BPOに関するアウトソーシングサービスやコンサルティングサービスを幅広く手がける株式会社TMJ(以下、TMJ)は、2022年4月1日に30周年記念を迎えました。
TMJでは、これまでの周年記念をマネジャー以上の正社員を集めた式典形式で実施していました。しかし、30周年の企画に際しては、コロナ禍収束の見通しが立たない中で集合型イベントを計画することは難しい状況にありました。また、「多くの従業員を参加させたい」という思いはありながらも、24時間365日稼働するコールセンター事業の特性上、従業員が一堂に会することは難しく、どうすれば従業員に自社の周年を感じてもらえるのか、参加感の醸成にお悩みでした。
そこで今回の30周年では、すべての従業員が周年記念に参加できる機会を設けるために、オンラインとオフラインを掛け合わせた複数の施策を約1年かけて実施する、30周年プロジェクトに取り組みました。
ゼロインはプロジェクトの全体設計から各施策の企画、周年ロゴや周年記念サイト、映像の制作、そして年間を通じたプロジェクトマネジメントによる伴走で、TMJの30周年をトータルプロデュースしました。
新しい形にチャレンジした周年記念の取り組みについて、30周年プロジェクトを統括した広報室 室長の泉重年さんにお聞きしました。
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30周年プロジェクトは、「アウター(社外)」と「インナー(社内)」の二つに分けられます。
アウターに対しては、30周年を迎えたことが一目で分かる周年ロゴを制作し、名刺やコーポレートサイト、ノベルティや各種資料・備品に展開しています。また、周年記念の特設サイトを公開し、TMJのこれまでの歩みをビジュアル化したコンテンツやステークホルダーとの対談記事を公開しました。
インナーに対しては、以前から取り組んでいたインナーブランディング施策のキックオフミーティングや社内報、タウンミーティングに30周年を絡めて展開しています。そして新しい試みとして、日本各地の拠点を巻き込んだ「社内TV」企画や「e-Sports大会」を開催し、雇用形態や役職を越えてより多くの従業員が参加できる機会を設けました。
周年ロゴは候補を複数制作し、最終的に利用するロゴは従業員投票で決定しました。周年期間を通じてさまざまなシーンで活用される象徴的なロゴで、600人を超える投票が集まりました。
社外に向けて、30周年を迎えたことに対する感謝や、今後に向けた決意を伝えます。丸山社長からの挨拶や、ミッション・ビジョン・バリュー、数字で見るTMJの30年、ステークホルダーとの特別対談記事など、社内の従業員が閲覧しても興味深い内容になっています。
「会えないなら会いに行く」をコンセプトに、丸山社長が拠点を訪れ、その模様を収録・動画化して社内に発信します。拠点ごとに経営や拠点従業員を巻き込んだ特色ある参加型の企画が立てられ、拠点の良さやTMJで働く従業員の魅力を感じられる動画企画になりました。
CI(コーポレートアイデンティティ、経営理念)浸透を目的に30周年以前から実施していたCIタウンミーティングも、30周年と絡めながら実施しました。テーマを「2050年、私たちの生活はどのように変わっているか?」に設定し、「自分の生活がどのように変わっているか?」「生活の変化からどのような社会ニーズが生まれ、そのときにTMJが果たせる役割は何か?」と、未来に視点を置いた対話を行いました。
当日の会話内容はグラフィックレコーディングによってビジュアル化しており、議論の拡散や共通認識の形成に一役買いました。
ゼロイン:今回の30周年プロジェクトは、「集合型のイベントは想定しない」というご要望から全体設計・企画が始まりました。どのような背景から、こうした判断をされたのでしょうか。
やはり検討タイミングがコロナ禍の只中であったことが、背景の一つとして挙げられます。その時点では来年の状況について見通しを立てることが難しく、大勢が集う集合型のイベントを前提としない周年プランの設計が必要でした。
もう一つは、24時間365日稼働するコールセンターという当社のメイン事業の性質上、すべての従業員が集合型のイベントに参加することは現実的ではない、という点です。
コロナ禍以前は、年に1回もしくは2回、マネジャー以上が集まるキックオフミーティングを実施しており、20周年や25周年はそのキックオフミーティングの流れで周年式典を開催していました。ただこの形式では、マネジャー以外の従業員は参加することができず、せっかくの周年の機会に従業員を巻き込めていないことへの問題意識を持っていました。
コロナ禍によってオンラインでのコミュニケーションも普及し、当社でもさまざまな社内施策をオンラインで実施できるようになっていました。そこで今回の30周年では、新しい形式にチャレンジすることで、なるべく多くの従業員が周年を感じられるようしようと、要件を定めました。
ゼロイン:周年プロジェクトのパートナー選定に際して、重視していたことは何でしたか。
なるべく多くの従業員を巻き込みたかったので、「何か大きなイベントを一回実施して終了」といった、打ち上げ花火のような形式にはしたくありませんでした。その観点で、「多くの施策を散りばめて、年間を通じて周年に取り組みましょう」というゼロインさんの提案は響きました。
周年以前から取り組んでいたCI(コーポレートアイデンティティ、経営理念)浸透でも、大きく盛りあげたものを、どう継続して、従業員一人ひとりの心に根差していくかについて、頭を悩ませた経験があります。
たとえば、新CIの発表で感動的な映像を流してワッと盛りあがっても、その瞬間はたしかに印象的なのですが、それ以降で日常的に触れる機会がなければどうしても記憶は薄れてしまいます。そうした一過性に対する不安を解消する、一定の期間を伴走してくれる周年プロジェクトの提案がゼロインさんでした。
ほかにも、提案前後に会話する中で他社事例やインナーブランディングの知見を豊富に蓄えている会社だと感じたので、周年プロジェクトに一緒に取り組みながらゼロインさんのノウハウを吸収することで、今後の自社インナーブランディング活動に役立てられるだろう、という期待もありました。
ゼロインさんも良い人たちなので、聞けばいろいろと教えてくれるだろうとも思っていましたしね(笑)。
ゼロイン:周年プロジェクトは、どのような体制で進めていったのでしょうか。
周年プロジェクトは全社横断プロジェクトとして組成しました。プロジェクトメンバー21名と事務局4名の総勢25名体制で、代表取締役社長の丸山がプロジェクトオーナーを務め、ゼロインさんにパートナーとして伴走していただきました。
先程も少し述べましたが、当社では今回の周年以前からCI浸透プロジェクトが立ち上がっており、北海道、東日本、西日本・九州と、エリアごとに浸透施策が実施されていました。この各エリアのプログラム組織を軸に、各地の拠点から部長陣を筆頭にメンバーが参画してくれています。
CI浸透プロジェクト自体、「TMJの社内風土をより良くしていきたい」という思いを持った方々が参画していたので、周年プロジェクトでも参画者が出やすい土台がありました。
ゼロイン:「打ち上げ花火に終わらせない」ことを目指してプロジェクトに取り組みましたが、従業員の方はこの30周年をどのようにとらえたのでしょうか。
従業員が周年を意識したのは、周年ロゴを決める事前投票を実施したタイミングだと思います。約600人からアンケート回答がありましたが、未回答者を含めて「来年度は30周年なのだ」と明確に意識するきっかけになったのではと感じています。
さまざま施策を実施して、それぞれ反響がありましたが、特に従業員からの評判の良かった企画が、『TMJ-TV』と『e-sports大会』でした。
『TMJ-TV』は社長が各拠点を訪問する企画で、その拠点の従業員はもちろん、映像を視聴した他拠点の従業員からも評判が高かったです。企画は緩い雰囲気のものにしたので、「TMJの空気感がよく分かる」や「“さん”付けで呼ぶ文化を含めて、社内の距離感が分かる」といった声がありました。
経営陣が偉そうな講和をするのではなく、従業員とのコミュニケーションを重視したことが評価を高めたポイントではないでしょうか。社長が各拠点のメンバーと一体となって企画を盛りあげようとしている様子が見え、文化祭のような雰囲気で会社らしくなく、単純におもしろいと感じてくれたのだと思います。
これらの撮影には、拠点で働く多様な階層の従業員が協力してくれたのですが、「初めて社長を生で見た」という芸能人に会ったような反応もあり、実際に会うことで生まれる印象の重要性も再認識しました。
年間を通して、未来を考える機会があったことも30周年の特徴でした。「TMJが将来どうなっているのか」「AIや社会情勢の変化によってTMJのビジネスはどう変わるのか」と、緩い議論から真面目なものまで局所的に生まれていました。今後、35周年、40周年を迎えていくに際しては、継続的に未来のことを考えていくというのは一つのテーマになっていくと思います。
ゼロイン:事務局として周年プロジェクトを振り返って、どのような感想をお持ちですか。
今回の周年は、「過去を振り返って」や「未来はこうあるべきだ」といった堅苦しい内容にはしませんでした。全体を通して緩い空気感を意識しましたが、そうした空気感から「TMJってこんなことができるんだ」「意外な一面を知れて新鮮だった」「単純におもしろかった」と、周囲の従業員やアンケートから嬉しい反響が聞こえてきました。
「みんなでやっていこう」という全社の一体感も生まれましたし、「ここまでやって良いんだ」というチャレンジ精神も共有できて、良かったと思います。
また、今回の周年プロジェクトの主役は拠点の従業員のみなさんで、拠点のみなさんの協力なしには盛りあがりませんでしたが、「周年を通じて、自分たちで拠点をもっと盛りあげなくてはいけないと感じた」という声もあり、非常に頼もしく感じました。
ただ、反省点もあります。なるべく多くの従業員に参加してもらうためには拠点の巻き込みが重要ですが、積極的に参加してもらうための準備や合意形成には想定以上に時間がかかりました。また、多様な企画・アイデアが出るので、最終的にどのように決定していくかは、意思を持って進めていく必要があると実感しました。
何より、通年で周年施策を行うのはこれほど大変なのか!という率直な感想もあります(笑)。年間を通じて取り組むと決めたものの、実際に取り組んでみて、これはゼロインさんに伴走していただかなければ、絶対にやり遂げられなかったなと感じます。
ゼロイン:ゼロインへの多くの期待から周年パートナーに選定いただきましたが、今回の周年プロジェクトにおいてゼロインはどのようにお役に立てたでしょうか。
周年立案フェーズはもちろん、企画以前の課題設定から一緒に考えていただけたのは非常に助かりました。また、企画が固まった後の施策を具体化する、実現するフェーズでもフットワーク軽く対応いただけました。
特に、企画検討開始が少し遅れた『TMJ-TV』でのスピード感は、非常に頼もしく感じていました。最終的には拠点の従業員との打ち合わせもゼロインさんにすべて参加いただき、内容を固めていきましたよね。
印象的だったのは、私たち事務局だけでなく、企画に関わった現場の従業員もゼロインさんや担当の方の名前を覚えるくらい、積極的に現場も巻き込んでコミュニケーションを取っていただいたことです。
社内の会議で「外部パートナー会社が~」ではなく「ゼロインさんが~」と会話ができていたのは凄いことだと思います。挨拶も「お世話になります」ではなく「お疲れ様です」と言い合える、そうした関係性でプロジェクトが推進できました。
ゼロイン:ありがとうございます。最後に、今後のインナーブランディングのビジョンを教えてください。
当社は教育事業を源流とする創業の経緯から、「人の成長を支える」「教育を大切にする」文化をTMJらしさとして育んできました。
現在のインナーブランディングの指針は、2016年末から議論を開始し、2018年2月に体系化されたCI策定プロジェクトにあります。それまでは経営理念で「クライアントバリュー」を掲げていた通り、「クライアントのビジネスゴール達成」を圧倒的に重視していました。
しかし、CI体系化の議論の中ではもう一歩踏み込んで、クライアントの先にあるカスタマーや社会を見据えた、「社会におけるTMJ」にまで視点を広げています。「TMJが社会の中で何を実現するのか」「TMJはどのような役割を担うのか」「そのためにやってはいけないことは何か」などを議論して、CIが整理されています。
このCIは、雇用形態によって数値に違いがあるのですが、従業員に対する浸透調査では「共感」や「好感」の数値が軒並み高い水準を維持しています。入社時にも時間を取ってレクチャーしており、今後も継続的なインナーブランディング活動を通じてCI浸透と共感を高めようとしています。
今回の30周年プロジェクトを通じて、インナーブランディングに活用できる、対話やコミュニケーションに関する気づきやヒントを多く得られました。これらのノウハウを生かして、TMJで働く従業員が「この会社、良いよね」とより感じられる施策に今後も取り組んでいきたいと思います。
企業の周年記念を活用したインナーブランディングの考え方を、無料の動画セミナーで公開しています。基礎講座2本と事例3本、計5本50分で全体像を理解することができます。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。