静岡県東部エリアを中心に、法人・個人向けのガス事業を展開している富士酸素工業株式会社様は、2022年に創業100周年を迎えました。富士酸素工業様はこの100周年を迎えるにあたり、5年以上前から周年プロジェクトを立ち上げ、「次の100年」への一歩を踏みだす準備を進めてきました。
そして、プロミス(経営理念)を従業員主体で策定するプロミス策定プロジェクトや、CI(会社ロゴ)・ユニフォームのリニューアル、従業員や取引先・消費者を対象にしたイベントなど、さまざまな周年記念施策を1年以上かけて順次、展開しています。
ゼロインはこの100周年プロジェクトにおいて、プロジェクト全体の企画・ディレクションや、プロミス策定ワークショップの企画・運営、映像制作、周年記念特設サイト制作、ノベルティ制作、イベント運営など、プロジェクトの設計と各施策の企画・実行をトータルプロデュースしました。
従業員を巻き込んだプロミス策定やブランドリニューアルなど、会社の大きな転換期となった100周年に対する想いを、代表取締役の望月悠平さんと経営企画部 部長の山田教生さんにお聞きしました。
お客様情報
目的
ゼロインのサポート内容
100周年を迎えるのは2022年6月17日でしたが、2019年から100周年プロジェクトは動きだしていました。1年前の2021年からは周年ロゴ作成やプロミス策定ワークショップが始まり、2022年には策定したプロミスの社内浸透イベントを実施することで「次の100年」の方向性を社内の共通認識にしています。
そうして100周年記念日を迎え、100周年の感謝と新しいブランドを社外に向けて発信していきました。
会社のプロミス(経営理念)を従業員主体で策定するプロジェクトです。従業員の中から、部門・職種・役職を横断した15人がメンバーとして参加し、半年の期間をかけて、6回のワークショップを経て策定しました。
ワークショップでは、未来を自由な発想で描いたり、社内アンケートをもとに議論したり、社外のステークホルダーの声から自社らしさをとらえなおしたり、さまざまな角度から考え抜いて言葉をつくりあげます。
プロミスとは、ステークホルダーへの約束であると同時に、従業員一人ひとりが実践し、実現していく自分たちへの約束です。
プロミス策定ワークショップによって完成したプロミスは、周年記念日を迎える前に社内向けイベント「プロミス共有会」にて従業員に発表されました。プロジェクトメンバーが司会進行を行い、プロミス完成に至るプロセスや生まれた議論、使用した言葉一つひとつに込めた想いを語ります。
その後、プロミス共有を受けた従業員が車座になり、「プロミスに感じたこと」や「プロミスの実現に向けて、富士酸素工業ができること」などを周囲にシェアし合いました。懇親会では、自社製品を利用している取引先様のビールやおつまみを用意して、地域・社会を支える自分たちの仕事をあらためて実感しています。
プロミス策定を終えたプロジェクトメンバーが、プロミスに込めた想いを語るインタビュー映像です。
プロミスで使用したフレーズや言葉一つひとつについて、なぜその言葉を選んだのか、どのような意味を持たせたのか、会社・自分たちは何を実現したいのか、お客様に何を提供したいのか、次の100年を考えながら取り組んだプロジェクトを振り返りながら語っています。
コーポレートサイトとは別に、100周年記念特設サイトを開設しました。プロミスを中心に、プロミス映像、代表挨拶、プロミス策定プロセスの公開、プロミス策定メンバーインタビュー、リニューアルした会社ロゴ・ユニフォーム紹介、日常で富士酸素工業の商品が活用されているシーンの紹介、歴史映像と盛りだくさんのコンテンツを掲載しています。
プロミスを映像化し、プロミス映像として公開しています。「きたいで満ちた日常を」というプロミスのキーメッセージをもとに、富士酸素工業が地域の日常にどのように関わり、何を実現したいかを表現しています。また、実際のお取引先様や従業員がプロミス映像内に出演しており、本物を撮影することにこだわりました。
大正11年(1922年)の創業以来、富士酸素工業がどのように歩みを進めてきたかを映像化しました。社内に残る写真などの素材が少ないため、アニメーションを活用して表現しています。
時代背景を交えながら、社会が変化する中で富士酸素工業がどのように機会をとらえて成長してきたか、地域とどのように関わり貢献してきたかなど、富士酸素工業の“らしさ”を抽出したストーリーに仕立てています。
CI(会社ロゴ)とユニフォームリニューアルは、富士酸素工業様が直接依頼されたデザイナーの相澤陽介様が手がけられました。100周年記念特設サイトにデザイン意図が紹介されています。
ゼロイン横川:今回、100周年という大きな節目を迎えるに際して、次の100年を見据えた「プロミス(経営理念)」を従業員主体で策定されました。コーポレートロゴやユニフォームをはじめとするコーポレートブランドのリニューアルにも取り組み、社内外に発信されています。周年記念日を起点に前後1年以上をかけて施策を展開する周年プロジェクトになりましたが、どのような想いからプロジェクトがスタートしたのでしょうか。
私は2015年1月に富士酸素工業に入社(2019年に5代目社長として代表取締役に就任)したのですが、その頃に抱いた課題感が周年プロジェクトのもとになっています。入社当時、社内を見渡してみると、組織や仕組みに旧来の慣行や思考が残っており、見直すことで企業としてより成長できる改善点を数多く発見しました。
そこで、すぐに着手できることは改善を進めていきました。分かりやすい例では、セールスフォースの導入やペーパーレス化などのデジタル化や、働き方改革の推進が挙げられます。ほかにも企業を成長させるために「やらなくてはいけないこと」「やりたいこと」はたくさんあり、取り組んできました。
ただ、仕事の仕方や仕組みではない、従業員のマインドやスタンスを対象としたインナー領域に関しては、「100周年」という企業の節目に行うことで従業員を巻き込みやすく、施策の効果を高められるのではないかと考えおり、100周年プロジェクトに組み込むことにしました。
ゼロイン横川:インナー領域の核となる施策が「プロミス(経営理念)」の策定でしたよね。社内に掲げてあった経営基本方針が実は先代社長が好きな松下幸之助の言葉で、企業理念がなかったことに望月さんが驚かれた、という話を思いだします(笑)。いつ頃からプロジェクトを具体的に構想されていたのでしょうか。
2019年から100周年に向けた議論を社内で始めていました。大正11年(1922年)に創業して2022年6月に100周年を迎えるので、1年前の2021年にはプロジェクトの中身を固めておかなければ周年記念日をしっかりと迎えられないと考えていました。
構想が具体化したのは周年2年前の2020年8月です。今後の富士酸素工業を担う若い従業員を中心に、歴史を知る社歴の長い従業員も巻き込むことを意識しながらプロジェクトを設計しました。
インナー施策をプロジェクトの中心に据えつつ、新しいブランドを社内外に発信することでブランディングを行いたいと考えており、単純に式典やパーティーなどの形式的な祝い事だけで終わらせたくはありませんでした。
そうすると自分たちだけでは知見がなく完遂できないので、100周年を一緒につくってくれる、インナー領域に強いパートナー企業を探してゼロインさんにお声がけしました。今回の100周年プロジェクトを実施するにあたって何社かにお声がけしましたが、ゼロインさんの柔らかさは印象的でした。
企業の周年をサポートする企業には、それぞれイベント、旅行、周年記念誌などの得意領域があり、手段が型にはまっている印象がありました。一方で、ゼロインさんは柔軟な発想と幅広いネットワークを持っているので、構想や企画を実現する方法が多様で、いろんなことに取り組めました。
ゼロイン横川:ありがとうございます。今回、富士酸素工業様の100周年プロジェクトをお手伝いして感じたのは、歴史はあるけれども昔からの考え方や手法に固執していない、良い意味での身軽さがある点です。だからこそ、歴史の重みにとらわれず、未来志向で取り組めたのだと感じます。
通常、100周年を迎えるような企業では、それまでの周年タイミングで社史や周年史を編纂して、企業としての形を残しているからかもしれませんね。当社はそうした活動をしていなかったため歴史は写真が数枚しか残っていないような状況で、経営理念やビジョン・ミッション・バリューを設けずに90年以上を歩んできました。
その意味では、今回の周年には企業の核をつくりにいった面もあります。プロミスの策定でも、経営や役員がつくるのではなく、これから未来を担う従業員が主体となって考えてほしいという想いがありました。
やはり100周年の機会は、歴史を振り返ることも、未来を描くことも取り組みやく、プロミス策定には最適なタイミングだったと思います。
ゼロイン横川:プロミスは全従業員の中から15人のメンバーを選出し、半年をかけた6回のワークショップによって策定されました。策定後にはプロジェクトを振り返ったインタビュー動画も制作しましたが、みなさん想いがあふれていて、とても素敵なインタビューで感動しました。
ゼロイン横川:会社の代表として会社の未来を堂々と語っていて、インタビュー撮影が終わった後も語り足りないのか、いろいろとお話されていました。望月さんは、このプロミスの策定時期、完成時期にもこだわりを持たれていましたよね。
プロミスは100年と1日目から社外・社会に打ちだして、未来へと一歩を踏みだすようにしたいと考えていました。途中、感染症の影響を受けてプロジェクトが一時中断したため当初の計画よりも約半年後ろ倒しになりましたが、周年記念日にはしっかりと発信することができました。
ゼロイン横川:周年で取り組むブランディングの話は、重要度は感じていても緊急度が高いと判断されない場合も多く、富士酸素工業様のように2年以上をかけて綿密に計画・準備される会社は実は多くありません。企業の周年記念をお手伝いしていて、もう半年前にご相談いただければお客様のご要望をもっと実現できるのに、と歯がゆく感じることも多いです。
周年のように従業員を巻き込んだプロジェクトは、いざ動きだしてみるとプロジェクトメンバーの方々から、「あれもやりたい」「こんなことはどうか」とアイデアが次々に出てきます。時間の都合で諦めなくてはいけないことも多いのですが、富士酸素工業様のように事前準備に余裕があれば可能性は広がります。
当社の場合、責任者と実行者を代表の私が担ったことが大きいと思います。これから100周年を迎える、というタイミングで入社して、内情を見ていろいろ考えさせられることがあったからこそ、周年プロジェクトの目的を明確に、温度感を保ったまま取り組むことができました。
ゼロイン横川:2021年からプレ100周年として動きだし、2022年の年賀状に100周年ロゴを取り入れ、100周年プロジェクト全体像の社内共有、従業員向けのプロミス共有会、CI(企業ロゴ)やユニフォームのリニューアル、100周年記念特設サイト、ブランド映像、ノベルティなど、さまざまな周年施策を展開しながら、100年と1日目を全従業員でスタートしました。実際に100周年を迎えられて、いかがですか。
やっとここまで来たか、という思いを持っています。入社以来、「100周年を機に社内と社外にしっかりとブランドを発信したい」と構想してきましたが、このタイミングでしかできないと思っていたことを実現できている実感があります。
発信を受け取ったステークホルダーのみなさまから、嬉しい反響もいただいています。お客様からは、当社の100周年をうけて「今後もお付き合いをしていきたい」とお手紙をいただいたり、実際にお会いしたときにお声がけいただけたり、私たちがお伝えしたいと考えていた想いが伝わっているのだと思います。
採用の観点でも、借りてきた言葉ではない自分たちの「プロミス」ができたことで、しっかりとした下地ができた感覚があります。これまでは採用ブランディングを考えるときに、「富士酸素工業の強みは何か?」に対する言語化の難しさや、未来に向けた明確なビジョンがない辛さがありました。
当社には社歴の長い従業員も多いですが、いつまでも働き続けられるわけではありません。採用シーンで自分たちのブランドを発信し続けることで若い人が興味を持ち、「この会社で働いてみたい」と未来を担う人材が入社してくれる会社にしていきたいですよね。
今回のプロミス策定は、既存社員のマインドが少しずつ変化していくことも期待していますし、プロミスに共感してこれから入社してくる従業員はまた違う感性を持っていると思います。そうした従業員が混ざり合うことで、新しい富士酸素工業が見えてくると思います。
ゼロイン横川:プロミスの実現、次の100年に向けて、今後どのように取り組んでいきますか。
従業員の意識や行動を変化・成長させていく、という観点では、ここがスタートで、これから一人ひとりがどう変われるかが重要です。1年前からプロミス策定に取り組むことで変化の準備期間を設けてきましたが、ついに創業記念日の6月17日、そして次の100年に向けた一歩目となる18日が過ぎました。
今後、どのように行動しなければならないかは私たち経営も考えなくてはいけませんし、従業員一人ひとりにも考えて、実行してくれることを期待しています。経営からの「問いかけ」を投げっぱなしではいけないので、問いかけについて従業員から経営に投げ返してもらう、それを受けてまた経営から問いかける、というコミュニケーションを繰り返していこうと思います。
また、プロミスを従業員が体現する一つの場として、社外向けのカンファレンスやエキスポの場があります。当社には法人のお客様も個人のお客様もいらっしゃいますので、そうした方々と直接やり取りをすることで多くのお客様に支えられていることを実感して、あらためてプロミスの言葉をとらえなおして、未来に向けた行動をできるようになってほしいですね。
全員がいきなり変わることは難しいと思いますが、継続的に設ける場や機会を通じて、意識や行動が変わる従業員は必ず生まれてきます。そうして変化した仲間に賛同・共感した従業員が一人、また一人と増え、全体がプロミスを体現できるように成長していくことを期待していますし、そうなることが楽しみにしています。
企業の周年記念を活用したインナーブランディングの考え方を、無料の動画セミナーで公開しています。基礎講座2本と事例3本、計5本50分で全体像を理解することができます。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。