、人事評価においては「成果」が評価されるのですが、成果とは一体何でしょうか。

それは、「結果」と「プロセス」です。

結果評価とは業績評価のことです。結果評価においては、期中にたとえ大きな環境変化があったとしても、目標そのものの見直しがない限り、目標への到達度のみを見て判定しなければなりません。

一方、プロセス評価とは結果を得るまでの過程に着目して、どのような価値を発揮したのか、いわゆる「仕事ぶり」を定量的に評価するものです。能力評価、情意評価、コンピテンシー評価といったものが代表的なものといえます。結果評価では見えてこない、「なぜ、この結果に至ったのか」「この結果に至るうえで、どのような行動や能力を発揮したのか」「この結果を通じて獲得した能力やできるようになったことは何で、今、足りていないことは何か」を評価することで、一人ひとりの仕事のプロセスの改善や能力開発、育成と成長につなげていきます。

リモートワークの中で日常的な接点が少なくなった今、この「仕事ぶり」を正しく観察し、評価することが難しくなっています。これまでは、日々のコミュニケーションや同じ空間の中で仕事をしていたからこそ、部下の仕事に向き合う姿勢や態度、ちょっとした変化や成長に気づけ、発見することができていました。しかしこれからは、マネジャー自身が、より意図的なコミュニケーションや接点を設けて、部下から情報収集する必要があります。

裏を返せば、評価される部下もまた、日々の仕事や取り組み、自身が出した結果について、何をどのように工夫して考え、行動したのか、それらを通じて何を学び、習得し、自らの今後の成長に照らして何が必要だと考え、そのために何をしたいかを伝えられるようになることが重要とも言えます。 つまり、マネジャーが部下のプロセス情報を能動的にとりにいけ、部下はマネジャーへ自身のプロセス情報を能動的に発信できる環境を整えていくことが、「仕事のできばえ」も「仕事ぶり」も公平・公正に評価できる組織の在り方の基本となっていくことでしょう。

「仕事ぶり」を組織の価値観に紐つけ、表出し、
称賛し合う組織文化をつくることがポイント

では、「仕事ぶり」の評価は、何に基づいて基準化していけばいいのでしょうか。

事業戦略が、企業全体の戦略、ビジョン・ミッション・バリュー、あるいは経営理念や行動指針とひもづいているように、組織・人事戦略、それに基づく評価制度もまた、同じです。つまり、経営理念や行動指針、ビジョン・ミッション・バリューといった組織全体の価値観に基づいて、「仕事ぶり」を評価、判断できるようにすることです。企業の全ての活動の中に、これらの価値観を織り込むこと。さらには、組織文化そのものも、今、掲げている組織の価値観に照らして、アップデートしていくことが重要です。

なぜなら、文化とは“無意識”の領域にあるものなので、いつの間にか社員に刷り込まれ、受け入れられ、あたり前のこととして定着しているものです。過去から引き継いできた文化が必ずしも、「今、目指したいこと」や「これから、目指したいこと」にフィットするとは限りません。コロナで新しい働き方に直面している今だからこそ、現在の組織の価値観や根づいている組織文化を改めて捉えなおし、見直すことも必要かもしれません。これからの公平で公正な評価の在り方を構築するうえでも、まずはここから着手することが重要なのです。

また同時に、プロセスが見え難いという現状にも手を打つ必要があります。情報をやり取りする機会と場が必要になりますし、互いの率直な想いや考え、意見を受けとめるインクルーシブな姿勢とそこからくる心理的安全の確保が何よりも重要です。以前、CAPPYでも取り上げたミクシィ社の1 on 1の取り組みや、D2C R社のUnipos(Fringe81株式会社のWebサービス)を活用したピアボーナス®制度も一つの方法といえるでしょう。

とかく、日本人はアピール下手といわれます。日常的な何気ない行動や取り組みにあえて着目して、承認すること、そしてそれを組織内のオープンな場に表出して、称賛すること。これらをまずはマネジャーの皆さんが部下に対して率先して行うことが大切です。また、上下関係の中だけに収めずに、メンバー同士や部署を横断した関係の中で承認し合える環境を整えることもおすすめです。できることなら、あまり金銭的な報酬に重点をおかず、組織全体の中で表出する/表出されることが栄誉感につながる、そんな組織文化をつくっていくとエンゲージメントにもつながっていきます。

コロナが収束したとしても、以前と全く同じ形に戻ることはありません。だからこそ、組織文化に即した人事評価の在り方を模索し、埋もれていくプロセスをつまびらかにする称賛の文化がより重要になってくるのではないでしょうか。

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この記事の著者

比嘉 文彦

株式会社ゼロイン コミュニケーションコンサルタント/シニアプランナー
インターナルブランディングやコミュニケーション施策の企画・設計、ワークショップ開発などを行う。

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