株式会社メンバーズ様は、メンバーズグループ16社(2022年6月開催時点)の社員、約2,300人が参加するグループ社員総会を、オンラインとオフラインを掛け合わせたハイブリッドイベント形式で実施しました。
社員総会は、社員がミッション・ビジョンにじっくりと向き合う『Social Value Meeting(ソーシャルバリューミーティング)』と、会社周年を祝う懇親会『Membirthday(メンバースデー)』で構成されています。
ゼロインはこの社員総会において、ハイブリッドイベントに必要な会場・配信環境の手配や当日進行・統括などのイベント運営面と、『Social Value Meeting』の中で実施された社員プレゼンテーションのコンサルティングや、2,300人が参加したワークショップ設計といった企画・演出面の両軸でお手伝いしました。
事業を通じて社会課題を解決する「CSV経営」に取り組むメンバーズ様が、社員総会で生み出したい社員の共感や行動とはどのようなものなのでしょうか。社員総会を担当するソーシャルクリエイターデベロップメント室の小林邦明さんと高見沢直樹さんに、『Social Value Meeting』の取り組みを中心にお聞きしました。
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目的
施策内容
ゼロインのサポート内容
ゼロイン:メンバーズ様は、ミッション・ビジョンで社会課題の解決を掲げており、その実現に向け、社員総会で実施する『Social Value Meeting』を非常に大事にされています。あらためて、メンバーズ様における『Social Value Meeting』とは、どのような施策なのでしょうか。
『Social Value Meeting』は、ミッション・ビジョンの実現に向けた社員の自発的な取り組みを称えるとともに、自分たちの仕事の意味や価値をあらためて考える場です。
当日は、事前選出された社員/プロジェクト10組がメンバーズの模範となる取り組みをプレゼンテーションする『Social Value Award』と、全社員がチームに分かれてミッション・ビジョンについて対話する「ワークショップ」、二つのコンテンツを実施しています。
メンバーズは、日々の仕事を通じたミッションの実現、そしてビジネスを通じた社会課題解決を目指しています。そのために私たちがどのようなソーシャルバリュー(社会的価値)を生みだしていけば良いのか、社会課題や社内の具体的な取り組みにじっくりと向き合えることを大事にして企画しています。
ゼロイン:『Social Value Meeting』はいつ頃から取り組まれているのでしょうか。
『Social Value Meeting』は2021年に立ち上げた施策です。それ以前から戦略共有・表彰式を行う社員総会は実施していましたが、その場で表彰していたのは業績成果を上げたプロジェクトでした。
この表彰基準を、『Social Value Meeting』の立ち上げを機に、業績成果の先にある「社会価値」へと大きく変えてリニューアルしています。
背景には、ミッション実現のために2030年までに目指すメンバーズの姿を示した『VISION2030』があります。『VISION2030』では、着目する社会課題と目指す目標値を具体的に挙げており、全社一丸となってこれまで以上に高い視座でミッション・ビジョンに向き合う必要がありました。
そこで、社員総会の目的を「ミッション・ビジョンの理解・浸透」と「ミッション・ビジョンの業務との紐づけ」に置いて『Social Value Meeting』を設計しました。
実施時期も、会社の期が切り替わる3月に実施していたものを、会社設立月の6月に移行しました。これは、毎年迎える設立記念のタイミングを、「会社が目指していること」や「社会に還元できたこと」について社員一人ひとりがあらためて立ち返る機会にしてほしいからです。
この社員総会のリニューアルによって、これまで実施していた戦略共有や業績表彰は、2020年に導入した社内カンパニー制のもと、各カンパニー単位で行っています。そうして社員総会でメンバーズグループ全体が集まる理由や意味をとらえなおし、「ミッションオリエンテッドな場」として再定義しました。
ゼロイン:ミッション・ビジョンにもとづいた、より大きなチャレンジを生みだしていくための場が社員総会なんですね。社員が自身の取り組みを社内にプレゼンテーションする『Social Value Award』は、どのような施策なのでしょうか。
『Social Value Award』は、事前エントリーの中から選出された10組が、メンバーズをリードするような取り組みを全社員にプレゼンテーション形式で共有するものです。この10組のメンバーは「ソーシャルバリューアンバサダー」と呼ばれます。
この「ソーシャルバリューアンバサダー(以下、アンバサダー)」という名称には、最優秀やトップといった序列の意味を持たせていません。選ばれるのはメンバーズグループを代表する「模範的」な取り組みであり、率先して社会課題解決にチャレンジするチームです。
今回の社員総会は、社員はオンライン視聴参加ですが、司会やアンバサダーは外部の配信スタジオに集まり、ライブでプレゼンテーションを行うハイブリッド形式で実施しました。
昨年は録画・編集した映像を配信していたのですが、アンバサダーがリアルタイムに話すことで の臨場感や想いを伝えることの重要性、アンバサダー同士が集う場をつくりたいという観点から、今回は集まる形式に変更しました。
ライブでのプレゼンテーションは、話が長くなったり、準備していたことをうまく話せなかったり、収録配信よりもリスクは当然高くなります。しかしながら、うまく話せることよりも、「素直な想いや感情が伝わること」を重視し、今回のようなハイブリッド形式の仕立てにしています。
ゼロイン:アンバサダーのみなさん、当日はとても緊張されている様子でしたが、想いのあるプレゼンテーションで印象的でした。『Social Value Award』で10組のプレゼンテーションが終了し、ワークショップに移ります。ワークショップはどのような構成で行われたのでしょうか。
今回の社員総会は、ワークショップ内で行われる「社員同士の対話」に重きを置いています。『Social Value Meeting』の「Meeting」が意味する通り、メンバーズ設立の日を起点にして、自分たちの社会的価値を改めて見つめ直し、世の中にどのように貢献していくのか、対話を通じて考えるというコンセプトです。
ワークショップはプレワークから始まり、『Social Value Award』のプレゼンテーションを受けて自分が感じたことや印象に残ったことなど、まずは率直に感じたことを共有していきます。
そして、「仕事で楽しい瞬間」や「やりがいを感じた瞬間」、「いいなと思える2030年の未来像」、「自分の仕事、自分たちの仕事を通じて実現したいこと」、3つのステップを踏み対話を重ね、議論を広げていきました。
最終的に、社員一人ひとりが、日々の業務を通じて発揮していきたい社会的な価値や成し遂げたいことを『Social Value宣言』としてチームでまとめ書き出し、全社に共有してもらいました。
「その日だけ話して終わり」といった一過性のイベントにせず、日々の仕事や日常の中で、社会課題解決に向けた行動や会話を継続的に発生させ、メンバーズのカルチャーとして根づかせられることが重要です。
しかしながら、ミッション・ビジョンや社会課題についてじっくりと話す時間は、日常業務の中ではなかなか確保できていないのが現状だと思います。だからこそ、この社員総会の場を、社会課題解決や自分たちの社会的価値について真剣に向き合い対話する一日にしています。
ゼロイン:ワークショップは、バーチャル空間でコミュニケーション可能な『oVice』を利用して実施しました。2,300人が参加する光景は圧巻でしたね。当日を振り返って、対話の盛り上がりや参加者からの反響はいかがでしたか。
『Social Value宣言』で共有された言葉を見てみると、「こういう仕事やチームを目指したい」「こういうことを成し遂げていきたい」という想いが、チームごとにポジティブに言語化されており、しっかりと対話ができたという印象を受けました。オンラインだからこそ全社員が一同に会したワークショップが実現できたと思っています。
『Social Value宣言』は抽象度の高いテーマであるため、「何を書けばよいのか分からない」という声が挙がる不安もありました。しかし、実際のアウトプットを見ると、自分たちの仕事と社会課題とのつながりを意識した言葉が並んでおり、社会に対する貢献イメージが多くのチームで描かれていたと感じています。ワークショップのチームを、日頃一緒に仕事するチームメンバーにしたことも功を奏したと思います。
実際に仕事を通じてミッション・ビジョンを実現するには、個人の力だけではなく、チームや組織といった集団で動くことによる、より大きなバリューの発揮が必要です。自分たちの仕事を普段とは異なる社会的価値目線で時間をかけて見つめ直せたことで、自分たちの社会に対する貢献度やその新たな可能性を実感できたのだと思います。
また、顧客との接点を直接持っていない社員からの共感の声も印象的でした。以前、クリエイティブ系の社員から「自分たちの仕事の価値貢献を感じづらい」という声を聞いたことがありました。
そうした職種の社員にも、自分たちの仕事がどのように社会の役に立っているのかを実感してほしいと思い設計していたのですが、アンケートで「今まではよく分からなかったが、今回のワークショップで自分たちの仕事がどう社会とつながっているのか、実感できました。やる気が出ました」とコメントがありました。
意図したものを感じてもらえたことは、本当に嬉しく思います。
ゼロイン:全体を通して、事務局のこだわりや工夫は、どのようなポイントでしたか。
10組のアンバサダーが行うプレゼンテーションは、『Social Value Meeting』の核となるコンテンツで、その後のワークショップの導入になります。
プレゼンテーションを視聴した社員が「この人たち“は”すごい」と他人事で終わってしまっては意味がありません。取り組みに共感しその次のアクションへとつなげていくために、どのように成し遂げたのか、課題や壁は何だったのか、アンバサダーの内面をより伝えたいと考えていました。
その観点で、ゼロインさんにお手伝いいただいた「何を共有するか?」のプレゼンテーションブラッシュアップは重要なポイントでした。
エントリーされた取り組みは、事前審査で「ミッション・ビジョンにもとづいて考えると、この部分が素晴らしい」と経営陣の評価ポイントを明確にしています。この評価ポイントはアンバサダーに伝達しており、「このように評価コメントをもらっているので、当日はこの部分を特に共有してほしい」と依頼しています。
しかし、経営の評価コメントをそのままプレゼンテーションに反映しても、社員に伝わるメッセージにはなかなかなりません。そこで、どうすればより魅力的で効果的な伝わるプレゼンテーションになるのか、アンバサダーとゼロインの三宅さん(株式会社ゼロイン シニアコンサルタント)のミーティングを2回ずつ実施して、第三者視点を取り入れながらブラッシュアップを行いました。
社内の視点だけでは見落としがちなことについて、「客観的に見て、この部分は価値が高いですよ」とゼロインさんにアドバイスいただけたことは、アンバサダー本人にとっても刺激と学びになったのではと思います。
ほかにも、アンバサダーが入れ替わる準備時間を利用して、経営陣が順番にコメントする演出も効果的でした。「取り組みのここが素晴らしい」というアンバサダー本人への称賛と、「プレゼンテーションで持ち帰ってほしい想いや取り組みのポイント」を通じた視聴社員の目線づくりができました。
ゼロイン:これまでもメンバーズ様の社員総会で運営をお手伝いしてきましたが、今回はより企画や中身づくりのお手伝いにかかわらせていただきました。どのような悩み、どのような期待から、ゼロインに依頼いただけたのでしょうか。
これまではイベントの運営・演出を中心にお願いしてきましたが、社員総会の大きなリニューアルに際して、どのようなイベントにするか、構成の見直しが必要になりました。そこで、どのような企画立てやコンセプトにするか、プレゼンテーションとワークショップのつなぎ、ワークショップ設計など、包括的にサポートいただければとお声がけしました。
こうした企画ごとは、通常は社内で完結させることが大半かと思います。なぜなら、ミッション・ビジョン系の取り組みをイベントとして成立させるには、自社の考えや思想が理解できていないと一緒に創りあげるのは難しいと、さまざまな局面で感じてきたからです。他社で成功したどんなに素晴らしい企画であっても、メンバーズの文化や文脈にそって設計しなければうまく機能しないと考えていました。
しかし、ゼロインさんには、これまでのお付き合いの中でメンバーズについてご理解いただいている安心感と信頼感がありました。今回のリニューアルに際して構想をお伝えしたところ、「こういうことができますよ」としっかりとご提案をいただけたので、プロジェクトをスタートすることができました。
ゼロイン:実際にプロジェクトを進めさせていただいて、ゼロインと一緒に取り組んだことで効果的だと感じていただけたシーンはありますか。
初期の企画・構想段階で何度も壁打ちさせていただけたことは、とても良かったです。過去開催の課題を踏まえて、ゼロインさんと議論しながら取捨選択を検討するプロセスは、ゼロインさんも大変だったと思いますが意義のあるものだったなと感じています。
『Social Value Award』のプレゼンテーションブラッシュアップによる内容の引き出し、アドバイス、当日を迎えるまでのプロセスのサポートも助かりました。アンケートでもプレゼンテーションの評価が高く、「共感できた」「自分自身を投影できた」「自分もやりたいと思った」など、いろいろなキーワードが出ていました。
社員総会は一社内イベントではありますが、社員総会の当日だけではなく、当日を迎えるまでのプロセス、当日を終えたあとのプロセス、年間を通じた計画を立てる必要があります。そのプロセスやフェーズごとにいろいろな要素があるため、ご依頼する領域も、イベント運営・設営、企画、コンサルティング、企画推進など、多岐にわたります。
私たちも社内リソースが潤沢にあるわけではないため、これらの領域ごとにアサインメントいただけること、目的に応じて実行までサポートいただけるところは非常にありがたかったです。
ゼロイン:ありがとうございます。それでは『VISION2030』で目指すありたいメンバーズ像に向けて、今後の展望を教えてください。
ミッション・ビジョンで掲げている内容について、その趣旨や言葉としての意味は理解されていますが、「自分の業務とのつながり」を全員が本当の意味で理解し、そして全力で活動できているか、と考えるとまだまだできることがたくさんあると思います。『Social Value Meeting』でプレゼンテーションやワークショップを繰り返すことで、いかに自然と自分事としてとらえて主体的な行動につなげていくのかが、今後の課題です。
この社員総会や『Social Value Meeting』も、年度によって内容や実施形式が新しい形に進化していくのだと思います。そうして社員の自発性を育むことで、社員総会の一日だけではなく、日々当たり前のように自発的な活動がいたるところで起きている状態が実現できたらいいですよね。
現在はVISION2030に掲げる2030年を一つのゴールに置いていますが、2050年、2100年と、未来に向けた活動を全社で取り組んでいきたいと思います。
企業におけるアワード・表彰式の基本的な考え方や、アワード・表彰式を成功に導くポイントを事例を交えながら解説します。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。