会社のオフィスや外部会場(ホテルや貸会議室)に従業員のパートナー、子ども、親御さんを招待する社内イベント「ファミリーデー(ファミリーイベント)」が注目を集めています。以前から従業員の家族を会社に招いて職場見学を実施する企業はありましたが、2010年代以降に重要度を増している従業員エンゲージメントやダイバーシティに対応する施策の一環として、新たに取り組む企業が増えています。
ファミリーデーの実施は、企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。実はこのイベントには、単なる職場見学や仕事紹介を越えた、組織活性化を生みだす魅力的な力が秘められているのです。
そこで、インナーブランディングや社内コミュニケーション活性化の施策を年間200件以上プロデュースする株式会社ゼロインが、ファミリーデーの概要や効果、実施の流れを解説するとともに、具体的なイベント事例を紹介します。
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ファミリーデー・オープンデーの企画・設計の考え方&事例集
目次
企業におけるファミリーデーとは?ファミリーデーを実施する目的例ファミリーデーで生まれるコミュニケーションとメリット社員と家族のコミュニケーション社員・家族と会社(経営陣)のコミュニケーション社員同士のコミュニケーションファミリーデーの人気企画例企画・コンテンツ20案会場装飾10案お土産5案ファミリーデーを成功に導くポイント若手社員や家族を持たない社員の巻き込みこどもが安全に過ごせるための安全対策親が安心して参加できるための準備ゼロインがプロデュースしたファミリーデー事例事例1|グループ社員と家族をオフィスに招いた社内イベント『OAG Open Office Day』事例2|SAPジャパン50周年記念式典は、緑鮮やかな庭園で交流するファミリーイベント事例3|AGC110周年プロジェクトの最後を飾る、家族参加型の周年イベント『Aフェス』事例4|グループビジョン実現に向けた基盤づくり!センコーグループの社内文化祭『CULTURE FESTIVAL』事例5|社内運動会で相互理解を醸成。舞台は渋谷の会議室事例6|20周年イベントは、お客様を招待した「感謝の集い」で最上のおもてなしファミリーデーの検討・企画時によくあるご質問まとめファミリーデーとは、従業員の家族を会社やホテルなどのイベント会場に招いて行う社内イベントの一つです。以前は社屋に招いてオフィス見学などを伴う、オフラインで実施するリアルイベント形式が一般的でした。しかし、オンラインコミュニケーションの普及と感染症対策を背景に、オンラインイベント形式でファミリーデーを実施する企業も増えています。
東京都では、ファミリーデーを次のように定義しています。
会社の取組として、従業員の家族の職場訪問を受け入れ、日々従業員を支えてくれる家族に職場に対する理解を深めてもらうとともに、同僚との交流を図り、それぞれの従業員にも大事な家庭があるということを社内全体で再認識することで、「働きやすい・家族を大切にする職場の雰囲気づくり」を行い、ワークライフバランスの推進を図る取組を行う日を指します。
※引用:TOKYOはたらくネットより引用
誤解されやすいのですが、ファミリーデーは家族を持つ従業員だけが対象の社内イベントではありません。家族を持つ従業員はもちろん、家族を持たない従業員も巻き込みながら実施することで、円滑な社内コミュニケーションや働きやすさにつながる組織文化を醸成でき、社内全体に好影響を生みだすイベントです。
※ゼロインでは、ファミリーデーを検討されている企業さまとの「無料相談会」を随時実施しております。実施有無の検討段階や、予算・企画が具体化していない段階でもお気兼ねなく申し込みください。実施方法、予算の考え方、プロジェクトのつくり方(社内の巻き込み方)、ゼロインのサポート範囲などをご説明いたします。
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ファミリーデーの目的は実施する企業によってさまざまですが、次のような目的が挙げられます。
「仕事と育児の両立を支援する風土を醸成する」という、ワークライフバランスを重視した観点が目につきます。また、「感謝を伝えたい」という気持ちを、特に経営者が持っているのも特徴です。
ファミリーデーでは、「従業員」「従業員の家族」「同僚」「経営」が主な登場人物です。ファミリーデーの企画を通じて、多くのコミュニケーション機会が生まれます。具体的なシチュエーションから、どのようなコミュニケーションが生まれ、どのようなメリットがあるのかご紹介します。
小さなころを思い返してみると、父が平日の朝から夜まで、どのような場所で、何をしているのか、まったくわかりませんでした。覚えているのは土曜日は昼まで起きてこず、父の上で飛び跳ねて起こしに行くことが私の仕事だったことくらいです。恐らく母も同様で、仕事が忙しいことはわかっても、実際に会社でどのような仕事をしているのか、その理解度は高くなかったと思います。
かつては専業主婦の世帯も多かったですが、2000年ごろから共働き世帯の割合が高まり、多くの世帯がそれぞれ職場・仕事を持っています。
ファミリーデーの機会を通じて、父(夫)、母(妻)の働く姿を垣間見られることで、仕事への理解を得られれば、家庭における協力や応援をより得ることにもつながります。家庭ではただ優しかったり、ときにだらしなかったりしても、それはほんの一面でしかありません。
家族・周囲から理解され応援されることは、働くモチベーションに直接的に影響しますし、安心して働ける環境につながるはずです。
ファミリーデーの感想でよく耳にする言葉が、「経営陣がおもてなしをしてくれて嬉しかった」という言葉です。企業規模によっては経営陣と接する機会の少ない会社もあると思いますが、家族を通すことでコミュニケーションが円滑に、活発になります。
ファミリーデー当日は、社員とその家族はお客様です。経営陣、事務局が率先してイベントを盛り上げていくことで、その姿勢は参加者に伝わり、ロイヤルティ向上が期待できます。ときにイベント受付でお出迎えする、イベントの司会進行をする、懇親会で飲み物をサーブするなど、さまざまな活躍の仕方、コミュニケーションの取り方があります。
ファミリーデー終了後の帰り道、家族から「いい会社だね」という言葉がもらえるか否かが、ファミリーデーのポイントであり、目指すべき指標かもしれません。そして「いい会社」という認知は、そのまま企業ブランドにもつながっていくはずです。
特にまだまだ認知度の低いベンチャー・スタートアップ企業やBtoB企業こそ、こうした機会を通じたブランディングが実は効果的なのかもしれません。
普段は鬼のように厳しい上司が、実は自分の子どもにはデレデレしている。そうした意外な一面を見られるのも、ファミリーデーの魅力のひとつです。
特に小さなこどもを持つ家庭では、同僚の家族の顔が見えるようになると、助け合う文化や思いやる文化の醸成が推進されていきます。「家族と旅行に行ってきた」「子どもが小学校に入学した」「家族が病気だから早く帰らないと」、どのような会話をするにもその家族や子どもの「顔」が見えているのと見えていないのでは大違いです。「○○ちゃん、元気になった?」という一言が、より強い信頼関係を構築していくはずです。
会社にフルタイムで勤めていると、家族と一緒に過ごす時間よりも、家族と離れて会社で働いている時間の方が長い場合も多いと思います。 会社と家庭の垣根を低くしていき、お互いを気遣いあう風土・文化を構築していくことで、従業員がより働きやすい環境になるのではないでしょうか。
実際にファミリーデーを実施するとなると、何をするのか迷われる担当の方も多いのではないでしょうか。そこで、ファミリーデーでよく実施される人気の企画・コンテンツをカテゴリー別にご紹介します。
「パートナーや子どもを持たない社員はどうすればいいのか?」というお悩みをいただくこともあります。その場合、そうした社員は事務局に巻き込み、企画や当日進行を任せると参加感を持ってもらうことができます。特に若手社員にとっては、どうすれば子どもに自分の会社のことをわかりやすく伝えることができるのか、あらためて考える場にもなります。
イベント当日は小さなこどもが参加するので、安全対策は万全にして迎える必要があります。普段、大人が働いているときには気づかない危険要素が、社内にはあふれています。裁断機やシュレッダーはもちろん、ハサミやホチキス、ちょっとした段差や机の角でも、ふとした拍子にこどもが怪我をする要因になります。
社内を利用する場合は、こどもの目線になって危険なものがないか、当日の進行・企画をシミュレーションしながら確認して、危険要素を排除していきましょう。
オフィスビルは、こどもが長時間滞在することは想定していないため、こどもを迎えるだけの設備が整っていない場合もあります。授乳室やおむつ替えをするスペースは揃っているのか、おしりふきやオムツなど万が一忘れ物をしたときの緊急対応できる備品は揃っているか、ミルクを入れられるお湯は準備できるかなど、必要なものを洗いだして手配していきましょう。
また、プログラム途中でこどもが飽きてしまう場合や、泣きだしてしまう場合もあります。そうしたときに安心して逃げられる場所があると参加する親も助かるので、シチュエーションを想定して、プログラムやスペース設計をしていきましょう。
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OAGグループは、グループ企業14社(2023年8月時点)の社員とその家族を対象とした社内イベント『OAG Open Office Day』を開催しました。
この『OAG Open Office Day』は、数年に及んだコロナ禍の影響から、社内コミュニケーションが薄れてしまった状況を改善できるよう、そして会社と社員、及び社員同士の“つながり”をより一層強めたいという考えからインナーブランディングの一環として企画立案が始まりました。OAGグループとしては初めての試みとなりましたが、総勢345名もの人が市ヶ谷本店に集まった大イベントとなりました。
ドイツに本社を置きグローバルに展開するソフトウェア企業のSAP SE様は、2022年にグローバル本社が創業50周年を迎え、日本法人のSAPジャパン株式会社様(以下、SAPジャパン)も設立30周年を迎えています。この記念すべき周年の年に、SAPジャパン様は東京と大阪の二か所で50周年記念式典を実施し、従業員の家族や友人も招待したことで、久しぶりに会った仲間やその家族が旧交を温め、こどもたちは会場で遊び回る、SAPに関わる多様な人々が交流を楽しむ会となりました。
110周年を迎えたAGC株式会社様は、110周年プロジェクトの一環として、全社員とその家族が参加対象のイベント『Aフェス』を実施しました。ファミリーイベント当日は大人から小さなお子様まで約2,000人がさいたまスーパーアリーナに駆け付け、同社110年の長い歴史の中でも、最大級の社内イベントとなりました。
チームで行うスポーツ競技大会や、AGCのガラス製品を用いた企画など、らしさを伝えるプログラムが準備されました。出展したキッチンカーもこどもに非常に人気で、ほとんどの商品が完売するなど、みなさん一日を満喫されていました。
センコーグループホールディングス株式会社様(以下、センコーグループ)は、グループ全社員とその家族が参加対象の社内文化祭『CULTURE FESTIVAL 2023』を開催しました。
文化祭という社内イベントを通じて、「文化を楽しむきっかけ」と「人と人とのつながり」をつくることが目的に置かれた施策です。イベントは社員主体で実施することが大事にされ、イベント企画や事前の社内広報、イベント当日運営は、入社1~6年目の社員による実行委員会が中心となって活動しました。
総勢約200名が参加した、社内運動会の事例です。社内運動会で多くの方が不安視されるのが、悪天候による当日・直前の開催中止です。そこで屋内で広い会場も開催場所候補としてご検討いただき、天候の不安に左右されないフレキシブルな会場選びとなりました。
前半の部・後半の部、約3時間のコンテンツで全7競技と大抽選会を行いました。こどもが積極的に参加できる競技や、キッズブース(エアトランポリンなど)の設置など、お子様連れでも安心して参加できる工夫によって、お子様の笑顔に大人が笑顔にされる、そんな心温まる空間となりました。
設立20周年を記念し、周年イベント「感謝の集い」を開催した事例です。お取引先様、従業員とその家族、総勢620名をホテルに招待して、この20年に寄り添っていただいた「感謝」を伝える場となりました。感謝とおもてなしに徹底的にこだわり、参加されたみなさまが会場に到着されてから退出されるまで、最上の時間を過ごしていただけるように設計されました。
まず初めに目的整理とコンセプト策定から始めます。その後、日程や開催場所の確定、プログラムの詳細設計、参加者の募集と案内、当日の運営、最後に振り返りと評価を行います。
参加者の年齢層や興味に合わせたプログラムの検討、アクセスの良い場所の選定、屋外開催の場合は雨天時の代替プログラムの準備、安全対策を万全にすること、などが挙げられます。
予算は、イベントの規模や内容によって変動します。大きな変動要素は、外部会場の利用有無、会場装飾のグレード、飲食の有無、交通費の有無(交通費や宿泊費)、ノベルティ配布の有無、当日のコンテンツ内容(芸能人やアトラクション手配)が挙げられます。「一人当たりの費用」を見立てて、総予算を検討します。
オフィスで懇親会を実施する場合は、ケータリングサービスやお弁当の手配が一般的です。二部構成で、第一部をオフィスで実施、第二部をホテル宴会場で懇親会を実施する場合もあります。過去には、フードトラックを手配したイベントがあり、参加者から喜ばれました。いずれにしても、参加者のアレルギー情報や多様性を考慮した手配が必要です。
結婚している、子どもがいる従業員ばかりではありませんので、多くの従業員が楽しめるような、ライフステージを問わない企画を準備しましょう。若手社員は、イベント事務局として参加者をもてなす役割を担ってもらうのも手です。
ファミリーデーは、上手に活用することで、社内コミュニケーションや相互理解を促進し、従業員エンゲージメントの向上につながる魅力的な施策です。企画する側も「いかに参加者を楽しませるか」を徹底的に考えればいいので、社内からメンバーを募ってプロジェクト化することで、企画・制作プロセスから社内を盛りあげることができます。積極的に活用し、組織活性化や働きやすさ向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。