社内ワークショップに活用したい、自由な発想を引き出す「対話型アート鑑賞」

インターナルブランディングパートナーとして、人・組織の“ありたい姿”の策定と実現を支援する株式会社ゼロインが、従業員エンゲージメントの高い組織づくりに役立つノウハウをお届けします。

この記事では、コーポレートブランドの策定・浸透サポートやインターナルコミュニケーションのプロジェクトを多数手掛ける三宅が、インターナルブランディングの最前線をお伝えします。

直感や感情を重視する「アート思考型」の組織文化に注目

変化が激しく予測不能なVUCA時代では、経営や管理職がどれほどロジカルに戦略を練り上げても、その戦略が上手くいく確証は誰にもありません。メンバー目線でも、マネジメントから戦略を合理的に説明され、頭の中で理解できたとしても、理屈だけでは積極的には動けない、というのが本音ではないでしょうか。

それならば、従業員主体で「組織のWILL」と「自分のWILL」を接続しながらワクワクできる未来像を考えた方が、たとえ途中に困難があってもWILLの実現に向けて、工夫・改善しながら行動し続けることができます。

企業文化特性とエンゲージメント・ドライバー(インターナルブランディングにおいて影響度のある重要な力を3要素6因子にまとめたもの)との相関関係を分析した調査では、「ロジカルに思考・判断する組織文化」よりも「直感や感情を重視するアート思考型の組織文化」の方が、エンゲージメント・ドライバーにおけるコミットメント(実行する力や推奨する力)が高い、という結果が出ています。

エンゲージメント・ドライバーとなる3要素6因子
思考・判断スタイルとエンゲージメントの相関

この結果はコロナ禍以前の調査分析ですが、コロナ禍によって先行きがより不透明になったことを考えると、「直感や感情を重視するアート思考型の組織文化」が求められる傾向はさらに加速していると推定されます。

そうした背景もあり、近年は「アート思考」がビジネスで重視されるようになっています。アート思考とは、観る力や感受性、表現する力、自分なりの視点や美意識をもち世界をとらえて探究し続ける力、あるいはゼロから価値を生み出す活動とも言われています。

私もアート思考は大事にしており、数多くの展覧会に行っています。最近では絵を描き始め、物事を細部までよく観察するようになりました。また、「対話型アート鑑賞」のファシリテーションを身につけ、企業向けのワークショップに取り入れています。

「対話型アート鑑賞」を活用したワークショップのすゝめ

対話型アート鑑賞とは、もともとニューヨーク近代美術館(MoMA)で知識偏重の鑑賞に対する反省から開発されたものです。アートの知識は一切不要で、参加者がひとつの絵について、「見る」「考える」「話す」「聴く」を繰り返していく鑑賞法です。

これを学校教育用に開発したものはVTS(Visual Thinking Strategies)と呼ばれ、ビジュアルリテラシーや思考力、コミュニケーション力といった能力開発を目的としています。

先日、あるお客様の働き方改革プロジェクトチームのみなさんと、「働き方のありたい姿の実現シーンを具現化してみる」というアート思考型のワークショップを実施したのですが、このワークショップの冒頭で、アイスブレイクとして対話型アート鑑賞を体験してもらいました。

まずは名画を1分間よく見てもらい、「その絵の中で何が起きているのか」「絵のどこを見てそう考えたのか」を順番に聞いていきます。美術史的な知識や情報ではなく、あくまで目の前の作品を見て気づいたことを話してもらいます。アートに正解はないので、自由に発言できます。

実際にやってみると、同じ絵を見ていても、一人ひとりが注目するポイントやその解釈・ストーリーは当然異なります。他の人の意見を聞いて、絵の中に新たな発見があったり、ストーリーがより具現化されたり、違う見え方に変わったり、と見え方に変化が生まれていきました。最初は絵の中の一番目立つものしか見えておらず発言が少なかった人も、徐々に細部まで見えるように変化し、発言も増えていきました。

この対話型鑑賞によるアイスブレイクを経たことで、本題のワークショップではいつも以上に、それぞれが自由な発想で活発に発言・対話できていたように思います。

なお、ワークショップの本題は、オフィスの各エリアを具体的に見ながら、そこでどのような会話や行動がなされ、どのような関係が築かれていたいか、ありたい姿の実現シーンを想像して絵やセリフを入れてみる、という内容でした。具体的なありたい姿をイメージして、それに共感・ワクワクすることで、「実現しよう」というWILLが生まれます。

アートを介して多様な見方や感性を知る

ワークショップの感想には、「対話型アート鑑賞でさまざまな発見があって、おもしろかった」というコメントが多数寄せられました。普段いかに目の前のものを見ていないか、私たちは同じものを見ていても実は同じように見ていないということ、言語化したり他者の意見を傾聴したりすることの難しさと重要性など、多くの気づきがあったようです。

私自身もみなさんの気づきや変化を目の当たりにし、対話型鑑賞がアート思考やチームビルディングに非常に有効だと実感しました。日常的に実施している朝会やグループ会の機会でも、手軽に実施できます。みなさんのチームでも、ぜひ体験いただければと思います。

ところで、「アート思考」と「ロジカルシンキングやデザイン思考」の違いは何でしょうか? 最近はパーパスなど、企業の社会的存在意義を問い直す企業が増えていますが、そこでもアート思考が重要になります。次回は、アート思考やパーパスとのつながりについてお伝えします。

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この記事の著者

三宅 柚理香

株式会社ゼロイン シニアコンサルタント
1997年からリクルートグループにおいて人材領域を中心に採用広報の企画・制作に携わる。2010年、株式会社ゼロインに入社。インターナルコミュニケーションのコンサルティング、コーポレートブランドの策定・浸透サポートなど多数プロジェクトに従事。現在はシニアコンサルタント 兼 コミュニケーションデザイン総研責任者。

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