周年イベント・周年事業を成功させる3つのデザイン

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東京商工リサーチが例年発表している『周年記念企業』のデータによると、2018年に50周年を迎える企業は29,676社、100周年を迎える企業は1,760社にのぼり、パナソニックやシチズンを始めとした大手企業が名を連ねています。

世界で100年続く企業の3割は日本企業といわれており、日本が長寿企業大国と呼ばれる所以も分かります。石川県小松市の善吾楼は、なんと今年1300周年を迎え、その起源は奈良時代にまでさかのぼります。

周年は企業の“節目”とも称されます。お客様向けの販促キャンペーンだけではなく、企業からより距離の近い従業員や取引先、協力会社を対象として、インターナルブランディングを目的に周年行事を実行する企業も多いようです。弊社にも関東地区だけで年間200社超のお問い合わせをいただいています。

周年行事・周年事業は、経営トップが言い出しっぺで、経営企画室や総務部、広報部などが事務局となり、事業部にいるキーマンを巻き込みながら実行していくのが常です。

10年ごとに開催する企業があれば、50周年で初めて開催する企業もあります。日常の業務とは毛色が異なり、社内に専任者もいないため、「何からどう進めて行けばよいかが分からない」という悩みが起こりがちです。

他社の取り組み事例の調査や、経営層が参加したことのある式典の記憶を参考にしたとしても、全部を真似することはできません。「自分たちらしい周年にしたい!」と思うほど、他者事例が参考にならないケースもあります。

そこで今回は、周年行事・周年事業のプロジェクトをスムーズに進めていくポイントは何なのか、全体像を明確にして、イベント開催までを設計する観点をまとめました。

周年イベント・周年事業のプロジェクトをデザインする

周年事業は、最低でも半年、長いときは2~3年をかけて取り組みます。近年は、経営トップのお膝元にいるチームが事務局としてプロジェクトを立ち上げ、徐々に社内のキーマンを巻き込んでいくスタイルが増えています。

ここで大切にしたいのは、プロジェクト内の合意形成をどのように取るかです。企画段階では気が付かなかった問題が、制作が進み、いざ制作物が出来上がろうとしたその時に、いつの間にか大きな問題となっていることがあります。

映像や周年誌など高いクリエイティブ性が求められるものから懇親会の料理まで、具体化して初めてイメージが鮮明になります。制作の経験者や普段から制作業務に携わっている人であれば、企画書や構成案、シナリオなどでイメージの共有ができますが、そういう方は少数です。

企画段階で具体的なサンプルを取り寄せたり、試食会を実施したり、イメージを現実にして見せなくてはなりません。時にはサンプル映像を作ることもあるでしょう。こういった合意プロセスを見越し、手戻りを防ぐためのプロジェクトデザインが必要です。当然そのために、時間も予算も余裕を確保しておくということになります。

画家が大作を創る前に、習作をいくつか作るようなものかも知れません。

周年イベント・周年事業のエクスペリエンスをデザインする

ウェブの世界ではUX(ユーザーエクスペリエンス)、CX(カスタマーエクスペリエンス)という言葉が良く使われています。

従業員に周年という節目をいかに自分ゴト化させるか。次世代リーダー層が「これからの50年は自分たちが担っていくんだ」と思える状態にするにはどうするべきか。創業から今まで積み上げてきたDNAや“らしさ”として社内に宿っているモノをいかに伝承していくか。

これらは、一過性な数時間のイベントだけでは到底実現できません。制作物に関しても、何百ページもある立派な周年誌をいきなり配られて、貪るように読み込む人が果たしてどれぐらいいるでしょうか。

商品やサービスのプロモーション、新商品のリリースであれば、時間と予算の使い方、お客様へのアプローチ方法など、もっと用意周到かつ戦略的に設計しているのに、従業員向けとなると、途端に曖昧になりがちです。

周年行事・周年事業を新商品に見立てると、従業員はお客様になります。ワクワクするような招待状の制作・発送、本イベントに向けてモチベーションがあがるプレイベント、社内報などでの統一キャンペーンでムード醸成、周年誌発刊号に、作者や紙面に登場した方のサイン会やブックパーティーなどもありえるでしょう。

イベント本番だけに予算をかけるのではなく、事前・事後施策を含めた自分ゴト化のためのエクスペリエンスデザイン経費も残しておくと、より効果的です。

周年イベント・周年事業のイベントをデザインする

式典というイベントに目を向けてみます。オープニング映像に始まり、開会の言葉、社長スピーチと続き、記念表彰や来賓スピーチ、記念講演と主だったコンテンツが並べられエンディングを迎える、というのが定番プログラムでしょうか。懇親会やパーティーを式典後の第二部に据える場合も多いでしょう。

最近、「全国から5,000人を超える社員が集まって50周年記念式典があったけれども、経営層やOB役員のご挨拶スピーチが延々と続いて、何も記憶に残らなかった…」という話を友人から聞きました。

熾烈な競争環境の中、50年という歳月を勝ち抜き、何千人という人財を育てた素晴らしい企業が、何億円という投資をしてイベントを開催できたこと自体は、大変すばらしいことです。しかし、参加後の心情が「何も…」では、せっかくの機会が無駄になってしまいます。

周年イベントのプログラムを設計する際は、「節目の年だから」「今まで世話になった人、功労者に対して感謝したいから」という気持ちが高まり、結果的にコンテンツがてんこ盛りになりがちです。それらをなんとなく並べた2時間と、参加者の心情の変化や高まりを意識して設計した2時間では、イベント終了後の参加者の気持ちは大きく違ってきます。

私たちはこうした気持ちの変化を“湯上り感”と呼んでいますが、どのようにして最高の湯上り感まで持っていくか、ここに心血を注ぐべきです。

映画もだいたいは「発端➾展開➾帰結」という三部構成です。イベントデザインに置き換えれば、①参加者が主体的にイベントに入っていけるための「導入」、②参加者自身が集中してコンテンツを体験し、没入する「展開」、③イベントを通して醸成された参加者の気持ちを日常の行動へと紐づけていくための「まとめ」、ということになるでしょう。

語り始めればきりがありませんが、“とりあえず取り掛かる”のではなく、周年行事・周年事業における「3つのデザイン」を意識してみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

並河 研

株式会社ゼロイン 取締役副社長
1984年リクルート入社。広報室でインナーコミュニケーション施策や教育映像を手がけ、40年超の歴史を持つ社内報『かもめ』2代目編集長を務める。2009年ゼロインの取締役就任。以降、多数の企業で組織活性化をプロデュース。並行してアメフット社会人チーム『オービックシーガルズ』運営会社、OFC代表取締役としてチームをマネジメント。

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