従業員エンゲージメントとは、「自身の所属する会社・組織に対して抱く情熱や熱意、愛着」を指します。類似した言葉に「従業員満足度」がありますが、会社の理念や価値観への強い共感、組織への信頼、事業・仕事への誇り、組織文化へのフィット感などを含むことが従業員エンゲージメントの特徴です。
従業員エンゲージメントが高い組織では、仕事や組織に充実感を持ちながら、一人ひとりが自発的に高いパフォーマンスを発揮する、推進力を持った組織であることが期待できます。従業員が組織の目標や価値観に共感し、自らの役割や責任に対して意欲的に取り組み、チームや組織の成功に貢献することで、売上向上や優秀な人材確保にもつながる可能性があり、長期的な組織成長の原動力となります。
一方で、従業員エンゲージメントが低い状態では、従業員は仕事や職場環境に不満を感じ、定着率や生産性の低下が危惧されます。そのため、人材流動化や労働力人口の減少、働く価値観の多様化といった社会変化も相まって、経営や管理職、人事の中では、従業員エンゲージメントが重要テーマとなっています。
この記事では、さまざまな企業の従業員エンゲージメント向上、インナーブランディングを支援するゼロインが、従業員エンゲージメントが求められる背景や向上メリット、従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みの流れ、具体的な施策例や事例を解説します。
目次
従業員エンゲージメントとは?基本的な考え方従業員エンゲージメントが求められる背景人材の流動化労働力人口の減少働く価値観の変化従業員エンゲージメント向上の目的・効果定着率の向上生産性の向上イノベーションの創出ブランドイメージの確立売上・顧客満足度への寄与従業員エンゲージメントと類似する言葉働きがいワークエンゲージメントモチベーション帰属意識(ロイヤリティ)従業員エンゲージメントとインナーブランディングのつながり従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みの流れ ステップ1|実現したい世界観「ありたい姿」の設定ステップ2|現状把握・分析とニーズの特定ステップ3|「ありたい姿」の実現に向けた課題設定ステップ4|課題解決に向けた戦略・戦術の策定ステップ5|実施計画の作成・実行ステップ6|効果測定・フィードバックと改善従業員エンゲージメント向上につながる施策ブランド策定(ビジョン・ミッションやパーパスなど)社員総会・キックオフミーティングアワード・表彰式顧客インタビュー(感謝・期待の声)ファミリーデー・オープンデー感謝の集い(顧客・パートナー)ワークショップCSR・CSV活動社内コミュニケーション活性化マネジメント研修従業員エンゲージメント向上の取り組み事例事例|プロミス策定とブランドリニューアルで次の100年へ|富士酸素工業株式会社事例|ハイブリッド社員総会で向き合う社会課題解決|株式会社メンバーズ事例|ブランドリニューアルで新たな未来を目指す20周年イベント|株式会社シンクロ・フード事例|未来へとつながる社内イベント「新社名発表会」|株式会社リバスタ事例|新ビジョンを体感する社内イベント|大和ライフネクスト株式会社従業員エンゲージメントのまとめ「従業員が自社のミッション・ビジョンに共感しており、自発的に企業に貢献し、仕事に対する満足度やモチベーションが高い状態」のことを 「従業員エンゲージメントが高い」 と表現します。
実際に従業員エンゲージメントが高い会社では、従業員一人ひとりが組織の目標や価値観に共感し、自らの役割や責任に対して意欲的に取り組み、チームや組織の成功に貢献しています。その結果、売上が伸びる、優秀な人材が確保できるなど、長期的な組織成長への基盤づくりにもつながっています。
従業員エンゲージメント向上が求められる背景には、3つの理由があると考えています。
昨今、人材の流動化が顕著であり、従業員の定着率は低下しています。企業は人材を獲得し、育成するために多大なコストをかけていますが、従業員が組織に満足せずに退職することが増加しています。
人材の流動化とは、大量の人材が企業間を行き来し、「求職者が会社を選ぶことができる」状態ですから、待遇だけで他社と差異をつけ従業員をつなぎ止めることが難しくなります。
従業員に選ばれる会社になるためにも、従業員エンゲージメントを高め、企業と従業員の絆を深めることが必要になります。
少子高齢化の進行により、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに、2050年には5,275万人まで減少すると見込まれています。この生産年齢人口の減少に従い、労働力の不足が懸念されています。このような状況下では、企業は人材を確保することが喫緊の経営課題です。
組織は従業員の働きやすさや満足度を向上させ、従業員のエンゲージメントを強めることで、貴重な人材を維持し、競争力を維持することができます。
若い世代を中心に、働く価値観が従来から変化・多様化しています。「ワークライフバランスを重視したい」と考える人もいれば「組織に属さずに働きたい」と考える人も増えており、必ずしも待遇の良さだけで従業員が満足するとは限りません。
金銭報酬だけで企業を選択しない人が増加傾向にある昨今、組織文化や働き方を改善し、従業員エンゲージメントを向上させ、企業と従業員の関係を強固にしていくことが大事になります。
従業員エンゲージメントは、従業員の生産性やパフォーマンスを向上させるだけでなく、組織の成長や競争力の向上にも密接に関連していると考えられます。それでは、取り組むことで具体的にどのような目的・効果があるのでしょうか。従業員エンゲージメントを高める目的・効果を、5つの視点から解説します。
従業員エンゲージメントが高まると、従業員の満足度や帰属意識が高まり「この会社で働き続けたい」と思う人が増え、結果として定着率が向上します。これにより、企業は採用や育成にかかるコストを削減し、組織の安定性と持続可能な成長を促進することができます。
エンゲージメントの高い従業員は、仕事に対するモチベーションが高く、より効率的に業務を遂行します。結果として生産性が高まり、組織の業績向上が期待できます。
また、エンゲージメントが高い従業員は、同じビジョンの元で働く者同士として頻度高くコミュニケーションを行う傾向もあるので、自分一人の業績でなく組織全体の生産性の向上に寄与します。
変化が激しく不確実なVUCA時代において、企業が持続的に成長し続けるには、イノベーション創出が不可欠です。従業員エンゲージメントが高い組織では、従業員が自律的に行動するので、自らのアイデアや意見を積極的に提案・実行し、イノベーションを生み出す文化が醸成されます。これにより、組織は市場競争力を強化し、持続可能な成長を実現します。
エンゲージメントの高い組織は、従業員が自発的に企業に貢献するため、製造されるプロダクトやサービスの品質も高いと考えられます。また、従業員が組織の理念に共感し、誇りに思っている環境であれば、社員が企業の価値観や文化を積極的に共有し、外部からの見え方によって形成されるブランドイメージも向上すると考えられます。
従業員エンゲージメントの高い組織とは、従業員一人ひとりが満足に働いている状態です。結果、従業員が顧客に対してより良いサービスや製品を提供し、売上の増加と顧客のロイヤルティの向上が期待できます。
従業員エンゲージメントを向上するための施策を行ったところで、急激に売上・顧客満足度が上がるなど、ダイレクトに影響することはありません。しかし、組織として良い状態を保つことが、最終的に企業活動の核である利益に結びつくのです。
「従業員エンゲージメント」には、意味が似ている言葉がいくつかあります。定義がはっきりと決まっているわけではありませんが、ゼロインでは以下のように定義しています。
仕事に対するやりがいやモチベーションのことを指します。自分の働きに対して、達成や承認、成長を得られることなどが、働きがいにつながっていると考えられています。また、労働環境が整備されているなどの「その企業での働きやすさ」が満ちていることも、働きがいが高い状態を維持するために必要です。
ワークエンゲージメントとは「仕事に対してのポジティブで充実した心理状態」のことを示しています。オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授によって提唱されました。
ワークエンゲージメントは、活力(Vigor)、熱意(Dedication)、没頭(Absorption)の3つの要素で構成されています。組織ではなく、仕事に対してのエンゲージメントを示していることが、従業員エンゲージメントと異なります。
モチベーションとは、人が目標に向かって行動を起こす原動力・動機・やる気となるような目的などを意味しています。ビジネス上では「仕事への意欲」を指しており、「給料のために働く」「人に認められたい」「夢を叶えたい」など、外発的な要因から、もしくは個々の気持ちから発生する意欲のことを表しています。モチベーションを向上させる施策としては、昇給や賞与・インセンティブなど、報酬や名誉を与えることが一般的です。
帰属意識とは、組織や集団に所属しているという単なる感覚だけでなく、その一員であるという自覚や所属に対する愛着を持つことを指します。愛社精神がある、とも言い換えができるでしょう。
一方、従業員エンゲージメントは、帰属意識に加えて、従業員が組織や企業に積極的に貢献したいという意欲や行動を含みます。つまり、従業員が自らの力や能力を、組織の成長や目標達成に注ぎ込む姿勢が従業員エンゲージメントです。
いずれも、従業員が「ただ仕事が好き」「組織が好き」という状態ではなく、「組織と自身のビジョンや目標が一致しており、同じ目的を持って企業も従業員も働きかけができていること」が、従業員エンゲージメントとその他の言葉との違いではないでしょうか。
従業員エンゲージメントを高めるためには、インナーブランディングの観点で中長期的なコミュニケーション戦略を策定し、具体策ごとに戦略や企画を行うことが必要となります。
インナーブランディングとは、企業内の従業員に対するブランディング活動です。
組織のビジョン、ミッション、価値観などを従業員に明確に伝えて共有することで、組織全体の一体感を高め、自身の仕事の意味や重要性を認識してもらうことが目的の一つになります。ほかにも、社員のブランドを体現する行動を表出・称賛することで、ブランド体現行動の総量を増やしていくこともできます。
また、インナーブランディングは組織文化の醸成にも貢献します。組織の価値観が従業員に共有されると、組織内での共通の理解や行動基準が形成されます。これにより、従業員間の相互理解や協力関係が促進されます。
総じて、インナーブランディングは従業員エンゲージメントを向上させるための重要な手段であり、組織の成功に不可欠な要素と言えます。
では、実際にどのようなステップでインナーブランディング並びに従業員エンゲージメント向上に取り組めば良いのでしょうか。ゼロインが実際に行っている流れを踏まえながらご説明します。
※インナーブランディングについては、以下ブログでも解説しています。
インナーブランディングとは?目的や効果、実施の注意点を解説|ゼロイン
インナーブランディングは、社内に対するブランディング活動です。ブランドプロジェクトやワークショップ、イベント、映像など、多様な施策・手法で取り組まれます。インナーブランディングに取り組む目的や得られる効果、実施の注意点を解説します。
企業のインナーブランディング成功事例12選!進め方の4ステップも解説|ゼロイン
インナーブランディングは効果的に取り組むことで従業員エンゲージメントや働きがいを高めます。インナーブランディングが求められる背景や、実施メリット、進め方のポイントを、インナーブランディング成功事例12選とともに解説します。
ゼロインでは以下のステップを推奨しています。
この従業員エンゲージメント向上に向けた6ステップについて、順番に解説していきます。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、企業と従業員が同じ目標・ビジョンの元で共に切磋琢磨している状態とも言えます。まずは、そのために必要な、組織と個人の共通のwillは何なのか?を具体的に設定していきます。
売上を伸ばしたい・企業を大きくしていきたい、といった目標だけでなく、「この会社は未来、どんな会社になっていると理想的なのか」「社会に対してどういった価値を発揮している会社になりたいのか」と”ありたい姿”を描くことが大事です。5年・10年と未来を見据え、その時の社会の変化も踏まえて考えられるとより良いでしょう。
また、言葉だけでなく、そのありたい姿が絵になっている状態・より具体的で従業員全員に共有できる状態まで落とし込むことができると、この先のステップがより明確になっていきます。
次に、その「ありたい姿」に対して、現状の組織の状態・従業員エンゲージメントがどうなっているかを把握していきます。
等を行い、現時点で従業員が企業に対してどのように感じているか?他社と比較してどうなのか?企業が従業員に対して行っていることは何で、その結果どうなっているのか?などを客観的に見つめることが重要です。
また、従業員からの不満やニーズなどもここで特定します。
「ありたい姿」を実現するための、企業と従業員が一緒にクリアしていくハードル・ゴールを設定していきます。その際には
以上2点を捉えることが、達成のしやすい目標設定につながります。
たとえば、「すべての社員が自発的に新しいアイデアを出して実行できるイノベーティブな組織」を目指しているのに対し、現時点で従業員が「仕事において、必要な意思決定をできる権限が与えられていない」「自分の意見は尊重されていると思わない」と感じていれば、その達成は難しいでしょう。その課題を解決するために「まずは他人の意見を引き出し、自身の意見と違っても称賛できる人物を増やそう」などのゴールを置くことが重要です。
目標が設定できたら、次に「どのような手順でそれを達成するのか」といった戦略を策定します。山の頂上を目指すのに、どのルートで登るのかを考えるのに似ているかもしれません。
戦略策定を行うためのポイントは2点です。
戦略を策定したのちに、「何の施策を」「いつ行うか」を定めた実施計画を作成します。また、それぞれの施策に対しての企画や担当を定め、スケジュールに沿って実行していきます。
それぞれの施策に対して、メインターゲットとなる層と、その層にどのような変化を生み出したいのか?を具体的に定めることも重要です。効果測定を行うためのKPIもこの時点で設計する必要があります。複数の施策を並行して行う場合には人手が足りなくなることが多いので、どのように社員を巻き込んでいくかを考えると良いでしょう。
従業員エンゲージメント向上のための具体的な施策例は後ほど詳しくご紹介します。
施策を実行した後は効果測定を行い、さらに良いものにするための改善を行います。初めから効果の高い施策を行うのは難しいので、スモールスタートで始め、トライアンドエラーを繰り返して社員に対してより良いものにしていくという考えで進めるのが良いと思います。
同じ施策を行っても、組織の文化・風土や、企業の規模や事業によって効果が全く異なります。他社を参考に始めたものでも、社員の意見をよく聞き自社に合わせた施策に変えていくのが良いでしょう。また、中長期的な目線で見てマイルストーンごとに自社の状態を振り返ることも、ありたい姿の実現のために必要になってきます。
それでは、どのような施策を行えば、従業員エンゲージメント向上につながるのでしょうか。イベントやメディアを活用した施策を中心に紹介します。ただし、紹介するのは一例であり、企業ごとの戦略、組織コンディション、ニーズに応じて、施策をカスタマイズして取り入れることが重要です。
組織の核となるビジョン・ミッションや、パーパス・価値観などを明確に定義することが、従業員エンゲージメント向上を目的にしたインナーブランディングではもっとも大切です。
企業が将来において成し遂げたい夢や方向性を示すビジョン(Vision)、企業の存在理由や事業の目的を明確に定義したミッション(Mission)、組織が社会に対して行う約束パーパス(Purpose)など、何をどの程度まで設定するかは組織の状態によって異なりますが、ゴールがない状態では組織の成長や発展を続けられません。
すでにビジョン・ミッションなどがある会社も、全従業員やステークホルダーに正しく共通認識が伝わっているかどうかを確認し、ブラッシュアップすることも視野に入れると良いでしょう。
ビジョン・ミッションや経営方針など、会社・経営が目指す目標を従業員と共有する場です。
従業員が組織のビジョンや目標を理解し、共感する機会を提供します。また、経営陣や上層部からのメッセージやフィードバックを通じて、現状の組織の状態や立ち位置についてもクリアな理解を得ることができます。
トップスピーチや動画を活用したメッセージが一般的ですが、一方向のコミュニケーションになりがちなため、リアルタイムアンケート機能などを活用して、双方向性を持たせる工夫を行う会社もあります。
企業の「ありたい姿」に近づくための理想的な社員の行動や成果を称賛・表彰する機会です。従業員が自身の仕事に誇りを持ち、組織に貢献したという実感を得ることで、モチベーションが向上し、エンゲージメントが高まります。
また、「自分があの場に立ちたい」と思われるような、栄誉感のある表彰の場を設計できれば、従業員の貢献への意欲やモチベーションはさらに高まるでしょう。
アワードでは、受賞者の成果だけではなく、スタンスまで共有することで、会社が大事にしたい価値観を伝えることができます。
顧客へインタビューし、感謝・期待の声を集めて従業員にフィードバックすることも、エンゲージメント向上に対して効果的な施策です。自分の仕事は誰の何の役に立っているのか?を改めて感じられる機会になります。自身の仕事の意義や重要性を感じてもらうため、出来るだけエモーショナルな仕上がりになるとより効果的です。
会社のオフィスやイベント会場などに、従業員のパートナーや家族・知り合いなどを招待する社内イベントです。普段目に見えにくい自身の会社や仕事をオープンにする機会を設けることで、家族や知り合いから「いい会社だね」という言葉をもらい、組織への誇りや帰属意識を高めることにつながることを目指し設計するのが良いでしょう。
顧客やパートナーを会社のオフィスやホテルに招待し、普段の感謝を伝える機会です。顧客・パートナーとコミュニケーションを深めることで、仕事の価値や意義を従業員自身が改めて感じることができます。結果、従業員の組織への貢献につながるのではないでしょうか。
日常の業務を離れて行うワークショップや研修は、普段自分が考えているものの発信する機会のない想いを周囲に共有する機会です。日常の仕事で忙しく視野が狭くなりがちな従業員に対して、ビジョン・ミッションについてあらためて会話したり、今後どのような価値を提供していきたいかを議論することで、仕事の意義や組織の価値を感じてもらい、従業員エンゲージメント向上につながる礎になります。
企業の社会的責任を果たすための活動を指すCSR(Corporate Social Responsibility)活動、及び、企業が事業を通じて、社会的課題やニーズを解決し経済的価値を生み出すCSV(Creating Shared Value)活動に力を入れることも、従業員エンゲージメント向上につながります。「自社が社会に対して責任を果たしている、貢献している」という実感が、従業員の組織への誇りや満足度につながります。
従業員同士、あるいは経営層と社員などのコミュニケーションを活性化し、組織文化を作りあげていくこともモチベーションや帰属意識につながります。活性化には様々な施策が考えられますが、
など、ターゲットや生み出したいコミュニケーションによって施策を考えるのが良いでしょう。
組織の「ありたい姿」を実現するためには、管理職・マネジメント層が、経営層と従業員の橋渡しを適切に行うことが欠かせません。従業員を管理するスキルだけではなく、組織のビジョンや目的を理解しメンバーに伝え・メンバーの「こうしていきたい」という想いを引き出す力が必要になっていきます。そうした彼らへ適切な研修を行うことが、従業員エンゲージメント向上につながるでしょう。
ゼロインがこれまでにプロデュースした事例の中から、従業員エンゲージメント向上につながった事例を紹介します。
静岡県東部エリアを中心に、法人・個人向けのガス事業を展開している富士酸素工業株式会社様は、創業100周年を迎えました。富士酸素工業様はこの100周年を迎えるにあたり、5年以上前から周年プロジェクトを立ち上げ、「次の100年」への一歩を踏みだす準備を進めてきました。
そして、プロミス(経営理念)を従業員主体で策定するプロミス策定プロジェクトや、CI(会社ロゴ)・ユニフォームのリニューアル、従業員や取引先・消費者を対象にしたイベントなど、さまざまな周年記念施策を1年以上かけて順次、展開しています。
株式会社メンバーズは、メンバーズグループ16社(2022年6月開催時点)の社員、約2,300人が参加するグループ社員総会を、オンラインとオフラインを掛け合わせたハイブリッドイベント形式で実施しており、この社員総会の中で会社の模範となる取り組みを共有する『Social Value Award』を行っています。
『Social Value Award』の場では、事前エントリーの中からミッション・ビジョンを体現する10組の取り組みが選ばれ、その取り組み内容を全社員にプレゼンテーションしています。
この社員総会では、ワークショップ内で行われる「社員同士の対話」に重きが置かれています。社員一人ひとりが、日々の業務を通じて発揮していきたい社会的な価値や成し遂げたいことを『Social Value宣言』としてチームでまとめ書き出し、全社に共有しています。
「その日だけ話して終わり」といった一過性のイベントにせず、日々の仕事や日常の中で、社会課題解決に向けた行動や会話を継続的に発生させ、メンバーズのカルチャーとして根づかせることを意図しているのです。
株式会社シンクロ・フード様は設立20周年を迎え、節目となる20周年を全従業員でお祝いし、新たな旅立ちの日とするため、『設立20周年記念イベント』を実施しました。
シンクロ・フード様は設立20周年を迎えた節目のタイミングに、コーポレートブランドとサービスブランドをリニューアルしており、このイベントでは20周年を祝うだけではなく、社内へのブランド共有や、「提供価値」や「目指したい未来」を語るワークショップを行っています。
株式会社リバスタ様は社名変更を行い、従業員を対象にした社内イベント『新社名発表会』を実施しました。この『新社名発表会』では、社名変更の経緯や新社名に込めた想い、そして今後の展望を全社に直接共有する機会を設けています。
イベント開催前には、1年かけて社名変更のプロジェクトに取り組んでいます。なぜなら、社名だけではなく、CI(コーポレート・アイデンティティ)を構成するミッション、ビジョン、バリュー、コーポレートロゴやタグライン、社名に込めた想いのストーリーまで一気に再策定しており、企業の大きな転換点ともいえるプロジェクトだからです。
社名変更は単に言葉が変わるだけではなく、新社名や新CIによってステークホルダーが持つブランドイメージを変えることも必要です。そこで、従業員一人ひとりが日々接するステークホルダーに「リバスタとは」を直接伝えられるよう、新しいブランドについて正しく理解できる機会が『新社名発表会』でした。
『新社名発表会』では、社名発表、コンセプトムービー、社長プレゼンテーションを通じて、従業員に新社名にかける想いや業界における今後の事業展開をメッセージしています。
大和ライフネクスト株式会社様は、新しいビジョンと行動方針『DLN SPIRIT』を策定し、その内容を従業員に共有するお披露目イベント『DLN Spirit Day』を実施しました。約2,000名の従業員が集まる中、役員とビジョン策定プロジェクトメンバーが各々の想いを語りました。
イベントは、『DLN SPIRIT』を共有するシェアードビジョンと懇親会の二部構成で行われました。企業の新しい方向性を伝える重要なイベントのため、参加者の気持ちをいかに高めるかにもこだわり、光を使った演出や、社長が練り歩きながら映像を活用して発表するスーパープレゼン形式を活用しました。
トークセッションでは、「ただ発表を聞く」スタイルではなく、リアルタイムに投票やコメントをシェアできるシステムを利用することで、参加者を巻き込み、反応を確認しながら進行しました。
新しいビジョンと行動指針は、経営陣のワークショップと従業員参加型のワークショップを実施し、「社員みんなでありたい姿を描きたい」という社長の想いを実現しました。みんなで考えて決めたからこそ、「自分たちで実現したい」と本気になって行動が生まれていきます。
イベント後には、策定の背景や込めた想いを確認できるブランドブック『SPIRIT BOOK』を配布し、いつでも原点に立ち戻れるようにしています。また、『DLN SPIRIT』を体現した行動を称賛・共有する『DLN SPIRIT AWARD』も企画・開催し、全社で推奨していく大きな流れをつくっています。
従業員エンゲージメントとは、「自身の所属する会社・組織に対して抱く情熱や熱意、愛着」で、会社の理念や価値観への強い共感、組織への信頼、事業・仕事への誇り、組織文化へのフィット感などを含むことが特徴です。
人材の流動化が激しく、労働力が減少しており、さらに人々の働くことへの価値観が多様化しているこの時代において、従業員エンゲージメントの高い組織になることが社員の流出を防ぎ、ブランドイメージのアップや売上・顧客満足度の増加を促進します。
そうした従業員エンゲージメントの高い企業になるために、実現したい世界観「ありたい姿」を描き、「現状の組織」を正しく捉え、適切な施策を行いながら長期的にトライアンドエラーを繰り返していく必要があります。
最初から施策が上手くいく、目に見える成果が出ることは稀です。広い視野を持ち、粘り強く取り組んでいくことが大事になります。途中で躓いた場合はこの記事に立ち戻りながら、自社の従業員エンゲージメント向上に向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事の著者
露峰 一澄