インナーブランディングは、社内に対するブランディング活動です。自社で働く従業員を対象に、企業が掲げるブランドや重視する価値観、ビジョン・ミッションなどを共有します。
近年ではパーパスやプロミスなどを、次世代を担う社員が主体となって策定するインナーブランディングプロジェクトを立ち上げる企業も増えています。経営層が策定したものを上意下達するのではなく、社員が経営層や管理者層、ときには社外を巻き込みながら、自分たちが実現したいブランドづくりに取り組むのです。
インナーブランディングは、効果的に取り組むことで従業員のエンゲージメントや働きがいを高めます。なぜなら、「自分たちが何を実現したいのか?」といった目指す姿や目標が定まり、「仕事を通じてどのような価値を提供できるのか」「どのような役に立つのか」「なぜ自分たちがやるのか」といった社外への提供価値や仕事の意義・意味が明確になることで、自分の仕事に自信や誇りを持てるからです。
働く価値観や社会環境が変化する中で重要性が増すインナーブランディングですが、経営課題や組織課題と密接に関連するため、各社の取り組みの詳細が公になることは多くありません。そのため、どのように取り組めば良いのか、その実態は不透明で悩まれる方が多いのが実情です。
この記事では、インナーブランディングのプロジェクトや施策を年間200件プロデュースするゼロインが、インナーブランディングの成功事例を参考に、基本的な考え方や効果、進め方を解説します。
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目次
インナーブランディングとは?一般的なブランディングとの違いブランディングの対象の違いブランディングの実施目的の違いブランディング手法・施策の違い成果・効果測定の観点の違いインナーブランディングが求められる背景と、狙いたい効果・メリット働く選択肢や価値観の多様化。人材不足の時代に選ばれる組織づくり社会・市場が変化し続ける不確実な時代に必要な企業文化・カルチャーインナーファーストのブランディングによるブランド構築の必要性世の中におけるインナーブランディングの成功事例東京ディズニーリゾート(株式会社オリエンタルランド)におけるインナーブランディング株式会社リクルートにおけるインナーブランディング株式会社アカツキにおけるインナーブランディングアッヴィ合同会社におけるインナーブランディング豊通マテリアル株式会社におけるインナーブランディングヤンマー株式会社におけるインナーブランディングゼロインがプロデュースしたインナーブランディングの成功事例事例|プロミス策定とブランドリニューアルで次の100年へ|富士酸素工業株式会社事例|ハイブリッド社員総会で向き合う社会課題解決|株式会社メンバーズ事例|ブランドリニューアルで新たな未来を目指す20周年イベント|株式会社シンクロ・フード事例|未来へとつながる社内イベント「新社名発表会」|株式会社リバスタ事例|新ビジョンを体感する社内イベント|大和ライフネクスト株式会社事例|70周年事業で感じる仕事の価値と誇り|東京管公学生服株式会社インナーブランディングを成功に導く4つのステップブランド策定(リブランディング)社員がブランドを理解・共感する機会づくり社員のブランド体現行動を推奨する企業文化・カルチャーづくり社員の中に生まれるブランド体現行動の表出・称賛インナーブランディング・社内ブランディングの全体設計・実行支援ならゼロイン社内プロジェクト支援サービスの紹介 インナーブランディングの全体設計から浸透施策の企画・実行をワンストップ支援!
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インナーブランディングは、社内に対するブランディング活動です。インナーブランディングという呼称が一般的ですが、インターナルブランディングや社内マーケティング、インナーマーケティングが同じような意味で使用されることもあります。
インナーブランディングと一般的なブランディング(この記事では、インナーブランディングに対してアウターブランディングと表記)とは、「ブランドを、対象のステークホルダーに共有することで、共感や行動を生みだす」という点で共通する部分があります。では、どのような点が異なるのでしょうか。
簡単に整理すると、インナーブランディングとアウターブランディングでは、「ブランディングの対象」「ブランディングの実施目的」「ブランディング手法・施策」「成果・効果測定の観点」が異なる点といえます。
インナーブランディングとアウターブランディングで大きく異なるのは、ブランディングの対象となるコアターゲットです。
インナーブランディングでは、その企業で働く従業員が対象となります。一方で、アウターブランディングは、主に社外のステークホルダーであり、その中でも売上・利益に直結しやすい顧客やカスタマーが最重要の対象となります。さらに中長期的な観点や企業価値向上の観点から、発注先企業や学生・求職者、地域・社会まで、幅広いステークホルダーが対象となる場合もあります。
インナーブランディングの実施目的は、企業が掲げるブランドや重視する価値観、ビジョン・ミッションを社内に共有することで、企業が将来的に目指す「ありたい姿」を実現するための従業員一人ひとりの行動を促すことにあります。
アウターブランディングの実施目的は、売上・利益につながるような好意的なイメージや信頼をステークホルダーに醸成することにあります。ただし、近年では単に企業の売上・利益を追求するのではなく、SDGsの観点からCSV経営に取り組む企業もあり、顧客やカスタマーを巻き込んだブランディングに取り組む企業も増えています。
インナーブランディングでは、積極的に従業員を巻き込みながら施策に取り組みます。代表的なインナーブランディング施策には、ブランド策定プロジェクトを筆頭に、策定したブランドを共有するワークショップや社内イベント、社内報や社内SNS、ブランド映像やクレドなど、オンライン・オフラインやメディアを問わない多様な手法・施策があります。
インナーブランディングの効果を高める観点では、決定済みのブランドを一方的に発信するのではなく、策定プロセスや浸透プロセスに従業員をいかに巻き込めるかがポイントです。
アウターブランディングでは、テレビやネットメディア、SNSを活用した広告宣伝やプロモーション活動によるブランド拡散が代表的な取り組みです。顧客やカスタマーがブランド策定のプロセスに関与することはほとんどなく、企業が定めたブランドイメージを受け取ることが一般的ですが、SNSの拡散を意図した巻き込み型のアウターブランディングを目にする機会も増えています。
インナーブランディングの成果・効果測定は、担当者の頭をもっとも悩ませるポイントです。近年ではさまざまな企業からエンゲージメントサーベイのサービスがリリースされており、従業員の働きがいやブランドの理解・共感度を定量的に計測する選択肢が増えてきました。
ただし、インナーブランディング活動だけがそれらのサーベイ結果に影響するわけではなく、業績や所属組織・部署の雰囲気や人間関係、個人のライフステージ変化によるキャリアの方向性の変化なども影響するため、インナーブランディングの成果のみを純粋に評価することはまだ難しい面もあります。企業によっては、社内・従業員の評価だけではなく、社外目線のブランド調査によってその効果を測る企業もあります。
アウターブランディングの場合は、ブランディングキャンペーンが売上・利益にどの程度貢献したのかを測定します。また、ブランド調査や顧客満足度調査などの成果を可視化する場合もあります。
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ゼロインには、インナーブランディングに関する相談が増えています。その背景には社会変化や働くことに対する価値観の変化・多様化があり、企業におけるインナーブランディングの重要性は今後より一層高まると考えています。インナーブランディングが求められる背景をひも解くと同時に、狙いたい効果の考え方を紹介します。
まず、生産年齢人口の減少や副業・兼業の普及、フリーランスなど働き方の多様化、そして働くことの価値観自体が変化していることが、大きな要因として挙げられます。
終身雇用が当たり前で会社主体でキャリアを左右される時代から、20代から何社も転職して自分でキャリアをつくっていく意識が広まってきています。人材の流動化が進み、生産年齢人口の減少を背景に新卒採用・中途採用の難易度が上がる中で、「優秀な人材が、いかに自社で働き続けてくれるか」は重要な経営課題です。雇用する企業が「働く人を選ぶ」のではなく、働く人がこの会社でなら働きたいと「企業を選ぶ」時代です。
そうした中で、物質的に豊かで成熟した社会で育った若い世代を中心に、「自分らしく働けるか」や「社会貢献」「社会的な意義・意味」を大事にする傾向があります。つまり、金銭的な報酬やステータス、職務内容だけではなく、パーパスやビジョンなど会社が掲げる「ありたい姿」や、企業文化・カルチャーに「共感できるか」が重要視されているのです。
このような変化を受けて、企業は自社の存在意義や大事にする価値観をあらためて明確にし、従業員に積極的に共有する必要があります。そうして、企業が「何を目指すのか(ビジョン)」や「なぜやるのか(パーパス)」と、個人のありたい姿(キャリアのビジョンや、大事にしたい生き方)が重なり合い共感が生まれることで、その会社で働く(働き続ける)意味が生まれてきます。
この共感が生まれると、従業員がみずから「やりたい」「実現したい」と思うことは、会社が実現したいことと重なるため、自発的でエンゲージメントの高い従業員の行動が生まれるようになります。その結果、企業のブランド価値を高めることにつながりますし、従業員の生産性や定着率の向上を見込むこともできます。
現代はVUCA時代とも呼ばれ、変化が激しく、不確実で予測困難な時代です。正解のあるプロセスを標準化・マニュアル化によって生産性を高めて市場で生き残るというモデルは通用しづらくなっています。
テクノロジーの進化や価値観の変化は、これまでの成功モデルやベストプラクティスをあっという間に陳腐化させ、代わりにイノベーションや新しい価値創出が求められます。誰も正解を知らない時代でもあり、経営層や管理者層だからといって成功に再現性を持たせることは難しくなっています。そうした時代では、会社の目指す「ありたい姿」にもとづいて、従業員一人ひとりがみずから考え、新しいことに挑戦していくような自律的で自発的な組織づくりが必要になります。
もちろん、全員がバラバラの考えで自由に動いていては組織の意味がありません。そこで、共通の核となるブランドや目指す方向性を指し示すビジョン・ミッション、行動する際の判断基準となるバリューなどを共通の価値観とし、その土台で自律的な行動を促すのです。
経済産業省が取り組む『人的資本経営の実現に向けた検討会』でも、従業員エンゲージメントや企業文化の重要性が言及されており、人材戦略に求められる3p・5Fモデル(3つの視点と5つの共通要素)として取りあげられています。
ブランディングと聞くと、テレビCMを中心とした広告・プロモーション(アウターブランディング)が一般的にはイメージされがちです。このアウターブランディングによって形成される企業やサービス・プロダクトのブランドイメージは、企業側が発信した情報だけでは完結せず、カスタマーや消費者が見聞きしたり実際に利用したりする「体験」を通じて最終的に形成されます。
こうしたカスタマー・消費者の体験を生みだす根底にあるのは、従業員一人ひとりの行動にほかなりません。つまり、ブランド構築においてはアウターブランディングを先行させるのではなく、むしろ従業員の意識や行動に変容をもたらすインナーブランディングこそ先んじて取り組むべきである(インナーファースト)、という考え方もできます。
たとえば、「食の安心・安全」をうたって見栄えの良いテレビCMを数多く放送する飲食チェーンに訪れたところ、接客する従業員が不潔でキッチン内も乱れていたらどうでしょうか。テレビCMで受けた好印象のブランドイメージではなく、自分で体験した店内のイメージがその企業のブランドイメージになるはずです。BtoB企業でも、提案するセールスやカスタマーサクセスの一挙手一投足によって、その企業のブランドイメージがつくられるはずです。
顧客と直接的に接点を持つ従業員以外に企画や開発を行う従業員も同様で、最終的にカスタマー・消費者に届くサービス・プロダクトがどのような思想やミッションのもとでつくられたのかは伝わるものです。インナーブランディングによって会社の目指したいブランド価値を体現する行動が生まれない限り、どれほどアウターブランディングに取り組んでも、むしろ期待と体現のギャップは失望を生むため逆効果になり、ブランドは毀損します。
近年では、個人の体験はSNSを中心に爆発的に世の中に広まり、企業価値をときに大きく上げ、ときに大きく下げるリスクを孕んでいます。企業が大事にする価値観や思想が従業員の行動として生まれるかどうかは、インナーブランディングの取り組みによって左右されます。
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インナーブランディングに成功している企業でもっとも有名な会社の一つが東京ディズニーリゾートです。インターブランドジャパングループが調査した「日本における『顧客体験価値(CX)ランキング』」では上位を獲得しており、インナーブランディングだけではなく対外的なブランディングにも成功しています。
この非常に高い顧客体験価値を生みだしているのは、東京ディズニーリゾートで働くキャスト(従業員)一人ひとりの行動です。驚くことに、ディズニーで働くキャスト約2万人のうち80%以上がアルバイトとされています。なぜアルバイトスタッフが高い品質のサービスをゲスト(来園者)に提供し続けられるのでしょうか。その秘訣が、東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドが取り組むキャスト向けのインナーブランディングです。
ディズニーでは、キャストとして働く際に「ディズニー・ユニバーシティ・プログラム」と呼ばれる座学研修を複数日かけて実施します。
– ディズニー・ユニバーシティ・プログラムとは
キャストに必要な知識、スキル、マインドなどを学ぶプログラムです。入社時研修「Disney Traditions」をはじめ、グレードに応じたディズニーならではのさまざまな教育プログラムです。
ディズニー・ユニバーシティ・プログラムは、入社時以降も定期的に実施され、継続的にディズニーの哲学を学ぶことになります。学ぶのは業務のオペレーションやマニュアルではなく、ウォルト・ディズニーが掲げたディズニーランドのビジョンや、テーマパークを最高の場所にするために守るべき行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」などです。
「The Five Keys~5つの鍵~」は、「Safety(安全)」「Courtesy(礼儀正しさ)」「Inclusion(インクルージョン)」「Show(ショー)」「Efficiency(効率)」であり、キャストが優先すべき規準の順番で並んでいます。つまり、ディズニーリゾートにおいては、Safety(安全)がもっとも優先すべきことであり、効率やエンターテインメント性(ショー)のために安全をなおざりにしていけないと徹底的に教えられます。
こうした哲学や行動規準は座学でも現場でも繰り返し語られ、その結果現場で生まれる「キャストらしさ」を体現する行動は、キャストを対象にしたアワード制度で表彰・称賛されます。
– アワード~優れたパフォ-マンスや長年の貢献に応える表彰制度~
●マジカルディズニーキャスト
キャスト同士、日々のすばらしい行動に対してメッセージを贈ることで、お互いを褒めたたえ合う活動。毎年仲間からの投票で「マジカルディズニーキャスト」を選出し、マジカルディズニーキャストピンを授与します。●ファイブスタープログラム
素晴らしいパフォーマンスを発揮したキャストには、上司から「ファイブスターカード」が手渡され、オリジナル記念品がもらえます。
こうした取り組みによって、働くキャストに共通した価値観が育まれ、目指すべき行動が共有され、一人ひとりの自発的なブランドの体現行動によって素晴らしい顧客体験へとつながっていきます。
東日本大震災におけるキャストの行動は大きな話題となり、東京ディズニーリゾートのブランド価値を一層高めました。この行動は、混乱する現場においてキャスト一人ひとりが何が大事かを考えて自律的に行動した結果だと考えられます。
リクルートグループの人材領域の事業では、ビジョン・ミッションに寄り添う『VISION MISSION DAY』を実施しています。リクルートはプロダクトとともに営業力の強い会社としても有名ですが、営業活動を丸一日止めてまでビジョン・ミッションに向き合う価値があると考え、大きな会場を借りたイベントを行っています。
株式会社アカツキでは、共同創業者である塩田元規さんと香田哲朗さんが4ヶ月、100時間以上をかけて作った、『Akatsuki Heart』と名付けられたアカツキの哲学が存在しています。その哲学を社内に浸透させるためにブランドブックを制作しています。
グローバルバイオ医薬品企業AbbVie Inc.の日本法人アッヴィ合同会社は、「働きがいのある会社」ランキングに、中規模部門2回、大規模部門4回と計6回、ベストカンパニーに選出されています。
アッヴィ合同会社では、「社員からも社外ステークホルダーからも選ばれる会社になる」ことを目指してインナーブランディングに取り組んでいます。そのために、会社の戦略的方向性と優先事項を明確にする羅針盤となる5カ年計画を社員自らが主体となって策定しています。
豊通マテリアル株式会社は、豊田通商株式会社の非鉄金属部門から1999年に分社化し、直近では過去5年で売上高1.9倍、取り扱う金属の量はなんと6年で8.6倍と、豊通グループの中でも屈指の成長を遂げている企業です。同社では2019年から、2025年に向けた5ヵ年経営ビジョンの策定を開始。ベテランから若手まで様々な社員を巻き込み、コロナ禍での中断もありながら約2年の歳月をかけてインナーブランディングのプロジェクトを進めました。
プロジェクトの中心を担ったのは、10年後の豊通マテリアルを担う社員でした。3チームに分かれて、チームメンバーや経営層とのディスカッションを繰り返しながら、「マテリアルとして何を目指していくのか」を言語化していきました。
産業用ディーゼルエンジン、農機、建機、発電・空調設備、小型船舶等の製造・販売を中心に多彩な事業展開を進めるヤンマー株式会社は、2012年に創業100周年を迎え、新しいミッションステートメントを、2016年には未来につながる持続可能な資源循環型社会の実現に向けて『A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさへ。-』をブランドステートメントとして掲げました。
ヤンマーでは、変化の激しい時代にグローバルでも成長し続けるために、自分で考えて行動することを重視した自律型組織を目指しています。その自律的な行動の根幹を担うのが、企業が掲げるミッションステートメントでありブランドステートメントです。これらに準じていれば「あとは社員一人ひとりに任せる」というメッセージにもなっています。
ステートメントの発表後には年間100回程度の研修を日本のみならず全世界で展開しています。また、「ミッションの実現は改善から」という言葉もあり、ミッションの実現に近づく改善活動を表彰する場『グループYWK(Yanmar Way by Kaizen)大会』も行っています。
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静岡県東部エリアを中心に、法人・個人向けのガス事業を展開している富士酸素工業株式会社様は、創業100周年を迎えました。富士酸素工業様はこの100周年を迎えるにあたり、5年以上前から周年プロジェクトを立ち上げ、「次の100年」への一歩を踏みだす準備を進めてきました。
そして、プロミス(経営理念)を従業員主体で策定するプロミス策定プロジェクトや、CI(会社ロゴ)・ユニフォームのリニューアル、従業員や取引先・消費者を対象にしたイベントなど、さまざまな周年記念施策を1年以上かけて順次、展開しています。
株式会社メンバーズは、メンバーズグループ16社(2022年6月開催時点)の社員、約2,300人が参加するグループ社員総会を、オンラインとオフラインを掛け合わせたハイブリッドイベント形式で実施しており、この社員総会の中で会社の模範となる取り組みを共有する『Social Value Award』を行っています。
『Social Value Award』の場では、事前エントリーの中からミッション・ビジョンを体現する10組の取り組みが選ばれ、その取り組み内容を全社員にプレゼンテーションしています。
この社員総会では、ワークショップ内で行われる「社員同士の対話」に重きが置かれています。社員一人ひとりが、日々の業務を通じて発揮していきたい社会的な価値や成し遂げたいことを『Social Value宣言』としてチームでまとめ書き出し、全社に共有しています。
「その日だけ話して終わり」といった一過性のイベントにせず、日々の仕事や日常の中で、社会課題解決に向けた行動や会話を継続的に発生させ、メンバーズのカルチャーとして根づかせることを意図しているのです。
株式会社シンクロ・フード様は設立20周年を迎え、節目となる20周年を全従業員でお祝いし、新たな旅立ちの日とするため、『設立20周年記念イベント』を実施しました。
シンクロ・フード様は設立20周年を迎えた節目のタイミングに、コーポレートブランドとサービスブランドをリニューアルしており、このイベントでは20周年を祝うだけではなく、社内へのブランド共有や、「提供価値」や「目指したい未来」を語るワークショップを行っています。
株式会社リバスタ様は社名変更を行い、従業員を対象にした社内イベント『新社名発表会』を実施しました。この『新社名発表会』では、社名変更の経緯や新社名に込めた想い、そして今後の展望を全社に直接共有する機会を設けています。
イベント開催前には、1年かけて社名変更のプロジェクトに取り組んでいます。なぜなら、社名だけではなく、CI(コーポレート・アイデンティティ)を構成するミッション、ビジョン、バリュー、コーポレートロゴやタグライン、社名に込めた想いのストーリーまで一気に再策定しており、企業の大きな転換点ともいえるプロジェクトだからです。
社名変更は単に言葉が変わるだけではなく、新社名や新CIによってステークホルダーが持つブランドイメージを変えることも必要です。そこで、従業員一人ひとりが日々接するステークホルダーに「リバスタとは」を直接伝えられるよう、新しいブランドについて正しく理解できる機会が『新社名発表会』でした。
『新社名発表会』では、社名発表、コンセプトムービー、社長プレゼンテーションを通じて、従業員に新社名にかける想いや業界における今後の事業展開をメッセージしています。
大和ライフネクスト株式会社様は、新しいビジョンと行動方針『DLN SPIRIT』を策定し、その内容を従業員に共有するお披露目イベント『DLN Spirit Day』を実施しました。約2,000名の従業員が集まる中、役員とビジョン策定プロジェクトメンバーが各々の想いを語りました。
イベントは、『DLN SPIRIT』を共有するシェアードビジョンと懇親会の二部構成で行われました。企業の新しい方向性を伝える重要なイベントのため、参加者の気持ちをいかに高めるかにもこだわり、光を使った演出や、社長が練り歩きながら映像を活用して発表するスーパープレゼン形式を活用しました。
トークセッションでは、「ただ発表を聞く」スタイルではなく、リアルタイムに投票やコメントをシェアできるシステムを利用することで、参加者を巻き込み、反応を確認しながら進行しました。
新しいビジョンと行動指針は、経営陣のワークショップと従業員参加型のワークショップを実施し、「社員みんなでありたい姿を描きたい」という社長の想いを実現しました。みんなで考えて決めたからこそ、「自分たちで実現したい」と本気になって行動が生まれていきます。
イベント後には、策定の背景や込めた想いを確認できるブランドブック『SPIRIT BOOK』を配布し、いつでも原点に立ち戻れるようにしています。また、『DLN SPIRIT』を体現した行動を称賛・共有する『DLN SPIRIT AWARD』も企画・開催し、全社で推奨していく大きな流れをつくっています。
学生服・体育着の企画製造販売を行う東京菅公学生服株式会社様の70周年イベントです。従業員を対象に、リアルタイムのオンライン配信と、従業員が3つの会場に分かれて集合するハイブリッド形式で行いました。
イベントでは、ユーザーである生徒さんや親御さんから学生服にまつわる素敵なエピソードを集めるコンテストや、経営層が歴史を振り返りながら従業員に70周年を迎えられたことの感謝を伝えるトーク番組を開催しました。
後半には、ブランドムービーを上映し、具体的な中長期のビジョンと戦略をシェアしています。そして、未来を思い描きながら、従業員同士で仕事の価値や誇りなど、自分の思いを伝えあうワークセッションを行いました。
周年イベントの1日を通じて、会社の歴史を知り、今後向かうビジョンや戦略を理解し、自身の仕事の価値ややりがいを体感できるイベントとなりました。
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インナーブランディングには、確実に成功する「正解」の進め方はありません。企業の置かれた環境や組織コンディション、それまでの企業文化・カルチャー、あるいは現在取り組んでいる社内施策など、さまざまな要因によってテーマや取り組み方が変わるからです。
そのため、「基本の型」を軸に、自社独自の取り組みを試行錯誤しながら進める必要があります。
ここではインナーブランディングを成功に導く進め方について、前提となるブランド策定から、社内で生まれるブランド体現行動の表出、ブランド浸透を加速させていく流れまで、4つのステップで簡単に説明します。
インナーブランディングにおいて、「何をメッセージするか?」を明確に定めることが、すべての起点となります。インナーブランディングにおける「ブランド」には広い解釈があり、企業によって策定するものはさまざまです。
代表的なものには、ビジョン・ミッション、バリュー、パーパス、プロミスが挙げられます。会社や従業員が、事業・仕事を通じて実現を目指すものや、そのために必要な理念・価値観が該当します。これらは、企業独自のものであり、アイデンティティ(中核理念)ともなります。
こうしたブランドは、かつては創業者の強い思想や「こうあるべき」という信念が言語化されることが多く、強いトップダウンによって策定されることが一般的でした。しかし近年のブランド策定では、従業員が参加する「従業員参画型」や「従業員主体」がキーワードとなっています。みずから意見や考えを共有して策定したものにこそ、納得度が生まれ、共感できるブランドができあがると考えられるからです。
また、ブランド策定のプロセスにおいては、完成した言葉以上に、仲間と考えや思いを共有し合うプロセスや体験にも大きな意味があります。普段の業務の中では、「顧客や社会」と「自分の仕事」を結び付ける機会は多くありません。目の前の仕事から離れ、顧客や未来とじっくりと向き合い、一緒に働く仲間と共有する機会は「自分たちらしさ」の理解を高めるために非常に重要です。
浸透フェーズにおいても、策定プロセスに関与していることで、ブランドを「はじめて知る、聞く」のではなく「すでに理解している」状態からはじめることができます。策定メンバーがブランド浸透のエヴァンジェリストやアンバサダーとして、周囲に伝播してくれる効果も期待できます。
ただ、社内で従業員主体の取り組みの経験がなく不慣れな場合、従業員を巻き込むことに二の足を踏む企業の方も多いですし、参加する社員も何を言えば良いのか、やはり当初は戸惑う方もいます。策定プロセスにおいては、アンケートやワークショップを何度も重ねながら進めます。まずはお互いを知ることから大事にして、「好きなこと」や「やってみたいこと」など、ポジティブなコミュニケーションを生みだすワークショップ設計と、良い雰囲気をつくり活発な意見を引きだすファシリテーターを設定することがポイントです。
自由な意見が飛び交い発散していくと、収集がつかなくなることもあります。最終的な言葉づくりやビジュアル化の部分は、社外のクリエイターなど第三者を入れるのも一案です。客観的な視点で情報整理・ブラッシュアップするので、参加者の納得度を高める効果も期待できます。
明確になったブランドを社内に共有して浸透をはかるには、イベントや各種メディアを活用した機会づくりが効果的です。ブランドプロジェクトを実施する場合には、プロジェクトの集大成としてブランドお披露目イベントを実施する企業が大半です。
このとき、策定したブランドを経営層がただ発表するのではなく、策定プロセスにおいてどのような議論がなされたのか、プロジェクトメンバーが自分たちの言葉で、実感値を持って社内に語りかけると効果的です。
そして、イベントにおいてもっとも重要なコンテンツは、共有された内容を受けて「どのように感じたのか」や「自分がどのように行動していくのか」を、ワークショップ形式で語り合うことです。ただ話を聞くだけでは自分の中の解釈にとどまってしまいます。「そんな風に受け取ったのか」「そんな考え方もあるのか」と一緒に働く仲間の多様性を受け止めて、ブランドに対する解釈を広げて、あらためて自分で考える。そうしたサイクルが、ブランドの理解・共感を高めます。
理解・共感を高める観点では、映像の活用も効果的です。ブランドは概念的で抽象度の高い言葉ですから、ブランドムービーとして世界観を表現することで、「こんな世界観を実現したい」というイメージを持ちやすくなります。内容によっては、映像内に顧客やカスタマーを登場させることも効果的です。自分たちだけが「やりたい」と勝手に言っているのではなく、社外からの期待や感謝を受け取ることで、自分たちが価値を提供したい対象を具体的にイメージできるようになります。
当然、一度のイベントですべてを理解することは難しいので、社内報や社内SNSなど社内コミュニケーション施策の中で、繰り返し発信し続けることが重要です。ブランドに常に立ち返れるように携帯できるクレドや、体系的に整理されたブランドブックを制作する企業もあります。さらに、ブランドの体現度合いをはかる意味合いで、定期的にブランド研修・ワークショップを実施するケースもあります。
インナーブランディングで生みだしたい成果の一つに「従業員のブランドを体現する行動」があります。インナーブランディングで従業員に求めたいのは「ブランドを知る」ことや「ブランドを理解する」ことだけではなく、そのうえで目指すブランドやビジョンを実現するために必要な行動を起こすことです。
ブランドの中身が素晴らしく、多くの従業員を巻き込むほど、策定したブランドが全社で強く推奨されなければなりません。コーポレートサイトに掲載される言葉が差し替えられただけで社内に何の変化もなければ、「実現したい」と信じた従業員には失望が生まれ、従業員エンゲージメントは逆に低下します。
ブランド体現行動を増やすには、ときに組織に根づいた企業文化・カルチャーをアップデートする必要があります。なぜなら、従業員の行動に影響する重要な要素の一つが企業文化・カルチャーだからです。
極端な例ですが、これまで徹底的な成果主義で「売上がすべて」という企業文化の会社が、「ビジョンやバリューを大事にしよう」とブランドの見直しを実施して「顧客への新しい価値の創造」を掲げたとします。若手社員がその内容に強く共感し、ブランド体現に向けてイノベーションに挑戦しようとしても、上司から「そんなことより売上は?」と言われてしまえば、インナーブランディングは一気に機能不全に陥り、誰も「新しい価値の創造」に向き合おうとしなくなります。
企業文化・カルチャーは、組織の思考習慣や行動パターン、判断基準に影響を与えます。社歴の長い管理職や上司ほど、企業文化に染まっています。最初は違和感を覚えた新入社員も、先輩から「うちの会社では、こういうものだ」と言われ時間が経てば、それが当たり前となり、何も感じなくなってしまいます。
管理職や上司によって新しい行動が妨げられる例を挙げましたが、逆に「それいいじゃん」「もっとやっていこうよ」といった後押しがあれば、自信を持って行動できるようになります。さらに人事や経営を巻き込み、評価制度や表彰制度のリニューアルまで踏み込むことで会社・経営から全面的に評価・称賛されるようになれば、全社的な動きは加速していきます。
つまり、ブランドやビジョンを見直し、従業員に対して「意識を変えよう」「行動を変えよう」というメッセージを発信する際には、これまでの行動のもととなっていた企業文化・カルチャーを分析し、生みだしたい変化に応じた企業文化へのアップデートも同時に推し進めることが重要なのです。
ブランドを体現する行動が生まれてくれば、そうした行動を全社で表出・称賛して、「行動すること」を推奨していくことが必要です。
特に効果的な施策が、ブランドを軸にしたアワードです。アワードは表彰式と同一視されがちですが、異なる特徴を持ちます。表彰式は一つのイベントとして完結しています。一方でアワードは、アワードの中に表彰式を内包しつつ、エントリーから審査、選出、表彰と、一つのコンセプト・ストーリーで構成されたプロセス全体を指します。
ブランドで定められる言葉は一定の抽象度を持つため、従業員によっては「どのように解釈すれば良いのか」「どのように行動すれば良いのか」を迷う場面があります。そのとき、ブランド体現行動をアワードで表出・共有することで、ブランドの持つ意味や世界観を、多様な視点から捉えられるようになります。
重要なことは、ブランドアワードにおいては「事実」や「成果」だけではなく、プロセスの中でどのような葛藤や迷い、決断があったのか、その人の価値観やスタンスまでひも解いて共有することです。ブランドと行動の隙間にエモーショナルな感情が結びつくことで、自分自身の行動のヒントになったり、一歩踏みだす勇気をもらえたり、「自分も真似したい」という意思が生まれたりします。
この表出・称賛においては、イベントだけで終わらせるのではなく、社内報の特集企画やアワード特集冊子を事後に配布するのも効果的です。イベント当日はエモーショナルに場の雰囲気や感情を受け止めて、終了後はプロセスやスタンスをロジカルかつ詳細に共有することで理解度や定着度が高まります。社内施策で継続的に情報を発信し続けることは、会社がブランドを重視しているという明確な意思表示にもなります。
なお、「業績とブランド体現のどちらを評価するべきか?」という悩みをよく聞かれますが、これはどちらも評価するべきものです。業績には金銭的な報酬で、ブランド体現には栄誉で称賛することで、評価を切り分ける傾向にあります。
表彰・称賛の仕方で評価の濃淡をつける企業もあります。業績表彰は事業部や部署によって内容の差が激しく、全社共通の基準で表彰することが難しくなっています。そこで、業績については事業内や部署内での表彰にとどめます。ブランド体現は全社共通の価値観のため、売上の多寡や規模の大小に関係なく選出することができるので、全従業員が集まる場で称賛する、という方式です。
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インナーブランディングの効果を高めるには、中長期的な目線でブランディング戦略を計画・実行する必要があります。しかし、対応できるノウハウやリソースがなく、どこから手をつければ良いのか、どこまでやればいいのか、分からず実施に踏み切れない企業の方も多いのではないでしょうか。
「インナーブランディングの基本的な取り組み方や考え方を知りたい」「パーパスやビジョン・ミッションの見直しをはかりたい」「ビジョン・ミッションや“らしさ”を社内により浸透させていきたい」など、インナーブランディングで生まれるお悩みは、年間200件以上の豊富なプロデュース経験にもとづいてインナーブランディング支援を提供する株式会社ゼロインにご相談ください。
ゼロインではインナーブランディングにおける「策定・共創」「展開・浸透」「表出・推進」といった実行プロセスをトータルでサポートします。
特にコミュニケーション戦略のプランニングとプロジェクトマネジメントを得意領域としており、従業員を巻き込み、共感を高めながらプロジェクトを進めるコンセプト策定や、ワクワクするような企画立案を評価いただいています。経営の実現したい“ありたい姿”と、従業員の“ありたい姿”を照らし合わせながら、従業員の意識と行動を生みだすブランドを創りあげ、目的や組織のカルチャーに合わせて浸透施策に落とし込みます。
要件や方針が明確に定まっていない場合でも、サポート内容や事例をご案内しつつ情報整理からお手伝いしますので、お気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
中島 浩太
株式会社ゼロイン
2008年、株式会社ゼロインに新卒入社。インナーブランディング・社内コミュニケーション施策をプロデュースするコミュニケーションデザイン事業、ゼロインの管理部門、新卒採用担当、新規事業を経て、現在はコーポレートブランディング室において広報(社内広報・社外広報/PR)とマーケティングを担当。
インターナルブランディングの魅力的な取り組みを紹介するウェブメディアCAPPYの編集長として、さまざまな企業における企業文化づくりや組織活性化の取り組みを取材。